KDDI MUSEUM(東京都多摩市)で特別展「放送のウラに通信アリ展」が始まった。会期は2026年2月3日まで。事前予約が必要で、入場料は300円。大学生以下、障害者手帳を持つ人と介護者は無料。
日本での放送(ラジオ放送)開始から100年を迎えたことを記念した特別展。不特定多数へ届ける「放送」と特定の相手とやり取りする「通信」が、実は密接な関係にあり、どんな役割を果たしてきたのか、その一端を垣間見ることができる。
通信と放送の密接な関係を解説
会期中に見られる展示では、1963年に米国で発生したジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件や人類初の月面着陸、大規模なスポーツ大会など、歴史的な出来事を伝える放送を裏側で支えてきた通信技術のエピソードが並ぶ。
アポロ11号による人類初の月面着陸は、全世界で6億人が視聴したと言われる。月からの映像は、最初にオーストラリアに届き、太平洋上空の衛星を経由して茨城県の通信所で受信し、日本全国で放送された。
欧州向けにはオーストラリアから大西洋上空の衛星を経由するはずだった。しかし、トラブルにより茨城で受信した映像を山口の衛星通信所に中継、インド洋の衛星を経由して欧州に届けるという一幕があったという。全世界で6億人の視聴環境を提供した裏側には、KDDIの衛星通信網があった。
各展示は裏に回ると詳細を見られる
常設展示でも、月面からの通信や日米間初の衛星放送とジョン・F・ケネディ暗殺事件などについて触れられており、詳しく知ることができる。
鉱石ラジオの音が聴ける展示も
パネル展示の後ろには、初めて日本で作られた鉱石ラジオの復刻版を見られる。シャープミュージアムに展示される実物の構造を確認したうえ、当時の写真などを参考に作成された。
鉱石ラジオ(復刻版)
シャープダイン(実物)
実物は、1925年の4月に組み立てられた。鉱石ラジオは電源なしで動作する。感度は弱いため、当時は都市部では明瞭に聞こえた一方で、山間部、海浜地帯などでは受信が難しかったと考えられる。電源がないためスピーカーは使えず、ヘッドセットが必須。会場では、実際に鉱石ラジオが受信する放送(架空のもの)を視聴して、その音質を自身の耳で確かめられる。
このほか、同じくシャープが開発した交流式真空管ラジオ「シャープダイン」(1931年発売)の実物も並んで展示されている。放送局から遠くても受信でき、スピーカーで家族一緒に放送を聞くことができた。
過去のものだけではなく、5G SAを用いた映像中継のソリューションも展示されている。実証実験を含めて、すでにさまざまな場所で利用されており、ゆくゆくはケーブルの縛りがないメリットを活かして、多様な状況での活用が見込まれる。
「放送のウラに通信アリ展」の会期は2026年2月3日まで。11月29日は事前予約不要の無料見学日となる。同日には、予約制でシャープ社友会の吉田育弘氏を招いた特別講演が開催される。