スタイリスト・フォトグラファーをはじめ、マルチに活躍する熊谷隆志氏の雑誌smartでの連載『Tokyo Fashion Tribe』。今回は、“令和イチ泣ける”と話題になった芥川なお氏のベストセラー小説が原作の映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』で主演を務めた齋藤潤さんがゲストに登場。余命半年の高校生を當真あみさんが、そんな彼女に思いを寄せる同級生を齋藤潤さんが演じた今作品は、現在公開中。熊谷さんも感動したという、純度100%の想いが交錯するこの作品にかけた熱意を齋藤潤さんが語ってくれました。
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僕の役の日向くんのようにピュアに生きたいと思えた作品
――映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』では、余命を宣告された桜井萌の同級生・佐藤日向を演じています。原作は芥川なお氏のベストセラー小説。原作は読まれましたか?
齋藤潤(以下、齋藤)「オーディションのお話をいただいたときに原作を読ませていただきました。その時点で“日向役をやりたい”って思いました。まず最初に原作のカバーから感じる雰囲気に惹かれました。物語の中では日向くんの飾らない素直さを感じて、こんなふうにピュアに生きられたらいいなという願いや憧れのようなものを感じながらオーディションに参加しました」
――日向役に決定したときは?
齋藤「マネージャーさんから電話をいただいたんですけど、“よっしゃ!”と思いました」
ーーオーディションのときから、手応えは感じていらっしゃったんですか?
齋藤「オーディションの最中はただ、受かりたいということだけ思って臨んでいました」
――日向くんを演じる上でこだわったことは?
齋藤「(酒井舞衣)監督からは本読みのときに(當真あみさん演じる)桜井萌ちゃんの好きな人なので、目線や表情を一番大切にしてほしいと教えていただきました。あとは“今日は日差しが強いな”とか“雲の流れが早いな”とか、些細な変化に目を留めて肌で感じることができるような男の子でいたいなと思っていました。なので、クランクインの前から自然の多い場所に行って、そういったものに触れる機会を作るようにしていました」
――桜井萌役の當真あみさんとは、テレビドラマ『ちはやふる-めぐり-』(NTV)でも共演されていましたが、彼女との共演はいかがでしたか?
齋藤「本作が初共演でしたが、とても楽しかったです。というと、ちょっと偉そうですか(笑)? あみちゃんは(年齢が)ひとつ上なので、僕が幼く見えないかっていうのも心配でしたが、作品に入ってからは気にすることはありませんでした。あみちゃんのお芝居は、テレビや映画で観ていたのですごく楽しみでした。今回の物語の中でも僕の演じる日向は、萌ちゃんや友達からいろんな言葉をもらって、それを活力にして生きていく男の子なので、お芝居の中でもものすごく背中を押してもらっていた気がします。あみちゃんは、もっと自分も頑張らないと、と思わせてくれる存在。その部分は僕も日向くんも同じことを感じられたんじゃないかと思います」
――當真あみさんをはじめ、同級生たちのシーンが多く描かれていましたが、同世代の共演者のみなさんとは、どんな交流があったのでしょうか?
齋藤「(フーヤン役の黒崎)煌代くん、(カワケン役の吉澤)要人くんの男子三人組では、作品についていろいろ話をしました。フーヤンとカワケンと日向との距離感なども原作と照らし合わせたりもしました。お芝居の中でも、フリーで演じられるシーンがあったので、そのシーンでは事前に二人とどんな方向性にするかなどを話し合ったりもして、すごく楽しかったです」
――ご自身の中で印象に残っているシーンは?
齋藤「(萌ちゃんの余命を知って)自転車を漕ぐシーンです。(気持ちを作れるように)このシーンの撮影をスケジュールの後半にしていただいて、何回もやらせてもらったのですが、いいお芝居ができなくて。次の日も時間を作っていただいて撮影していたのが印象に残っています」
――萌ちゃんの命の終わりが迫っていることを初めて知ったあとの日向くんのシーンですが、どのように気持ちを作っていったのでしょうか?
齋藤「あのシーンは、日向くんにとって、恋が愛に変わる瞬間のような大きく気持ちが変化する場面でもあったので、それを丁寧に描けたらいいなと思いました。あとは、自分が今感じている痛みであったり、当たり前にしている息をすることですらも、萌ちゃんはできなくなってしまうということを想像しながら演技に重ねていました」
――ポスターなどメインビジュアルにもなっている、萌ちゃんと日向くんがストロベリームーンを見にいくシーンが印象に残っています。あのシーンはどのように撮影されたのですか?
齋藤「撮影の一番最後に撮ったシーンです。実は、あのシーンは昼間に撮影したので、月も合成。完成した作品を観たときに、とても幻想的なシーンになっていて、僕自身も感動しました。あみちゃんとも“これが最後だね”って言い合って、ちょっと寂しさを感じながら撮影していました。まだ、(萌ちゃんの余命を)何も知らない日向くんと、それを隠している萌ちゃんの最後のデートだからこそ(観ている方にも)楽しんでいただけたらいいなという思いもありましたね」
