イーサン・ホークが狂気に満ちた殺人鬼を演じ、斬新な設定と恐怖の先に描かれる感動が話題を呼んで大絶賛を獲得。全世界興収1億6000万ドルを超えるヒットを記録したブラムハウス・プロダクション製作の『ブラック・フォン』(22)。その待望の続編となる『ブラックフォン 2』が、11月21日(金)より日本公開を迎える。
『ブラックフォン 2』は11月21日(金)より公開[c]2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
前作に引き続きメガホンをとったスコット・デリクソン監督といえば、マーベルの『ドクター・ストレンジ』(16)などジャンルを超えて活躍するハリウッドのヒットメイカー。そのライフワークと言えるのがホラーであり、幼少期の地域環境や家庭生活、トラウマ的出来事などがホラー映画を撮り続ける理由であると過去のインタビューで明かしている。そこで本稿では、デリクソン監督だからこそ作りだすことができる唯一無二の“恐怖”の魅力を、彼の過去の監督作を通して紐解いていこう。
実話をもとにした法廷ホラーで、独自のスタイルを確立!
デリクソン監督が手掛けた最初の長編映画は、人気ホラーシリーズの第5作『ヘルレイザー ゲート・オブ・インフェルノ』(00)だが、同作はビデオ映画として製作されたため北米では劇場未公開(日本では劇場公開されている)。劇場公開長編作品での監督デビューはその5年後、ある女子大生が“悪魔祓い”の儀式の後に命を落としたという実話をもとにした『エミリー・ローズ』(05)だった。
異色ホラーとして話題を集めた『エミリー・ローズ』[c]Everett Collection/AFLO
恐ろしい幻覚と痙攣に苦しむ女子大生のエミリー・ローズ(ジェニファー・カーペンター)から助けを求められたムーア神父(トム・ウィルキンソン)は、悪魔祓いの儀式を行うのだが、その直後にエミリーは死去。過失致死罪で起訴されてしまったムーア神父は、弁護士のエリン(ローラ・リニー)と共に“悪魔の存在”を法廷で証明するために奔走。“法廷サスペンス”と“オカルト”という正反対のジャンルが融合した異色作として話題を集め、北米興収ランキングで初登場No. 1を獲得。デリクソン監督は一躍大ブレイクを果たすことに。
悪魔憑きなのか精神疾患なのかを論点とした法廷シーンと、エミリーの身に起きた常軌を逸した恐ろしい出来事の回想シーンが交錯しながら進んでいく本作は、視覚に刻み込むホラー表現に加え、信仰と科学、理性と非理性といった深淵なテーマにも斬り込む、ホラーの枠にとどまらない一本。こうした人間の感情の深みに触れるドラマ性を織り交ぜるホラーのスタイルが、その後のデリクソン監督の代名詞となっていく。
身の毛もよだつ不気味ホラーでブラムハウスと初タッグ!
8ミリフィルムに残されたおぞましい映像と“呪い”によってすべてが狂わされていく様を描いた『フッテージ』(12)は、デリクソン監督がイーサン・ホークとジェイソン・ブラムと初めてタッグを組んだ、「ブラック・フォン」シリーズにつながる一本。
古い8ミリフィルムに収められた映像から始まる恐怖を描いた『フッテージ』[c]Everett Collection/AFLO
過去の栄光にすがる犯罪ノンフィクション作家のエリソン(ホーク)は、新作の題材とするために一家惨殺事件が起きた家に家族と共に引っ越し、屋根裏で古い8ミリフィルムを発見。そこに記録されていた惨殺の様子を収めた“フッテージ(=未編集映像)”に魅せられて事件の真相を探りはじめるのだが、やがて一家は怪現象に巻き込まれてしまう。
観客をエリソンと同じ目線で恐怖に引きずり込んでいく演出に加え、連続する殺人事件の背後に古代の悪魔が潜んでいるという壮大かつ絶望的なスケールが話題を呼び、わずか300万ドルで制作された低予算作品ながら全世界興収8000万ドルを突破。「近年のホラー映画の傑作」のひとつとして、いまなお高い評価を集めている。