2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

 

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式が2025年10月23日に開催されました。国内で最も権威のあるファッションアワードです。日本ファッションの評価があらためて国際的に高まる流れが強まる中、現在の日本発ファッションの実力や傾向を示す選考結果となりました。今回も選考委員の1人として表彰式に参加しました。受賞した皆さんが述べたメッセージを交えて、受賞の意味をリポートします。

毎日ファッション大賞(毎日新聞社主催、経済産業省後援)の大賞は「AURALEE(オーラリー)」デザイナーの岩井良太氏が受賞しました。新人賞・資生堂奨励賞に選ばれたのは、「FETICO(フェティコ)」デザイナーの舟山瑛美氏。長らく業界に貢献した人や団体を表彰する鯨岡阿美子賞は「糸編」代表取締役でファッションキュレーターの宮浦晋哉氏に贈られました。話題賞に選ばれたのは「YKKファスニングアワード」。「ミナペルホネン」デザイナーの皆川明氏には選考委員特別賞が贈られました。

 

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

 

■大賞 岩井良太氏 「AURALEE(オーラリー)」デザイナー

ブランドを立ち上げてから10年の節目での受賞となりました。選考過程では「シンプルでありながらリュクス、ジェンダーレス、ミニマル、タイムレスといった時代に刺さるクリエーション」という評価を受けました。

受賞を受けたコメントでは「日本の生産背景を生かし、最高のものづくりをしたいという思いで始めた」と立ち上げの理念を振り返った上で、「全国の工場や職人の方々、原料を提供してくださる海外の産地の皆様、共に歩んできたスタッフ、そして私たちの洋服に共感してくださるお客様のおかげ」と感謝を述べました。

「派手なインパクトはありませんが、服を着てくださる方が日常の中でふとうれしい気持ちになったり、少し気分が高揚したり、そんな存在になれたらと思っています」と、「オーラリー」のありようを語りました。気負いやてらいを感じさせない語り口にも誠実なものづくりの態度がにじみます。

糸にまでさかのぼって、丁寧に服を作り上げていくアプローチが10年間にわたって、着実にファンを増やしてきました。ゆっくりしっかり成長を重ねてきたプロセスへのビジネス的な評価という意味でも大賞にふさわしい物語を紡いできたブランドと言えるでしょう。

 

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

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■新人賞 舟山瑛美氏 「FETICO(フェティコ)」デザイナー

フェティッシュな官能的フォルムに強みを持ち、2020年に「フェティコ」を立ち上げました。色気と強さを兼ね備えた、こびない身体観を提案しています。直近コレクションの充実ぶりに加え、「自分の世界観を守りながら客層を広げている」「女性視点から発信していて、とても影響力がある」といったプラスの評価が受賞につながりました。多くのショップで展開され、人気・実力ともに注目度の高いブランドへと成長し、その存在感を証明しています。

受賞コメントでは5年前でパタンナーとの2人だけでスタートしたエピソードを明かしました。「新しい時代を築いていくような女性像をデザインしていきたい」という思いをあらためて表明しました。

 

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

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■鯨岡阿美子賞 宮浦晋哉氏 糸編代表取締役、ファッションキュレーター

長年の貢献を重んじる「鯨岡阿美子賞」では異例とも言える30代での受賞です。産地と人々をつなぐ活動を10年以上続けている点が評価されました。ファッション業界以外では知名度があまり高くないかもしれませんが、こうした「縁の下の力持ち」的な貢献者をきちんと選び出すのは、毎日ファッション大賞ならではのよさです。

受賞コメントでは「まだ起業して13年ほどでまだまだ駆け出し」と謙遜した上で受賞のよろこびを率直に語りました。日本各地の産地を回り始めたのは2012年からだそうです。「日本の産地は本当に面白くて、今も変わらず夢中になっています」という言葉が示すやわらかい情熱が受賞につながった原動力と思われます。

 

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

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■話題賞 YKK「YKKファスニングアワード」

第25回を迎えた「YKKファスニングアワード」は日本最大級の学生向けファッションデザインコンテストです。21世紀の始まりと共に創設された、次世代を担う担い手を応援する表彰。日本が世界に誇るファスナイー(ジッパー)をはじめとするファスニング技術を印象付けるアワードでもあります。ファッション業界の発展に貢献してきた点が話題賞の理由となりました。

YKKジャパンカンパニープレジデントの新井篤氏は受賞スピーチで「回数を重ねるごとに着用する方々に寄り添ったデザインに進化していった」と、応募作品の進化を振り返りました。2025年の応募数はは7763点に増加。日本最大級のファッションデザインコンテストに成長しています。2025年にはSDGsを意識した「Circular Design特別賞」も新設されました。

 

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

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■選考委員特別賞 皆川明氏 「minä perhonen(ミナ ペルホネン)」デザイナー

皆川氏は今回の選考で大賞にノミネートされていました。選考過程で30年間に及ぶ地道な活動をあらためて顕彰しいという声が上がり、選考委員特別賞に決まりました。2024年大賞の三原康裕氏(「Maison MIHARA YASUHIRO(メゾン ミハラヤスヒロ)」デザイナー)もそうでしたが、長いキャリアを持つクリエイターをきちんと歴史に位置付ける取り組みは毎日ファッション大賞ならではです。

「せめて100年続くブランド」をうたう皆川氏はタイムレスのトレンドをはるか以前から体現してきました。ファッションを「消費するだけでなく、継承していく」という思想を貫く皆川氏の存在は日本ファッションの至宝と言えます。皆川氏は1995年に前身ブランド「minä」を設立しました。皆川氏は受賞スピーチで「ものを作る人のよろこび、そしてそれを使う人のよろこびを同時に叶えていけるよう、これからも尽くしたい」と述べました。

 

 

日本最大級のファッションとデザインの祭典「東京クリエイティブサロン」との連携が始まるのは、毎日ファッション大賞の新たな取り組みです。羽田未来の社長でクリエイティブサロンの副会長を務める大西洋氏とアートプロデューサーの杉山央氏が登壇。来年度の東京クリエイティブサロンのテーマは「フューチャービンテージ」だそうです。日本の創造力を世界に発信していくプロジェクトに期待が集まります。

 

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

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2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

2025年度(第43回)毎日ファッション大賞の表彰式開催

 

表彰式の後はFETICOのショーが開催。ブラック×ホワイトの世界に、レースやカットワーク、シアー、プリーツディテールが重なり合い、女性のしなやかな強さを映し出していました。

 

今回の受賞スピーチやインタビューでは、受賞者の産地や素材への思い入れが強く伝わって来ました。受賞者に共通しているのは、情熱や信念の強さ。謙虚でまじめな姿勢も共通しています。こういった丁寧で誠実、ひたむきなアプローチがグローバルな評価を呼び込んでいる理由にもなっている気がします。日本ファッションの美意識や美徳を証明した、毎日ファッション大賞の授賞式でした。

 

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毎日ファッション大賞の公式サイトでは、受賞者のインタビューが掲載されています。思いやビジョンが詰まった言葉の数々からファッションに対する情熱が伝わってきます。また、選考経過が公開されていて、選考プロセスを知っていただけます。きちんと議論の透明性が確保されているのは、重みのあるアワードにふさわしいところです。さらに、選考委員全員の講評が公開されていて、私のコメントも載っています。それぞれのコメントは、今のファッションに向けられるまなざしを知る手がかりにもなるので、よろしければ下記をご覧ください。

「2025年(第43回)毎日ファッション大賞」表彰式 / 提供:毎日新聞社

・第43回毎日ファッション大賞受賞者ページ
https://macs.mainichi.co.jp/fashion/win43/index.html

毎日ファッション大賞
https://macs.mainichi.co.jp/fashion/

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