あたぎ2013年東京にて結成された、男女ツインボーカルの3人組バンドAwesome City Clubのボーカリストであり、多くの楽曲の作詞・作曲も手がける。2021年映画『花束みたいな恋をした』に出演し、インスパイアソング『勿忘』をリリース。再生回数は11億回を突破。同年末には第63回日本レコード大賞「優秀作品賞」を受賞、第72回NHK紅白歌合戦にも出演。現在、全国ツアー『Awesome Talks Live House Tour 2025-26』を開催中。

『トリツカレ男』

切なく眩しいラブストーリー×ミュージカル何かに夢中になると、まわりが見えなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街のみんなから<トリツカレ男>と呼ばれている。三段跳び、探偵ごっこ、外国語、カメラにグラス集め……。そんなジュゼッペが風船売りのペチカに恋をし、夢中になる=トリツカレる。
【出演】佐野晶哉(Aぇ! group)、上白石萌歌 ほか【原作】いしいしんじ『トリツカレ男』(新潮文庫刊)【監督】髙橋 渉【音楽】atagi(Awesome City Club)【主題歌】Awesome City Club「ファンファーレ」【アニメーション制作】シンエイ動画【配給】バンダイナムコフィルムワークス
ⓒ2001 いしいしんじ/新潮社
ⓒ2025映画「トリツカレ男」製作委員会

複雑なギミックを入れず“伝わりやすいもの”を目指した

名作小説『トリツカレ男』がミュージカルアニメーションとしてこの秋公開。Awesome City Clubの atagiさんが、初めてアニメーション作品の劇中音楽を担当します。

「最初に制作スタッフの方にオファーをいただいたときは、経験がなかったので悩みました。でも『ACCのような音楽で表現して欲しいんです』と言っていただいたことで不安が払拭されて、チャレンジしてみようと思ったんです」

作品を作り始めた当初は、ボイスキャストも決まってなかった段階。設定資料や原作を読んでイメージを膨らませたのだそう。

「原作を読んだとき、『僕はこれからとてもピュアなものに関わるんだな』と感じました。なので複雑なギミックを取り入れるのではなく、極端に言うと〝童謡〞のように聴く人誰もがまっ直ぐに受け取ってくれるような、伝わりやすいものを目指したかったんです。できた作品に〝当て込む〞よりも、先に音楽を作らせていただいたのは、自分的にやりやすかったです」

髙橋監督はとても物腰やわらかな方。作品に、その優しさがにじみでているんです。その世界観を大事にして曲を作りました。

ACCが歌う主題歌で最後に幸せが満ちあふれるように

作品の主人公は、何かを始めるとほかが見えなくなるほどに熱中する〝トリツカレ男〞ことジュゼッペ。ある日、彼はペチカという女の子に夢中になる。atagīさんはその何事にも一途な様子に「普遍的なもの」を感じたのだそう。

「何事も本気でがんばれば必ず何かの効果をもたらす。そして誰かを思うことで自分の力が、自分が思っているよりももっと広い世界に連れて行ってくれるということに気づかせてもらいました」

キャラクターの動かし方や色使いにも、さりげないセンスが光っていて、クリエイティブとは何かを勉強させていただきました。

キャストが決まり、劇中歌をレコーディングするときには立ちあったのだとか。

「ジュゼッペ役の佐野晶哉さんも、ペチカ役の上白石萌歌さんも、僕からリクエストする部分は全くなくて、お世辞ではなくて最初から本当に完璧だったんです。できあがった作品をACCのほかのメンバーも観て、おふたりの演技・歌唱の素晴らしさに興奮していましたね。僕も作品を観ている間、佐野さんの顔も萌歌さんの顔も一度も思い浮かべなかった。それだけ、ジュゼッペとペチカというキャラクターとして観られたのだと思います」

エンドロールに流れる主題歌は、Awesome City Clubが演奏・歌唱する『ファンファーレ』。これはジュゼッペとペチカが歌う劇中歌『ファンファーレ〜恋に浮かれて〜』の歌詞とアレンジを変更したもの。

「僕たちが歌う主題歌は、ジュゼッペとペチカを見守る僕たちの目線で、全ての人たちの未来を肯定するようなものにしたかったんです。観ている人たちの気持ちに寄り添いつつ、最後に幸せな気持ちが満ちあふれるように願いを込めて」

そんなatagīさんが音楽活動以外に、トリツカレているものはあるか聞いてみると……。

「もう3年ちょっと一緒に暮らしている、猫ちゃんですね。趣味はいろいろあるんですが、やっぱりこの子が一番大切ですね。日を追うごとに可愛さが増しています」

※atagiさん撮影

そしてAwesome City Clubは、デビュー10周年イヤーの最中。メジャーデビュー日である4月8日から、10作品連続リリース、9月からの全国ライブツアーと、〝周年〞の後半戦に突入しています。

「連続リリースはいよいよ大詰め、ツアーはここから!という感じです。まずはこの作品をたくさんの方に観ていただきたいですね。そしてその方々に僕の音楽がどう響くのかはドキドキするけど、楽しみにしています」

※本記事はアッププラス2025年11月号より掲載しています

取材・文/山西裕美(ヒストリアル)

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