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10月24日(金)放送予定だったフジテレビ系『酒のツマミになる話』が、放送直前に急遽内容を差し替えた。番組表には「放送内容を変更してお送りします」とだけ記され、SNS上では「なんで?」「ハロウィン特集楽しみにしてたのに」と疑問の声が相次いだ。
『酒のツマミになる話』は、俳優や芸人、文化人らが円卓を囲み、お酒を片手に“ツマミになる話”を披露する人気バラエティだ。MCは、活動休止中のダウンタウン・松本人志の後任として千鳥・大悟が務めている。この日の放送はハロウィン特集として人気コスプレイヤー・えなこ、タレントの松丸亮吾らが出演予定だった。松丸は放送前日、自身のX(旧Twitter)で「ハリー・ポッターの仮装で出演します」と告知していたが、当日になって番組は再放送へ差し替えられた。
制作関係者によれば、放送中止の原因は“あるコスプレ”だったということをNEWSポストセブンが報じている。
「収録自体は数週間前に終わっていました。出演者全員が仮装して盛り上がるハロウィン特集で、雰囲気も明るくて面白い回でした。ところが放送当日、フジの上層部から“今回の放送は見送る”と突然連絡が入ったんです。問題視されたのは、MCの大悟さんのコスプレ。彼が松本人志さんに扮していたことが理由のようです」(番組関係者)
フジテレビは「局の事情を鑑みて判断した」と説明するにとどめたが、放送直前の差し替えは異例中の異例だ。
大悟が松本人志に扮していた? ハロウィン特集が“封印”された舞台裏
大悟の松本人志コスプレは今回が初めてではない。昨年のハロウィン特番でも、金髪のカツラと白シャツ姿で松本になりきり、「松本さんが“どんどんイジれ”って言うから」と笑いを誘っていた。その際は好意的な反応が多く、〈嬉しかった!〉〈似てるし、愛を感じる〉といった声も上がった。
だが、今回は空気が違った。「松本さんをめぐる報道や中居正広さんの件など、局としてデリケートな時期。フジ幹部が“今やるのはまずい”と判断したそうです」(同関係者)結果、現場は混乱した。「スタッフも出演者も、“なぜ今さら?”という気持ちでした。収録時には問題視されていなかったのに、放送直前に覆された。大悟さんも“共演者に申し訳ない”とショックを受けていました」と制作サイドの一人は語る。
テレビを縛る“コンプラ疲れ” 現場が失った笑いの自由
かつて「お笑いのフジ」と呼ばれたテレビ局は、今や“リスクの海”を漂っている。SNS炎上、スポンサー離れ、タレントの不祥事。現場では「何かあったらまず止める」が合言葉のように浸透している。
「視聴者から苦情が来ていなくても、“問題視される可能性がある”というだけで止める。それが地上波の現実です。笑いよりも安全を優先する空気が完全に根付いています」(テレビ業界関係者)
コンプライアンス強化の裏で、番組制作の自由度は急速に縮小している。“挑戦”よりも“炎上回避”が優先される現場。そこには、芸人が本来持っていた「リスクを恐れず笑いを取りに行く」精神が失われつつある。
まだ続く“松本信仰” 芸人たちが追いかける“笑いの神様”
では、なぜ大悟は松本人志のコスプレを続けるのか。その背景には、いまだ根強い「松本信仰」がある。
「松本さんはお笑い界の頂点です。いまでも多くの後輩芸人、特に吉本芸人は“松本さんに見てもらいたい”と思っています。大悟さんもそのひとり。彼にとって松本さんは、笑いの哲学であり師匠でもあるんです」(芸能記者)
だが、その熱は世間にはもう響いていない。芸人たちが口を揃えて「松本イズムを継ぐ」と言っても、視聴者はすでに“松本のいない時代”に慣れ始めている。
「芸人が思っているほど、いまの視聴者は松本人志に特別な思い入れを持っていません。20代の若者にとって“ダウンタウン”は名前だけ知っている存在。YouTubeやNetflixの新しい笑いに慣れた世代にとって、彼らは過去のレジェンドに過ぎません」(週刊誌記者)
松本人志と浜田雅功が作り上げた“笑いの黄金時代”は、確かに日本のバラエティ史を塗り替えた。だが、いまやそれをリアルタイムで覚えている層は減りつつある。23日スタートした『ダウンタウン+(プラス)』が成功するか否か。それが松本の“文化的存在価値”を測る最後の試金石になるとの声もある。
元テレビ東京の広報支援のプロ下矢一良さんは、「スタートダッシュをかけたいところなのに、過去作が寂しすぎる」と指摘するが、果たしてどうなるか。
だが、たとえ数字を取っても、それがかつての“神話”を取り戻すことを意味するとは限らない。栄枯盛衰。どんなに時代を作った人間も、永遠ではいられない。笑いの神様と呼ばれた男にも、静かにその現実が訪れている。
“笑いのDNA”を封じたテレビ 挑戦を恐れる時代の象徴
今回の放送差し替えは、単なるバラエティのトラブルではない。それは、テレビが自らの“笑いのDNA”を手放していく過程でもある。
「笑いは挑戦の芸術です。リスクのない笑いは、ただの無難な会話にすぎません。大悟さんのコスプレは、松本イズムをリスペクトした上での表現でした。それすら封じたのは、いまのテレビが“怖がる文化”に染まりすぎている証拠です」(放送作家)
お酒の席で生まれる笑いが、放送前に封じられた夜。酒のツマミどころか、テレビそのものが味気なくなっている。
