上野の森美術館(東京都台東区)で開催中の「正倉院 THE SHOW」で、オフィシャルサポーターを務める鈴木福さんにインタビューしました。家族ぐるみで和楽器に囲まれる環境に育ち、自らも筝をたしなむなど幼少期から伝統文化に親しんできた鈴木さん。正倉院が守り続けてきた文化に対する敬意と、それを受け継いでいくことの大切さを改めて感じたそうです。(聞き手・美術展ナビ編集班 岡部匡志、撮影・青山謙太郎)

「最新技術との融合で宝物の新たな魅力引き出す」
――展覧会全体の印象はいかがでしょう。東京展に先だって開催された大阪歴史博物館の展示もじっくりご覧になっていますね。
鈴木さん もともと日本の歴史や宝物に興味がありました。正倉院の楽器と亀田誠治さんの音楽のコラボレーションに特に惹かれ、最新技術との融合によって宝物の新たな一面が見られる機会になっていると感じました。

――やはり音楽や楽器は自然と関心が向くのですね。再現模造された琵琶にも注目していました。
鈴木さん 現代の琵琶には見られない豪華な装飾に驚きました。それを今の時代に再現できた技術力も素晴らしいと感じました。
――注目の蘭奢待の香りの再現展示については。
鈴木さん 非常に良い香りで、多くの歴史上の人物が求めた香りを現代技術で体験できることにロマンを感じます。たとえ当時のものでなくても、実際に五感を使ってそれに思いを馳せることができるのが魅力的です。

「いつか中に入ってみたい」正倉院への憧れ
――もともと正倉院にはどういうイメージを持っていましたか。教科書などでもおなじみの存在です。
鈴木さん 多くの宝物が保管されている場所で、特に琵琶は和楽器の家に生まれた自身にとって馴染み深いものでした。いつか中に入ってみたいという漠然とした憧れがありました。
――正倉院によって1300年近くにわたって貴重な文化が継承されました。
鈴木さん 良きものを後世に伝えたいという気持ちが昔からあったことの表れであり、それが未来に繋がっていくと感じました。1300年近く経った今、大切なものとして残されていることの凄さを通して、今、大切にされているものは何なのか、それが後世に残るものなのか、などということを考えるきっかけになると思います。

伝統を守る努力
――伝統を守ることの価値と難しさを身をもって知る鈴木さんです。
鈴木さん 和楽器の世界に身を置く者として、長く伝えることの難しさを実感しています。かつて大衆的だった音楽が、今は「伝統だから価値がある」という段階にあり、守る努力が必要なフェーズにありますから。
――ご自身の活動と展覧会の共通点もありそうですね。
鈴木さん 私もNHKの番組などを通じて、日本の伝統的な文化を多くの人に親しんでもらう活動をしており、この展覧会のあり方と近いものを感じます。また、私の祖父母の和楽器グループ名が正倉院の宝物である琴に由来しており、個人的な縁も感じています。

「歴史の授業で学んだことを体感できます」
――鈴木さんのお話を目にして、「行ってみようかな」と興味を持った方も多いと思います。来場を考えている方へのメッセージをお願いします。
鈴木さん 歴史の授業で学んだことを間近に感じられる貴重な機会です。再現模造、映像、音楽、香り、現代アーティストとのコラボなど、五感で「体感」できる展覧会なので、その没入感をぜひ楽しんでほしいです。
正倉院 THE SHOWー感じる。いま、ここにある奇跡-
会期:~11月9日(日) ※会期中無休
会場:上野の森美術館(東京都台東区)

鈴木福さん 2004年6月17日生まれ、東京都出身。特技は箏・けん玉、趣味は野球。1歳のとき、NHK教育番組でデビュー、2011年にTVドラマ「マルモのおきて」に出演し、人気を博し以降、映画、TV、舞台、CMなどで活躍。近年はミュージカルや情報番組のコメンテーターなど新たなジャンルにも活動の幅を広げている。主演映画「ヒグマ‼」が今後公開予定。
