映画 愚か者の身分
ヤクザ映画は日本映画の伝統的一ジャンル。描かれる暴力や犯罪に共感はできないし、因果応報のツケが回ってハッピーエンドとはいかずとも、社会の規範や常識の外側で思うままに生きるアウトローの姿はうらやましくもあった。
半グレの若者たちが主人公の「愚か者の身分」も、アウトローものだ。社会からはじき出されたタクヤと弟分のマモルが、闇バイトで稼いだ金でバカ騒ぎするところから始まる。ただ従来のヤクザ映画と異なるのは、2人とも「この生活から抜け出したい」「抜け出せる」と思っていることだ。
伝統的なヤクザ映画の登場人物は、はみ出し者であることを引き受け、ろくな死に方はしないと覚悟して刹那(せつな)的だ。ところが、この映画の2人は“まっとう”な生き方ができるはずだと希望を持っている。それゆえ、後ろめたさと罪悪感があり、映画はどこか湿っている。そして、その湿り気が憧れよりも哀れみを誘い、現代の若者たちの閉塞(へいそく)感と鬱屈につながっている。
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週刊エコノミスト
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