「母さんを施設に入れよう」──娘夫婦の冷酷な会話を聞いた私。翌日、18ヶ月貯めた全財産の小銭で“74歳の恋人”を雇い、彼らに地獄を見せた
窓の外では桜が散り始めていた。こよは 縁側に座り、落ちていく花びを数えていた 。1枚、2枚、3枚、69年生きてきて、 こんなに時間を持て余したことはなかった 。膝の上には小銭に入れがあった。こよし は中身を取り出し、畳の上に並べた。9円 玉が12枚、50円玉が8枚、100円玉 が3枚、全部で520円。今月の残りだっ た。お母さん何してるの?背後から娘の みかの声がした。こよしは慌てて小銭にお 手で隠した。でも遅かった。またお金数え てるのをみかが近づいてきた。38歳結婚 して12年子供はいない。 最近眉間のシが深くなった。声にトがあっ た。いいえ。ただお小遣い足りないのを 言ってくれれば増やすわよ。みかの声は 優しかった。でも目は笑っていなかった。 こよしはそれを知っていた。足りてるわ。 そう。それならいいけど。ミカはこよしの 方に手を置いた。重かった。 お母さんさんが強だから縁川にいると風引くわ。中に入りましょう。こよしは立ち上がった。小銭にを拾い集めた。 1枚 10円玉が見つからなかった。畳の隙間に落ちたのかもしれない。こよ。今に戻るといて。ドシが騒がしかった。芸能人の倫が報道されていた。 コメンテーターが厳しい顔で何かを言って いた。こよしは音を小さくしたかったが リモコンに手を伸ばさなかった。ミカは こよが勝手にテレビを操作することを 嫌がった。ミカは台所に向かった。包丁で 何かを切る音がした。トントントン。規則 的な音。こよしはソファに座った。 クッションが硬かった。新しい家に 引っ越してきてからまだ3年しか経ってい ないのにもう何年もここにいるような気が した。夫の春人が2階から降りてきた。 41歳中勢髪が薄くなり始めていた。 スリッパの音が階段を降りてくる音が夜け に大きく聞こえた。小ぎ母さんおはよう ございます。は人は丁寧に挨拶した。いつ も丁寧だった。でも目を合わせなかった。 おはよう。こよしは答えた。春人は ダイニングテーブルに座った。新聞を広げ た。でも読んでいるようには見えなかった 。目が文字を追っていなかった。ただ新聞 を持っているだけだった。こよは春人を 観察した。シャツの襟りが少し汚れていた 。ズボンにシがあった。爪が伸びていた。 3ヶ月前まで春人はいつもきちんとしてい た。毎朝Yシャツにアイロンをかけ靴を 磨いていた。でも最近は違った。こよしは 知っていた春人が仕事を失ったことをでも 誰もこよしに説明しなかった。こよしが 聞いてもみカは大丈夫よと言うだけだった 。ミカが味噌汁を運んできた。湯が立って いた。お母さん、お昼ご飯は何がいい?何 でもいいわ。うどんでいい。昨日の残りが あるから。ええ、ミカはテーブルに座った 。3人で朝食を食べた。沈黙が重かった。 こよしは味噌汁を飲んだ。塩が強かった。 最近ミカの料理は味が濃くなっていた。 ストレスのせいかもしれない。でもこよし は何も言わなかった。お母さん、今日は どこにも行かないでね。みカが急に言った 。こよしは橋を止めた。どうしてだって 天気予報で雨って言ってたから滑ったら 危ないでしょう。こよしは窓の外を見た。 空は晴れていた。雲1つなかった。でも今 は晴れてるわ。午後から降るのよ。散歩 くらい。お母さんみカの声が少し高くなっ た。去年のこと忘れたのを。階段で転んで 手首を捻挫したじゃない。あれは1回だけ よ。1回で十分よ。次は骨折するかもしれ ない。そうなったら誰が面倒を見るの?私 でしょう。こよしは黙った。だから お母さんのために行ってるの。外は危険な の。美カはそう言って朝食を続けた。 こよしは食欲がなくなった。でも残りを 食べた。残すとミカが機嫌を悪くするから 朝食の後は自分の部屋に戻った。2階の奥 6畳の部屋窓からは隣の家の壁しか見え なかった。こよしはベッドに座った。部屋 を見回した。タス、本棚小さな机。全部前 の家から持ってきたものだった。でも配置 が違った。前の家では窓から庭が見えた。 夫が植えた桜の木があった。春になると花 が咲いた。2人で縁側に座って花を眺めた 。その家を売ったのは3年前だった。夫が なくなって2年後、ミカがお母さん1人で 住むには大きすぎると言った。一緒に住み ましょう。お互いに助かるわとこよしは 断った。でもミカは諦めなかった。毎週 尋ねてきた。お母さん心配なの?1人で 大丈夫?何かあったらどうするの?そして ある日美は不動産屋を連れてきた。 ちょっと話だけでも聞いてみましょうと気 がつけば家は売られていた。書類にサイン した記憶はあった。でもどうしてサインし たのかよく覚えていなかった。ミカがこれ がお母さんのためよと言い続けてこよしは 疲れてしまったのかもしれない。こよしは 押入れを開けた。奥に古い缶があった。 クッキーの缶蓋を開けた。中には小銭が 入っていた。こよしは小銭を取り出した。 畳の上に広げた。10円玉、50円玉、 100円玉数え始めた。10円玉が238 枚、50円玉が120枚、100円玉が 108枚。与は電卓を取り出した。古い 電卓夫が使っていたものだった。計算した 2380円 +6000円+1万800円 合計3万7180円 こよ氏は息を吐いたほぼ18ヶ月分だった 。美香は毎月こよ2200円を渡した。お 小遣いと呼んだ与の年金は月に13万円 だった。でもこ氏が自由に使えるのは 1200円だけだった。残りはミカが管理 していた。こよしは最初講義した。私のお 金でしょうと。でもミカは言った。 お母さん騙されやすいのよ。ニュースで見 たでしょう。高齢者を狙った詐欺が たくさんあるの。私が管理した方が安全よ 。春人も賛成した。小義保さんみかの言う 通りです。最近俺さにとか投資さにとか 本当に多いんです。こよしは折れたでも 納得はしていなかった。それからこよしは 節約を始めた。ミカが渡す1200円の うち大半を貯金した。パンを1つが満した 。喫茶店に行くのをやめた。バスに乗らず に歩いた。自動販売機でジュースを買うの をやめた。18ヶ月かけて3万7180円 を貯めた。紅よしは小銭におかに戻した。 蓋を閉めた。押入れの奥に隠した。それ からベッドの下から別の箱を引っ張り出し たダンボール箱。夫の異品が入っていた。 箱を開けた。中には写真、手紙、アドレス 長が入っていた。はアドレス長を取り出し た。古い川のアドレス長。夫の字で名前と 電話番号が書かれていた。ページをめくっ た。同僚の名前が並んでいた。ほとんどが こよの知らない人たちだった。夫は仕事の 話をあまりしなかった。こよしはある名前 のところで手を止めた。その名前の横に 電話番号が書いてあった。として小さく 哲夜の同僚の弟と元と書かれていた。こよ はその名前を見つめた。清よし夫の葬式に 来た男だった。背が高かった。白発だった 。奥闇を言った。声が低かった。俳優だっ たと聞いた。でも詳しいことは知らなかっ た。こよしはアドレス長を閉じた。でも ページに指を挟んでいた。 部屋を見回した。窓の外は相変わらず隣の 家の壁だった。こよしは立ち上がった。机 の引き出しを開けた。中にメモ帳があった 。ペンを取った。メモ帳に計画を書き始め た。夕方ミカがこよしの部屋に来た。 ノックもせずに入ってきた。お母さん夕飯 できたわよ。分かったわ。よしはメモ帳を 素早く引き出しに隠した。何してたの?何 もしてないわ。ミカは疑わ思想に笑みを見 た。でも何も言わなかった。じゃあ降りて きてみカは部屋を出た。こよしは引き出し を見た。メモ帳が見えていた。こよは 引き出しを閉めた。鍵をかけた。それから 階段を降りた。食卓には春人がすでに座っ ていた。 新聞を読んでいた。今度は旧人なんだった 。こよしは見てみふりをした。お母さん 座ってみかがお皿を運んできた。魚の 煮つけだった。大根とごぼ3人で食事を 始めた。春人仕事王氏が聞いた。は人は箸 を止めた。ミカが睨んだ。探してます。人 が小さく言った。そう、見つかるといいわ ね。こよしは魚を食べた。少し生臭かった 。お母さん余計なこと聞かないで。ミカが 言った。余計なことを心配してるだけよ。 心配なんてしなくていいの。私たちのこと は私たちでな何とかするから。こよしは ミカを見た。私の年金でなんとかしてるん でしょう。みカの顔が怖った。それは お母さんの生活費も含めてよ。私の生活費 6畳の部屋と1日3食。それで月にいくら かかるのを春人が咳払いをした。小木さん 話がはぐれてます。はぐれてないわ。私は ただ自分のお金がどう使われてるのか知り たいだけ。みかが立ち上がった。お母さん 、何が言いたいの?私たちがお母さんのお 金を盗んでるとでも言いたいの?そうは 言ってないわ。でもそういう意味でしょう 。みかの声が震えていた。私たちお母さん のためにどれだけ頑張ってるか分かってる のを。毎日お母さんの面倒を見て料理して 掃除して感謝もされないでこよしは黙って いた。私だって疲れてるのよ。お母さんの せは大変なのよ。ミカは涙を浮かべていた 。春人がミカの肩に手を置いた。落ち着い てみカは座った。顔を手で覆った。こよし は食事を続けた。でも喉を通らなかった。 夜こよしは眠れなかった。ベッドに横に なっていたが目が生えていた。隣の部屋 からミカとは声が聞こえた。壁が薄かった 。もう無理よ。みかの声だった。お母さん 最近おかしいわ。反光的で文句ばっかり 言って疲れてるんだよ君も。は人の声は 低かった。疲れてるのは当たり前でしょう 。お母さんの面倒を見て家事して。それな のにあなたは仕事見つからないし。ごめん 。謝らないで。謝られても何も解決しない わ。沈黙があった。それからミカがまた 言った。お母さんの年金がなかったら 私たち生きていけないのよ。だから お母さんには大なしくしててもらわないと 困るの。変なことに使われたら困るの。で もそれは小母さんのお金だよ。私たちが 面倒見てるんだから使う権利があるわ。は 息を殺した。ねえ、春人、お母さんを施設 に入れるのはどう?こよしの心臓が止まり そうになった。施設ええ 老人ホーム。そうすれば私たちも楽になる し、お母さんも専門の人に面倒を見て もらえるし、でもお金がお母さんの年金で 払えるわよ。それに家を売ればまとまった お金が入るし、この家をええ、お母さんが いなくなればこんな大きな家必要ない でしょう。こよしは布団を握りしめた。 考えてみるよ。春人が言った。それから 静かになった。こよしは目を開けた。暗闇 が天井にあった。施設その言葉が頭の中で こだまし続けた。大よしは起き上がった。 机の引き出しを開けた。メモ帳を取り出し た。暗くて字が見えなかった。でも見る 必要はなかった。もう心に決めていた。 こよしは押入れを開けた。クッキーの缶を 取り出した。計画を実行する時が来た。 翌朝こよは早く起きた。まだ暗かった。 時計を見ると午前5時だった。よしは服を 着た。化粧はしなかった。髪を溶かした。 鏡を見た。目の下に熊があった。でも目垢 が焼いていた。階段を降りた。音を立て ないようにハ人とミカはまだ寝ているはず だった。玄関で靴を履いた。コートを着た 。バックにクッキーの缶を入れた。重かっ た。ドアを開けた。外は冷たかった。でも こしは気にしなかった。家を出た。道は 静かだった。街当がぼんやりと光っていた 。こよしは歩き始めた。バス停まで15分 だった。歩きながらこよしは周りを見た。 同じ道を何度も歩いた。でも今朝は違って 見えた。全てが新鮮だった。家の形、木の 影、道の曲がり方、全部が新しかった。 バス停に着いた。まだバスは来ていなかっ た。時刻表を見た。最初のバスは午前6時 だった。あと30分。こよしはベンチに 座った。空が少しずつ明るくなってきた。 鳥が泣き始めた。こよしはバックから クッキーのカを取り出した。開けた。小銭 が詰まっていた。こよはそれを見つめた。 18ヶ月1日1日少しずつこの小銭が こよしの自由を買うことができるのかこよ には分からなかった。でも試す価値はあっ た。バスが来た。古いバスだった。運転手 は年配の男性だった。紅市は乗った。運賃 箱に200円を入れた。どこまで?駅まで 。は座った。窓の外を見た。住宅街が流れ ていった。まだ眠っている家ばかりだった 。20分後駅に着いた。こよは降りた。 駅前は静かだった。店はまだ開いてい なかった。こよは公衆電話を探した。 見つけた駅の隅にあった古い公衆電話。 緑色 はアドレス長を取り出した。ページを開い た。福本清の電話番号があった。こよしは 受じを取った。冷たかった。10円玉を 入れた。ちゃん番号をした。呼び出し音が なった。1回2回3回。はい。低い声だっ た。仕がれていた。眠そうだった。 もしもし。福本清さんですか?そうですが 、どちら様ですか?私、こよと申します。 福本哲也さんの妻でした。沈黙があった 哲やさん。ああ、兄の同僚のはい。お久し ぶりです。それで何かのようですか? こんな朝早くにこよは時計を見た。6時半 だった。申し訳ありません。でもどうして もお話ししたいことがあってお話?はい。 会っていただけませんか?また沈黙があっ た。電話の向こうで清よしが考えているの が分かった。何のお話でしょうか?こよし は深呼吸した。電話では話しにくいんです 。お願いします。会ってください。わかり ました。いつがいいですか?今日。今すぐ 。今すぐ。はい。清は息を吐いた。わかり ました。どこで会いましょうか?駅前の 喫茶店さを知っていますか?ええ、知って います。そこで8時に了解しました。電話 が切れた。こよしはじきを置いた。手が 震えていた。興奮なのか恐怖なのか自分で も分からなかった。駅前のベンチに座った 。時間を潰すためにこよしは歩き回った。 商店街を歩いた。まだ開いていない店かり だった。シャッターが降りていた。でも こよしは一見一見ゆっくり見た。タや魚や 薬局夫と一緒に来たことがあった。もう何 年も前だったやの前で紅与は立ち止まった 。小ウィ動に値段が書いてあった。りんご 1個150円、大根1本200円。こよの お小遣いは月2200円だった。り合8個 買ったら終わりだった。こよしは歩き続け た。7時半は喫茶店桜に着いた。まだ開い ていなかった。こよは外で待った。8時に 店が開いた。こよは入った。店内は古かっ た。木のテーブル、川のソファ、暗い照明 。壁には古い映画のポスターが飾ってあっ た。いらっしゃいませ。年配の女性が言っ た。天使だった。こよしは覚えていた。夫 とよく来た店だった。でも天手はこよしを 覚えていないようだった。コーヒーをお 願いします。かしこまりました。こよしは 窓際の席に座った。外を見た人が増えてき た。通勤する人たち、学生たちみんな急い でいた。コーヒーが来た。400円だった 。こよは財布から小銭を出した。400円 です。こよしは小銭にを数えた。100円 玉4枚。天使はお金を受け取った。 ありがとうございます。こよしはコーヒー を飲んだ。苦かった。でも温かかった。8 時5分ドアが開いた。男が入ってきた。背 が高かった。でも少し猫背だった。白発深 は杖をついていた。グレーのセータ黒い ズボ清しだった。こよしは手をあげた。 清よしは気づいた。近づいてきたえみさん ですか?はい、清よしさん、ありがとう ございます。清よしは座った。ゆっくりと 膝が痛そうだった。天手が来た。ご注文は コーヒーを天使は去った。清よしはこよし を見た。お久しぶりです。葬式以来ですね 。ええ、7年ぶりです。お元気そうで あなたもお元気そうで嘘だった。清よしは 元気そうには見えなかった。顔色が悪かっ た。目の下に熊があった。セーターは 古かった。袖に小さな穴が開いていた。 コーヒーが来た。清よしは一口飲んだ。 それでお話というのはこよしは深呼吸した 。私の恋人のふりをして欲しいんです。は コーヒーを吹き出しそうになった。咳込ん だ。すみません。なんとおっしゃいました 。私の恋人のふり演技です。清よしは こよしを見つめた。冗談ですか?いいえ。 本気です。こよしはバックからクッキーの カを取り出した。テーブルの上に置いた。 これはお金です。3万7180円 。部小銭にですが清は間を見た。報酬とし て1回のデートにつき1000円を渡し ます。7回分です。デートをはい。外を 散歩したりお茶を飲んだり映画を見たり 普通のカップルがするようなこと。清よし は黙っていた。ただしこれは本当のデート ではありません。私の娘に見せるための 演技です。娘さんに言いはい。こよしは 説明し始めた。娘のみかのこと年金を 取り上げられたこと2200円しかもらえ ないことどこにも行かせてもらえないこと 誰にも合わせてもらえないこと清よしは 黙って聞いていた。それで私は計画を立て ました。もし私に恋人ができたらみかは 焦げる。母が騙されるんじゃないか。お金 を取られるんじゃないか。 母を取り戻すためにミカは私をもっと大切 にするはず。もっと自由をくれるはず。 つまり僕を使って娘さんを操作しようと。 はい。清よしはコーヒーを飲んだ。なぜ僕 なんですか?あなたは俳優でした。演技が できます。それに夫の知り合いだから完全 な赤の他人ではない。いかも少しは信用 するかもしれません。清よしは窓の外を見 た。正直に言います。これは狂った計画 です。分かっています。それに詐欺です。 娘さんを騙すことになります。娘は私を 騙しています。あなたのためと言いながら 私の自由を奪い私のお金を使っています。 清よしはこよしを見た。もっと直接的な 方法があるんじゃないですか。弁護士に 相談するとか弁護士に会うお金もありませ ん。それに私は娘と戦いたくない。ただ娘 に気づいて欲しいんです。私がまだ人間だ ということに清よしは長い間黙っていた。 それから言った。お金に困っています。 こよしは待った。年金だけじゃ生活が ギリギリです。 膝を悪くしてからバイトもできなくなり ました。家賃を払うだけで精一杯です。 清よしはカを見た。だから正直このお金は 助かります。でもでもこれは正しいことな んでしょうか?こよしは微園だ。正しいか どうか私にも分かりません。でもこれしか 方法が思いつかなかったんです。清よしは 息を吐いた。分かりました。やりましょう 。こよは息を吐いた。気づかないうちに息 を止めていた。ただし条件があります。何 ですか?清よしはコーヒーカップを両手で 包んだ。演技は本気でやります。中途半端 な芝居はしたくない。舞台を離れて20年 経ちますが、それでも役者としての プライドはあります。こよしは頷いた。だ からこさんも本気で演じてください。恋人 として出ないと娘さんは信じません。 わかりました。清よしはカを手に取った。 開けた。小銭が山になっていた。これ全部 10円玉と50円玉ですか?100円玉も あります。清よしは小さく笑った。何年 かけて貯めたんですか?18ヶ月。清は 笑うのをやめた。こよを見た。18ヶ月1 日1日少しずつ。はい。清よしは間を閉じ た。これは重いですね。お金がいいえ。 あなたの覚悟が。こよしは何も言わなかっ た。清よしはポケットから携帯電話を 取り出した。古い機種だった。連絡先を 交換しましょう。次のデートの約束をする ために私携帯電話を持っていないんです。 清よしは驚いた顔をした。持っていない。 娘が必要ないと言ってきよしは携帯電話を テーブルに置いた。じゃあどうやって連絡 を?公衆電話からあなたに電話します。 わかりました。では次はいつにしましょう か?こよしは考えた。今週の日曜日午後2 時駅前で了解しました。清しは立ち上がっ た。ゆっくりと杖をついてえみさんはい。 本当にこれでいいんですか?まだ引き返せ ますよ。こよしは首を横に振った。もう 引き返せません。昨夜娘が私を施設に 入れると言っているのを聞いてしまいまし た。清よしの顔が曇った。施設に言い、 ええ、だから急いでいるんです。清よしは 何も言わなかった。ただこよを見つめてい た。じゃあ日曜日にはい。清よは店を出た 。こよしは窓から清よしの後ろ姿を見た。 杖をついてゆっくりと歩いていた。背中が 丸かった。風が吹いてセーターがはめいた 。よしは自分のコーヒーを飲んだ。もう 覚めていた。家に帰るとミカが玄関で待っ ていた。腕を組んでいた。お母さんどこ 行ってたの?こよしは靴を脱いだ。散歩よ 。散歩。こんな朝早くから心配したのよ。 大丈夫よ。ちゃんと帰ってきたでしょう。 こよしは今に向かった。ミカが後ろから ついてきた。お母さん勝手に出かけない でって言ったでしょう。あなたの許可が ないと出かけられないの?そうよ。何か あったらどうするの?こよしは振り返った 。何かって何?私は69歳だけどまだ 歩ける。まだ考えられる。まだ生きてる。 ミカは黙った。あなたは私を子供扱いし てる。でも私はあなたの母親よ。忘れない でこよしは2階に上がった。部屋に入って ドアを閉めた。ベッドに座った。手が震え ていた。怒りなのか興奮なのか恐怖なのか 分からなかった。全部が混ざっていた。で もこよしは笑った。小さく計画が動き始め た。その日の午後こよは机に向かって ノートに書いた。第1回デート日曜日駅前 商店街を歩く美かに見つかるように目的に 清の存在を知らせるこよはペンを止めた次 に何を書くべきか分からなかった計画は ここまでしかなかった。ミカがどう反応 するか予測できなかった。怒るかもしれ ない。泣くかもしれない。こよしを責める かもしれない。でもそれでもいい。何か 変化が起きる。それだけで十分だった。 こよしは脳と閉じた。引き出しにしまった 。鍵をかけた。窓の外を見た。空が暗く なってきた。雨が降りそうだった。こよし は立ち上がった。押入れを開けた。古い ワンピースを取り出した。紺色。夫が好き だった色。こよしはワンピースを体に当て た。鏡を見た。少しきつそうだった。でも 切られるはずだった。日曜日まであと5日 。こよしは深呼吸した。金曜日の夜夕食の 時ミカが言った。お母さん明日病院に行き ましょう。こよしはスープを飲んでいた。 手を止めた。どうして定期献心の時期を この前行ったばかりじゃない。3ヶ月前よ 。もう行く時期は美カを見た。明日は用事 があるの。用事?何の用事?友達に会うの ?ミカの橋が止まった。友達?誰?昔の 友達よ。名前はこよしは躊躇した。嘘を つくのは得意ではなかった。ゆり子さん 聞いたことないわね。どこで知り合ったの ?昔同じ町内に住んでたの。そうミカは 食事を続けた。でも疑わ思想なめつきだっ た。じゃあ病院は日曜日にしましょう。 こよしは心臓が止まりそうになった。 日曜日は都合が悪いわ。なぜその用事が あってまた用事?何の用事?こよしは答え られなかった。ハルジが口を開いた。 小ぎ母さん、最近よく出かけたがあります ね。こよしは春人を見た。ハ人は微んでい た。でも目は冷たかった。何か隠してる ことがあるんじゃないですか。隠してる ことなんてないわ。本当ですか?本当よ。 ミカが言った。お母さん、もし何かある ならちゃんとげってね。心配なの。こよし は黙って食事を続けた。でも心の中で カウントダウンが始まっていた。日曜日 まであと2日。日曜日の朝こよは4時に目 を覚ました。眠れなかった。ベッドの中で 天井を見つめていた。心臓の音が聞こえた 。早かった。5時にこよしは起きた。洗所 に行った。鏡を見た。顔色が悪かった。目 の下に熊があった。こよしは顔を洗った。 冷たい水。少し落ち着いた。部屋に戻って クローゼットを開けた。紺色のワンピース を取り出した。来た。予想通り少し きつかった。でもなんとか切られた。鏡を 見た。ワンピースは古かったがまだ切られ た。こよしは化粧を始めた。 ファンデーション 口紅眉毛手が震えた。口紅が少しはみ出た 。こよしはティッシュで吹いた。もう一度 塗った。終わった。鏡を見た。見知らぬ 女性がいた。いや、昔のエミがいた。夫と デートしていた頃のエミよは微方園だ。鏡 の中の女性も微縁だ。7時こよは部屋を出 た。ミカとハ人はまだ寝ているはずだった 。階段を降りた。音を立てないように玄関 で靴を履いた。コートを着た。バックを 持った。ドアの部に手をかけた。お母さん 背後から声がした。こよしは振り返った。 ミカが階段の上に立っていた。パジャマ姿 髪がボサボサだった。どこ行くのをこよし は答えなかった。お母さん聞いてるの? どこ行くの?出かけるのよ。誰と?こよし は深呼吸した。友達とまた友達。本当に 友達なの?こよしはドアを開けた。 お母さんみカが階段を降りてきた。こよし は外に出た。ドアを閉めた。後ろからドア を叩く音がした。ミカの声がした。でも こよしは歩き続けた。朝の空気は冷たかっ た。でも気持ちよかった。こよしはバス停 に向かった。早足で心臓がドキドキしてい た。興奮していた。バス停に着いた。誰も いなかった。バスを待った。5分バスが来 た。こよしは乗った。運賃を払った。バス が動き出した。よしは窓の外を見た。自分 の家が見えた。玄関にミカが立っていた。 こちらを見ていた。こよは目をそらした。 午後1時半、こよは駅に着いた。早すぎた 。でも家にいるよりはマだった。駅前の ベンチに座った。人々が生きしていた。 日曜日だったので家族連れが多かった。 子供たちが笑っていた。は彼らを見た。 羨ましかった。幸せそうだった。午後時 清よしが現れたグレーのスーツを着ていた 。白いシャツ、ネクタイ、髪を整えていた 。杖をついていたが背筋は伸びていた。 えみさん、こよしは立ち上がった。清さん お待たせしました。いえ、僕も今来た ところです。清よしはこよしを見た。お 綺麗ですね。こよしはてた。お世辞はいい わ。本当です。そのワンピースよく似合っ ています。こよしは微方園だ。久しぶりに 誰かに褒められた気がした。どこに行き ましょうか?こよしが聞いた。あなたの 計画では商店街を歩きましょう。娘が 欲い物に来る場所なの。日曜日の午後なら きっといるはず。了解です。2人は並んで 歩き始めた。清よしの補は遅かった。杖を ついて一歩一歩慎重に歩いた。こよしも ゆっくり歩いた。急ぐ必要はなかった。 商店街に入った。人が多かった。店が開い ていた。音楽が流れていた。賑やかだった 。賑やかですね。清よしが言った。ええ、 日曜日だから2人は歩き続けた。やの前を 通った。魚屋の前を通った。タ屋の前を 通った。タ屋の前で紅よしは立ち止まった 。小ウィにパンが並んでいた。メロンパン 、クリームパン、アンパン、何か買います か?清よしが聞いた。いえ、ただ見てる だけ。こよしはメロンパンを見つめた。 150円だった。僕が買いましょうか? いいえ、大丈夫よ。遠慮しないでください 。デート台は僕が持ちます。でも演技の 一部です。清よしは店に入った。こよは外 で待った。数分後、清よが出てきた。神袋 を持っていた。メロンパンを2つ買いまし た。1つどうぞ。清よしが神袋をこよしに 差し出した。ありがとう。こよしは神袋を 受け取った。中からメロンパンを取り出し た。温かかった。2人は歩きながらタンを 食べた。こよしはメロンパンを噛んだ。 甘かった。懐かしい味がした。夫と一緒に 食べた味がした。美味しいですか?清よし が聞いた。ええ、とても 微方園だ。それから2人は歩き続けた。 30分後は疲れた。少し休みませんか? 清よしが聞いた。ええ、近くにベンチが あった。2人は座った。膝、大丈夫ですか ?こよしが聞いた。少し痛みますが大丈夫 です。慣れてますから。清よしは杖を見た 。5年前に舞台で転んで膝を痛めました。 それからずっとこの杖と一緒です。舞台で A最後の舞台でした。清は遠くを見た。 小さな劇団でした。地方の公民館で講演し ていました。観客は20人くらい。でも僕 は必死に演じました。それが僕の仕事でし たから。こよしは黙って聞いていた。舞台 の上で走るシーンがありました。赤い恋人 を追いかけるシーン。僕は走りました。で も足がもつれて転びました。舞台から落ち ました。清よしは笑った。苦い笑いだった 。観客は驚きました。劇団員が駆け寄って きました。でも僕は立ち上がりました。 そしてセリフを続けました。待ってくれと 叫びました。足が痛かったけど演技を続け ました。それで公園が終わって病院に行き ました。膝の人体を痛めていました。医者 はもう舞台は無理だと言いました。清は空 を見上げた。それが僕の最後の舞台でした 。こよしは清の手を取った。冷たかった。 辛かったでしょう。最初は辛かったです。 でも今は仕方ないと思っています。人生に は終わりがあります。僕の舞隊人生も 終わったんです。でも今日あなたはまた 舞台に立ちますよ。こよが言った。清よは こよを見た。そうですね。今日から新しい 役を演じます。どんな役?エミさんの恋人 。2人は微方園だ。その時背後から声がし た。お母さん こよしは振り返った。ミカだった。 買い物袋を両手に持っていた。目を丸くし ていた。口が開いていた。こよしの心臓が 跳ねた。計画通りだった。でも実際に美カ を見ると緊張した。こよしは立ち上がった 。清よしも立ち上がった。あらミカ偶然ね 。こよしは明るく言った。演技が始まった 。ミカは動かなかった。こよと清を見てい た。お母さん、この方はミカの声は低かっ た。抑えていた清さんよ、福本清さん。 お父さんの会社の方の弟さん、清は一歩前 に出た。丁寧にお辞儀をした。福本清と 申します。お母様には大変お世話になって おります。三川清を見た。上から下まで 寝みするように。初めまして。みかの声は 冷たかった。お母さん、ちょっといい。 みかがこよしの腕を掴んだ。強く何い? 2人きりで話したいの。ミカはこよを 引っ張った。少し離れた場所に連れて行っ た。清よしはその場に残った。ミカは こよしを見つめた。お母さん、あの人誰? 言った通りよ。清さん本当にお父さんの 知り合いなの?ええ、いつから知り合って たの?お父さんが生きてた頃から。なぜ今 まで会ってなかったのを?こよしは答えに 詰まった。疎遠だったのよ。でも最近偶然 再開して偶然どこでスーパーで嘘をつくの は苦手だった。でも仕方なかった。ミカは 納得していない顔をしていた。お母さん、 あの人怪しいわ。どうしてだって急に現れ てお母さんに近づいてお金が目当てかも しれないじゃない。こよしはみかを見つめ た。私にはお金なんてないわ。あなたが 全部管理してるんだから。ミカの顔が 怖ばった。それはお母さんのため。本当に いい。本当よ。お母さんは騙されやすい から私が守ってるの。こよしは深呼吸した 。私は子供じゃないわ。自分で判断できる 。でも最近おかしいのよ。勝手に出かけ たり、変なこと言ったり、変なことを自由 が欲しいとかお母さん自由でしょう。この 家で好きなように暮らしてるじゃない。 こよしは笑った。冷たい笑いだった。自由 私がどこに行くにもあなたの許可が必要で お金も自由に使えなくてそれが自由。美香 は口を閉じた。こよしは続けた。さんは私 の話を聞いてくれる。私を尊重してくれる 。あなたよりずっとミカの顔が赤くなった 。お母さん何言ってるの?私お母さんの ことちゃんとちゃんと何?監視してる? 管理してる?みカは言葉を失った。こよし は清のところに戻った。清よしさん行き ましょう。清は頷いた。2人は歩き出した 。ミカは呆然と立っていた。買い物袋を 落としそうになっていた。核を曲がって みかが見えなくなった。こよしは 立ち止まった。深呼吸した。大丈夫ですか ?清よしが聞いた。こよしの手が震えてい た。ええ、大丈夫よ。でも声が震えていた 。清よしはこよしの手を取った。無理し ないでください。無理なんてしてないわ。 してます。顔が真っさです。こよしは 清よしを見た。清の目は優しかった。少し 休みましょう。清よしが言った。ええ、 近くにベンチがあった。2人は座った。 こよしは目を閉じた。心臓がドキドキして いた。興奮なのか恐怖なのか分からなかっ た。水を買ってきます。清が立ち上がった 。いいえ、大丈夫よ。遠慮しないで ください。清は自動販売機に向かった。 こよしは1人で座っていた。目を開けた。 空を見た。青かった。雲が流れていた。 清よしが戻ってきた。ペットボトルを 差し出した。どうぞ。ありがとう。こよし はペットボトルを開けた。水を飲んだ。 冷たかった。喉を通った。少し落ち着いた 。エミさん。はい。本当にこれを続けます か?こよしは清を見た。どういう意味? いい。娘さん傷ついてましたよ。あなたの 言葉にこよしは黙った。もしかしたら もっと優しい方法があるかもしれません。 ないわ。こよしは言った。私は何度も 話そうとした。でもミカは聞かなかった。 だからこれしかないの。清は何も言わ なかった。それにもう後戻りできないわ。 ミカはあなたのことを知ってしまった。清 は頷いた。わかりました。では続け ましょう。2人はしばらく黙って座ってい た。午後4時こよしと清は別れた。次は いつにしましょうか?清が聞いた。来週の 日曜日、また午後2時にわかりました。 清よしはこよしを見た。えみさん、今日 よく頑張りましたね。そう。ええ、娘さん にちゃんと言いたいことを言いました。 こよしは微方園だ。ありがとう。あなたが いてくれたから僕は何もしてませんよ。 いいえ。あなたがいるだけで心強かったわ 。清よしは照れた。 ではまた来週。ええ、清よしは歩き去った 。杖をついてゆっくりとこよしは清しの 後ろ姿を見た。それからバス停に向かった 。家に帰るとミカが玄関で待っていた。腕 を組んでいた。顔が険しかった。お母さん 話があります。ヨは靴を脱いだ。何い?今 に来てください。春人もいます。こよは今 に入った。ハ人がソファに座っていた。 こよしも座った。ミカは立ったままだった 。お母さん、あの男性について教えて ください。清よしさん。ええ、本当に お父さんの知り合いなの?そうよ。何度も 言ったでしょう。証拠はあるのを。証拠を 写真とか手紙とかこよしは考えた。ないわ 。でもお父さんのアドレス長に名前が載っ てる。見せて。こよしは2階に上がった。 部屋に入ってアドレス長を持ってきた。 ミカに渡した。ミカはページをめくった。 福本清の名前を見つけた。本当に乗ってる わね。言った通りでしょう。ミカは アドレス長を閉じた。でもそれだけじゃ 信用できないわ。は人が口を開いた。小木 さん、その方とどういう関係なんですか? こよしは人を見た。友達を。ただの友達。 ええ、ハ人はミカを見た。ミカはこよしを 見つめていた。お母さん正直に言ってその 人お母さんのこと好きなんじゃないの? こよしは驚いた。計画ではそこまで考えて いなかった。そんなことないわ。でも2人 で歩いてたじゃない。腕を組んで腕を組ん でいただろうか。こよしは思い出せなかっ た。清よしが手を取ったことはあった。で も腕を組んだだろうか。それはお母さん いい年して恥ずかしくないの?みカの声が 震えていた。恥ずかしい。どうしてだって 69歳でしょう。恋愛なんてもう卒業した でしょう。こよしはみカを見つめた。恋愛 に年齢制限があるの?ないけどでも普通 じゃないわ。普通って何言い?ミカは答え られなかった。こよしは立ち上がった。私 は普通の人生を送ってきたわ。普通に結婚 して、普通に子供を育てて、普通に夫を 見取った。でもそれだけじゃ嫌なの。残り の人生もっと自由に行きたいの。自由って 何をしたいの?好きなところに行って好き な人と会って好きなことをしたいの。ミカ は黙った。こよしは2階に上がった。部屋 に入ってドアを閉めた。ベッドに座った。 心臓がまだドキドキしていた。でもこよし は微方園だ。第1回デートは成功だった。 ミカは同揺していた。計画は進んでいた。 月曜日の朝こよは遅く起きた。疲れていた 。昨日のデートで体力を使い果たしていた 。階段を降りるとミカが台所にいた。朝食 を作っていた。包丁で何かを切る音がした 。いつもより早かった。いつもより強かっ た。おはよう。こよしが言った。ミカは 振り返らなかった。おはよう。短く答えた だけだった。こよしはテーブルに座った。 春人はいなかった。まだ寝ているのかも しれない。ミカが朝食を運んできた。ご飯 、味噌汁、焼き魚。テーブルに置く音が いつもより大きかった。いただきます。 こよしは橋を取った。ミカは座らなかった 。立ったままこよしを見ていた。何い? こよしが聞いた。お母さん昨日のこと考え た。何を?あの男性のこと。こよしは味噌 汁を飲んだ。清よしさんね。ええ、もう 合わないでくれる。こよしは箸を置いた。 どうしてお母さんのためよ。あの人怪しい もの怪しくないわ。どうしてそう言い きれるのをあったばかりでしょう。こよし はみ香を見た。人を見る目はあるつもりよ 。清よしさんはイ人よ。イ人かどうかどう やって分かるのを話せば分かるわ。ミカは 椅子に座った。テーブルに手をついた。 お母さん聞いて。最近高齢者を狙った詐欺 が本当に多いの。恋人のふりをして近づい てお金を騙しとるの。清さんはそんな人 じゃないわ。どうして分かるの?分かるの ?みカは深呼吸した。抑えようとしていた 。でも声が高くなっていた。お母さん、私 心配なの。もし騙されたらどうするの?お 金を取られたら怪我させられたらこよしは 静かに言った。私には取られるお金なんて ないわ。あなたが全部管理してるんだから 。ミカの顔が赤くなった。それはそれに 清よしさんは真摯を優しいし丁寧だし あなたよりよっぽど私のことを尊重して くれる。お母さんみカが立ち上がった。 何よ、私がお母さんを尊重してないって いうのを。そうよ。こよしもはっきりと 言った。あなたは私を子供扱いしてどこに も行かせないでお金も渡さないで。それが 村長をみかの目に涙が浮かんだ。私は お母さんのためにやってるのよ。誰が頼ん だのを。みかは答えられなかった。よしは 食事を続けた。魚は冷めていた。でも食べ た。ミカは台所に戻った。皿を洗う音がし た。いつもより乱暴だった。こよしは黙っ て食べた。午後は1人で縁側に座っていた 。庭を見ていた。小さな庭だった。花も 植えていなかった。ただ雑草が生えている だけだった。前の家には大きな庭があった 。夫が手入れをしていた。桜の木、梅の木 、菊く、バラ、季節ごとに違う花が咲いた 。こよはその庭が好きだった。朝縁川に 座って庭を眺めるのが日家だった。でも今 はその庭はない。小母さん背後から声がし た。は神だった。はひさん。春人はこよの 隣に座った。昨日は驚きました。どうして 小木さんに男性の友達がいるなんて。 こよしは人を見た。ハ人は庭を見ていた。 おかしいかしら?いえ、おかしくないです 。ただ意外だっただけです。春人は続けた 。でもみカは心配してます。分かってるわ 。だからお願いがあります。春人はこよし を見た。その方のこともっと詳しく教えて いただけませんか?どこに住んでるのか何 をしてる人なのか。こよしは考えた。 清よしについて詳しいことは知らなかった 。住所は知らない。仕事は元俳優という ことしか知らない。詳しくは知らないわ。 でもお父さんの知り合いなんでしょう。 ええ。でも夫が生きてた頃あまり会わ なかったから春人は頷いた。わかりました 。では次にあった時聞いてみてください。 住所と電話番号とできれば家族構成もどう して念のためです。もし何かあった時連絡 が取れるようにこよは人を見つめた。 あなたたち私を信用してないのね。信用し てますよ。でも心配なんです。心配?ええ 、小母さんは僕たちにとって大切な家族 ですから。春人の声は優しかった。でも目 は冷たかった。こよしは庭に視線を戻した 。分かったわ。聞いてみる。ありがとう ございます。春人は立ち上がった。小さん 、僕たちは小母さんの敵じゃありません。 味方です。春人は家の中に入った。こよし は1人縁川に残った。味方、その言葉が 虚しく響いた。火曜日、こよは公衆電話 から清に電話した。もしもし、清よさん、 えみさん、どうしました?少しお願いが あるんです。何でしょう?次にあった時、 あなたの住所と電話番号を教えてください 。電話の向こうで沈黙があった。どうして ですか?娘と娘子があなたのことを知り たがってるの。念のため連絡先を知って おきたいって。そうですか。清の声が少し 暗くなった。やっぱり疑われてますか? ええ、当然ですね。急に現れた老人です からこよしはじきを握りしめた。ごめん なさい。面倒なことに巻き込んでいえ 大丈夫です。契約の範囲内です。契約? その言葉がこよしの胸に刺さった。住所は 教えられます。電話番号もでも家に尋ねて 来られるのは困ります。こうして 恥ずかしい場所に住んでいるのでこよしは 何も言わなかった。6条一件のアパート です。古くて汚くて人を呼べるような場所 じゃありません。清の声は静かだった。で も何か諦めたような響きがあった。分かっ たわ。住所と電話番号だけでいいわ。 ありがとうございます。電話が切れた。 こよしはじきを見た。それからゆっくり おいた。水曜日の夜、夕食の時ミカが言っ た。お母さん、日曜日また会うのを。 こよしは橋を止めた。誰と清さんよ。 こよしは頷いた。ええ、美香川は人を見た 。春人は頷いた。お母さん、私たちも一緒 に行っていい?こよしは驚いた。どうして ちゃんと挨拶したいの?お父さんの 知り合いならちゃんと話したいわ。こよし は考えた。これは計画にはなかった。ミカ とは一緒に来たら清よしと2人きりで話せ ない。演技も難しくなる。でも断る理由も なかった。分かったわ。ミカは微縁だ。で もその笑顔は固かった。こよしは清しに 電話した。大変なの?娘と娘子が日曜日に 一緒に来るって。そうですか。清は驚いて いないようだった。予想してました。どう しましょう?演技を続けるだけです。今度 はもっと難しい演技になりますが。こよし は不安になった。大丈夫?大丈夫です。 役者ですから。清の声には自信があった。 でも気をつけてください。娘さんたちは僕 を試すかもしれません。試す。ええ、質問 攻めにするかもしれません。矛盾がないか 確かめるためにこよしは不安になった。 どうすればいい?真実を話すんです。真実 ええ。嘘をつくとボロが出ます。だから 真実を話す。ただし全部じゃなく必要な 部分だけ。こよしは清しの言葉を考えた。 分かったわ。日曜日頑張りましょう。ええ 、電話が切れた。こよしは不安だった。で も聞き返せなかった。土曜日こよしは眠れ なかった。ベッドに横になっていたが頭が 咲えていた。明日ミカとは一緒に来る。清 に会う質問する。もし何か矛盾があったら 、もし清がボロを出したら、もし全部バレ たらこよしは不安だった。でも同時に何か 期待もあった。ミカがこよしの話を聞いて くれるかもしれない。こよしの気持ちを 理解してくれるかもしれない。こよしは目 を閉じた。そしてやっと眠りに着いた。 曜日午後1 時よ準備を始めた。色のワンピース 化粧を整える 鏡を見た。手が震えていた。緊張していた。カがに入ってきた。もせずにお母さん準備できた。もうすぐよ。カはこよ。 そのワンピースまた切るのを気に言ってる の?ミカは何も言わなかった。でも顔に 何か書いてあった。不満心配 には分からなかった。1時半に出るわよ。 美カは部屋を出た。こよしは深呼吸した。 1時半、4人は家を出た。こよし、ミカ人 車で駅に向かった。アル人が運転した。車 の中は静かだった。誰も話さなかった。 こよは窓の外を見た。景色が流れていた。 駅に着いた。春人は車を駐車場に止めた。 どこで会うのをミカが聞いた。駅前何時? 2時計を見た。1時50分だった。4人は 駅前に向かった。人が多かった。日曜日だ からこよは清しを探した。いたベンチに 座っていた。グレーのスーツ、白いシャツ 、ネクタイ、杖を持っていた。こよしは 近づいた。ミカと春人がついてきた。清よ さん。清は立ち上がった。こよを見た。 それからミカと春人を見た。えみさん、 それから娘さんと娘子さんですね。清は 丁寧にお辞儀をした。初めまして。福本清 と申します。美香は軽くお辞儀をした。 美かです。母がお世話になっております。 春人もお辞儀をした。春人です。よろしく お願いします。4人は立ったままだった。 沈黙があった。どこかで話しましょうか。 清が言った。そうね。近くに喫茶店がある わ。が行った。4人は喫茶店に向かった。 喫茶店桜に入った。4人は席に座った。 こよと清が隣同士向いにミカと春人、 ウェイトレスが来た。ご注文はコーヒーを 4つ、春人が行った。ウェイトレスは去っ た。沈黙があった。ミカが口を開いた。 福本さん、お父さんとはどういうご関係 だったんですか?清よしは答えた。兄が お父様の同僚でした。営業部に言いました 。兄え 福本哲也5年前に亡くなりました。ミカは 頷いた。それでお母さんとはお父様の葬式 で初めてお会いしました。それ以来ずっと 連絡を取っていませんでしたが、最近偶然 再開しまして、どこで?清よしはこよしを 見た。こよしは頷いた。スーパーです。 スーパーA買い物をしていたらこよさんを 見かけました。声をかけたら覚えていて くださってみかは清を見つめた。探るよう に。それでまた会うようになったんですか ?ええ、お互い暮らしで寂しかったので コーヒーが来た。4人は飲んだ。は人が 聞いた。福本さんはお仕事は今は引退して います。以前は俳優をしていました。地方 の劇団で。俳優。春人は驚いた顔をした。 ええ、もう20年前のことですが、どうし てやめたんですか?清よしは杖を見た。 怪我をしまして膝を痛めて舞台に立てなく なりました。ミカが聞いた。今は何をされ てるんですか?何もしていません。年金で 暮らしています。年金?ミカの声が少し 高くなった。ええ、いくらくらいいい? こよしはミカを見た。な質問だった。でも 清は答えた。月に9万円ほどです。美香と ハ人は顔を見合わせた。9万円で生活 できるんですか?ギリギリですがなんとか 美川は清を見つめた。福本さん、お母さん にお金を借りようとしてませんか?こよし は息を飲んだ。清よしは静かに言った。 いいえ。本当ですか?本当です。こよさん とはただの友達です。ミカは納得してい ない顔をしていた。春人が聞いた。福本 さん住所を教えていただけますか? もちろん清はポケットからメモを取り出し た。渡した。春人はメモを見た。武蔵の市 、このアパート知ってます。古いアパート ですね。ええ、地区40年です。 春人はメモをポケットにしまった。電話 番号も書いてあります。いつでも連絡して ください。清が言った。美香は清を見つめ ていた。寝みするように。福本さん、 お母さんのことどう思ってるんですか? 清よしはこよを見た。こよしも清しを見た 。素敵な方だと思っています。素敵。ええ 。透明で優しくて真が強い。こよしは顔が 熱くなるのを感じた。お母さんを好きなん ですか?みかの質問は直接的だった。清は 答えに詰まった。こよしも息を止めた。 清よは言った。好きです。こよの心臓が 跳ねた。でもそれ以上のことは考えてい ません。僕たちはもう若くありません。 ただ一緒にいて話をして楽しい時間を 過ごす。それだけで十分です。みかは黙っ ていた。春人が言った。福本さんの気持ち は分かりました。でも小母さんには僕たち がいます。だからあまり深入りしないで いただけませんか?清よしは春人を見た。 深りええ。小木さんは判断力が少し鈍って きてます。だから変なことを言い出すかも しれません。でも真に受けないでください 。こよしは立ち上がった。はひさん何を 言ってるの?小母さん座ってください。 座らないわ。私は判断力なんて鈍ってない 。みかも立ち上がった。お母さん落ち着い て。落ち着いてるわ。でも黙ってられない の。あなたたち私のことを何だと思ってる の?こよしの声が震えていた。怒りで お母さん私は子供じゃない。ちゃんと考え られる。ちゃんと判断できる。清よしが 立ち上がった。えみさん落ち着いて清よし がこよしの手を取った。大丈夫です。僕が います。こよは清を見た。清の目は 優しかった。は新呼吸した。それから座っ た。ミカも座った。春人も座った。沈黙が あった。清よしが行った。はひさん、みか さん。お2人がこよさんを心配する気持ち は分かります。でもこよさんは皆さんが 思っているよりずっとしっかりしています 。みかは何も言わなかった。それに僕は こよしさんを傷つけるつもりはありません 。ただ友達として一緒に時間を過ごしたい だけです。は人が言った。でも小母さんの 年金を年金よし は驚いた顔をした。僕がこよしさんの年金 を狙ってるとでも春人は黙った。清よしは 笑った。冷たい笑いだった。なるほど。 そういうことですか。清よしはこよしを見 た。えみさん、あなたの年金は誰が管理し てるんですか?こよしは答えられなかった 。清よしはミカと春人を見た。まさかお 2人が美香の顔が赤くなった。それは お母さんのためよ。お母さんのため清よし の声が低くなった。年金を取り上げて月 2100円しか渡さないのがお母さんの ため。ミカは息を飲んだ。どうしてそれを えみさんから聞きました?清よしは続けた 。それにどこにも行かせない。誰にも 合わせない。それがお母さんのため春人が 立ち上がった。福本さん、あなたに僕たち の家庭のことを言う権利はありません。 権利はありません。でも言わせてください 。清よしも立ち上がった。2人は 向かい合った。あなたたちはこよさんを 守ってるんじゃない。管理してるんです。 こよさんの自由を奪ってこよさんのお金を 使って黙れ。は人が叫んだ喫茶店の他の客 がこちらを見た。ハ人落ち着いてみかが ハ人の腕を掴んだ。ハ人は座った。清も 座った。沈黙があった。重い沈黙だった。 は清の手を握った。ありがとう。清よしは 頷いた。ミカが言った。お母さん、そんな に不満だったの?私たちのこと。こよしは みカを見た。ミカの目に涙があった。不満 だったわ。どうして言ってくれなかったの ?言ったわ。でもあなたは聞かなかった。 みカは俯いた。私お母さんのことちゃんと 考えてたつもりだったのにこよしは何も 言わなかった。は人が言った。小さん僕 たちが間違ってたかもしれません。でも悪 はなかったんです。こよしは春人を見た。 悪木がなければ何をしてもいいのを春人は 答えられなかった。こよしは立ち上がった 。カエルは清さんと2人で美香が 立ち上がった。 お母さん待って。何?これからどうするの を?こよしは考えた。わからない。でも今 まで通りには戻らない。こよは清を見た。 行きましょう。清は頷いた。2人は喫茶店 を出た。ミカと春人は席に残された。外に 出ると風が吹いていた。冷たかった。 こよしは震えた。清よしがコートを脱いだ 。こよしの肩にかけた。大丈夫ですか? ええ、こよは歩き出した。清よしもついて きた。駅前を歩いた。人が多かった。でも こよには見えなかった。ただ歩いていた。 えみさん清が読んだ。こよは立ち止まった 。どこに行きますか?こよは気づいた。 行く場所がなかった。家に帰ればミカと ハ人がいる。でも他に行く場所がない。 分からない。こよしの声が震えた。清は こよしの手を取った。僕の家に来ますか? こよしは清を見た。でもあなた恥ずかしい 場所だって。恥ずかしいです。でも今は他 に選択肢がありません。こよしは考えた。 それから頷いた。お願いします。2人は駅 に向かった。電車に乗った。30分後、 武蔵野市の駅に着いた。駅から10分歩い た。清よは杖を着いてゆっくり歩いた。 こよしもゆっくり歩いた。古いアパートに 着いた。3階建て。壁が剥がれていた。 階段が錆びていた。ここです。清が言った 。2人は階段を上がった。2階1番奥の 部屋。清よしが鍵を開けた。ドアを開けた 。どうぞ。こよしは中に入った。6畳の 部屋だった。小さなキッチン。古い冷蔵庫 。布団が畳まれていた。本棚があった。本 がぎっしり詰まっていた。汚くてすみませ ん。清よしが言った。いいえ。そんなこと ないわ。 こよしは部屋を見回した。壁にポスターが 貼ってあった。古い映画のポスター。白黒 の写真。これは昔出演した舞台のポスター です。こよしは近づいた。ポスターには 若い清しが映っていた。りしい顔。背筋が 伸びていた。かっこいいわね。昔の話です 。清よしはお茶を入れ始めた。は床に座っ た。部屋は狭かった。でも清潔だった。窓 から光が入っていた。清よしがお茶を持っ てきた。どうぞ。ありがとう。2人はお茶 を飲んだ。沈黙があった。でも心地よい 沈黙だった。えみさん何?今日言いすぎ ました。娘さんたちにこよしは首を横に 振った。言ってくれてありがとう。私が 言えなかったこと全部言ってくれた。 清よしはこよしを見た。これからどうし ますか?分からない。こよしは窓の外を見 た。でも家には帰りたくない。今は清しは 頷いた。ここにいてもいいですよ。今夜は こよは清よしを見た。でも僕は下の貝の 友人のところに止まります。ここはこよ さんが使ってください。そんな悪いわ。 いいんです。こよさんは今休む場所が必要 です。こよしは何も言えなかった。清は 立ち上がった。布団を敷きます。清は 押入れから布団を取り出した。敷いた。 夕飯は冷蔵庫に何かあります。勝手に使っ てください。ありがとう。清よしはドアに 向かった。清よしさん。清よしは振り返っ た。本当にありがとう。清よしは微えんだ 。どういたしまして?清よしはドアを閉め た。こよしは1人部屋に残された。窓の外 を見た。夕日が沈み始めていた。空が オレンジ色に染まっていた。こよしは布団 に座った。疲れていた。体も心もでも 不思議と落ち着いていた。この小さな部屋 。清よしの部屋。こよしは部屋を見回した 。本棚に近づいた。本を見た。気局が 多かった。シェイクスピア、チェイホフ 三島行きを全部古い本だった。ページが 黄ばんでいた。こよは一取り出した。桜の 円チェフ開いた。最初のページにメモが 書いてあった。清よしの字だった。 1998年公演ロ役。このセリフもっと 強くこよはページをめくった。あちこちに メモがあった。清よしの演技メモ。何十年 も前のこよは本を閉じた。本棚に戻した。 それから窓の外を見た。太陽が沈んでいた 。夜こよしは眠れなかった。布団に横に なっていたが目がさえていた。携帯電話が ないからみかに連絡できない。ミカは心配 しているだろう。でもこよしは連絡する気 になれなかった。今みかの顔を見たらまた 言い争いになる。それは嫌だった。こよし は起き上がった。キッチンに行った。 水を飲んだ。冷蔵庫を開けた。中には ほとんど何も入っていなかった。卵が3個 、牛乳が半分。古いパン。清よしは本当に ギリギリの生活をしているんだ。こよしは 冷蔵庫を閉めた。罪悪感があった。清に こんなに世話になって清はお金に困って いるのに。でも清は何も言わなかった。 文句も言わずを受け入れてくれた。こよし は涙が出走になった。翌朝ドアをノック する音がした。こよしは起きた。時計を見 た。午前7時だった。ドアを開けた。 清よしだった。おはようございます。 おはよう。よく眠れましたか?ええ、嘘 だった。ほとんど眠れなかった。でも清し を心配させたくなかった。朝食を買ってき ました。清よしがコンビニの袋を持ってい た。ありがとう。2人はキッチンで朝食を 食べた。おにぎりとお茶。えみさん、今日 どうしますか?清よしが聞いた。家に帰る わ。大丈夫ですか?分からない。でも逃げ てばかりはいられないわ。清よしは頷いた 。送りますよ。いいえ。1人で行くわ。で も大丈夫よ。これは私とミカの問題だから 。清よしは何も言わなかった。こよしは 朝食を食べ終えた。清よしさん本当に ありがとう。あなたがいてくれて助かった わ。どういたしましてこよしは立ち上がっ た。それからこれはバックから封筒を 取り出した。中にはお金が入っていた。 昨日の分5000円。清よしは封筒を見た 。受け取らなかった。いいですよ。昨日は デートじゃなかったですから。でも約束だ から。約束は娘さんに見せるためのデート でした。昨日は違いました。こよは封筒を 清よしの手に押し付けた。お願い。 受け取ってきよしは躊躇した。それから 受け取った。ありがとうございます。 こよしは微園だ。じゃあ行くわね。気を つけて。こよしは部屋を出た。階段を降り た。外に出た。朝の空気は冷たかった。で もすがす々しかった。こよは駅に向かった 。午前9くじ時こよは家に着いた。玄関の ドアは開いていた。こよは中に入った。 ただいま誰も答えなかった。今に行った。 誰もいなかった。ミカ2階に上がった。 ミカの部屋のドアが開いていた。中を覗い た。ミカがベッドに座っていた。携帯電話 を握っていた。目が赤かった。泣いていた ようだった。ミカミカは顔をあげた。 こよしを見た。お母さんみカは立ち上がっ た。 にけよった。お母さんどこにいたのを心配したのよ。香はこよを抱きしめた。ごめんさい。こよしのカを抱きしめた。ごめんさい。私た。カは泣いていた。こよはカの背中を撫でた。いいのよ。いいええ。良くないわ。私のこと全然分かってなかった。 2人はしばらく抱き合っていた。それから ミカが顔をあげた。お母さん話さない。 ちゃんとこよしは頷いた。ええ、2人は今 に座った。春人は仕事を探しに出かけてい た。家には2人きりだった。ミカがお茶を 入れた。お母さん昨日どこにいたのを 清よしさんの家よ。みかの顔が曇った。 一緒に違うわ。清さんは友人のところに 止まったの。私が清さんの部屋を借りたの 。ミカは安した顔をした。そうみか、 あなたに言いたいことがあるの。こよしは 深呼吸した。私もう子供じゃないの。69 歳だけどまだちゃんと考えられる。 ちゃんと判断できる。だから私のことは私 に決めさせてみかは黙って聞いていた。 年金のことも私の年金は私が管理したい。 あなたに管理してもらう必要はないわ。で もお母さん騙されたら騙されるかもしれ ない。でもそれは私の責任よ。私が決めて 私が失敗する。それでいいの。ミカは俯い た。私お母さんを守りたかっただけなの。 分かってるわ。でも守りすぎたの。ミカは 涙を吹いた。お父さんが死んでから私不安 だったの。お母さんが1人で何かあったら どうしようって。だから一緒に住もうって 言ったの。こよしはみかの手を取った。 その気持ちは嬉しかったわ。でも一緒に 住むことと私を管理することは違うの。 みカは頷いた。わかった。これから帰るわ 。本当?本当よ。年金も全部お母さんに 返す。お母さんが好きなように使って こよしは微園だ。ありがとう。みかも微縁 だ。涙を流しながらお母さん清よしさんの こと本当に好きなのを。こよしは答えに 詰まった。好き。その言葉の意味をこよし は考えた。清よしは優しかった。紳摯だっ た。こよしの話を聞いてくれた。こよしを 尊重してくれた。でもそれは演技だった。 清よしはお金のためにこよの恋人を演じて いた。こよしは清が好きだった。でも清は 与のことをどう思っているのか分からない わ。ヨは正直に言った。でも清よしさんと いると楽しいの。久しぶりに自分が生きて るって感じられるの。みかはこよしを 見つめた。お母さん幸せそうね。そう。 ええ。昔のお父さんと一緒にいた頃の お母さんみたい。こよしは驚いた。本当? 本当よ。みかは微園だ。だったらいいわ。 ひさんと会い続けてこよしはみかを見た。 いいの?ええ、でも条件があるわ。何い? 私にも清さんとちゃんと話させて。昨日は ひどい言い方しちゃったから謝りたいの。 こよしは頷いた。分かったわ。2人は 微笑み合った。その日の午後高吉は公衆 電話から清に電話した。 もしもしよしさんみさん家に帰れましたか?ええ、カと話したわ。どうでしたか?かったわ。カと言ってくれた。年金も返しって。それは良かったです。清よしの声は明るかった。こはもう僕の役目は終わりですね。こよしは黙った。終わり。 その言葉が胸に刺さった。そうね。こよし は言った。計画は成功したわ。ありがとう さん。どういたしまして?沈黙があった。 えみさん、何い?これからも会えますか? こよしの心臓が跳ねた。会える?ええ、 もう演技じゃなく友達としてこよしは 微方園だ。 もちろん良かった。清よしの声はほっとし ているようだった。じゃあまた日曜日に。 ええ、今度はどこに行きましょうか?映画 はどう?清よしさん、映画好きでしょう? ええ、大好きです。2人は笑った。じゃあ 日曜日にええ、電話が切れた。こよしは じきを見た。それからゆっくりおいた。心 が暖かかった。日曜日こよと清は映画館に いた。古い日本映画の上映会安二郎の東京 物語。映画が終わった後2人は喫茶店に 入った。どうでしたか?清よしが聞いた。 良かったわ。でも悲しかった。そうですね 。親とこの距離を描いた映画でした。よし は窓の外を見た。みかもあの映画の子供 たちみたいだったのかしら。どういう意味 ですか?忙しくて親のことを考える余裕が なくてでも悪気はなくてきよしはこよしを 見た。ゆみさん娘さんを許したんですね。 許したというか理解したの。みかも大変 だったのよ。夫が仕事を失ってお金に困っ てだから私の年金に頼った。それは間違っ てたかもしれないけど仕方なかったのかも しれない。清よしは何も言わなかった。で もこれから変わるわ。ミカは約束してくれ た。それならいいですね。こよしは コーヒーを飲んだ。清よしさん、あなたに 謝らなきゃいけないことがあるの。何です か?あなたを利用したこと。お金で私の 恋人を演じてもらって清よしは首を横に 振った。謝らないでください。僕は自分で 決めて聞き受けました。でもそれに 楽しかったです。こよしは清よしを見た。 楽しかった。ええ、久しぶりに役を演じ ました。舞台を降りてからずっと何もして ませんでした。毎日が空っぽでした。でも こよさんのおかげでまた役者になれました 。清よしは微方園だ。だから感謝してるの は僕の方です。こよしは何も言えなかった 。それに清よしが続けた演技だけじゃ なかったです。ええ、えみさんと過ごした 時間、あれは演技じゃありませんでした。 こよしの心臓が早くなった。最初は演技の つもりでした。でもこよさんと話している うちに本当に楽しくなりました。こよさん は面白い方です。相明で優しくて勇気が ある。こよしは顔が熱くなるのを感じた。 だからこれからも会いたいんです。もうお 金入りません。ただ友達としてこよは清を 見つめた。私も会いたいわ。2人は微方園 だ。それからこよと清は毎週日曜日にあっ た。映画を見に行った。公演を散歩した。 喫茶店で話した。美カは約束通り年金を こよに返した。こよは自分で銀行口座を 管理し始めた。リカは最初不安だった。で も徐々に荒氏を信頼するようになった。 春人は新しい仕事を見つけた。給料は前 より安かったが、それでも収入があること が嬉しかった。こよと美香の関係も少し ずつ変わっていった。ミカはこよの意見を 聞くようになった。こよしもみかの気持ち を理解しようとした。完璧ではなかった。 時々言い争いもあった。でも以前よりは ずっと良くなった。3ヶ月後、ある日曜日 、こよと清はいつもの喫茶店にいた。清よ さん、お願いがあるの?こよしが言った。 何ですか?ミカが清さんを夕飯に招待した いって清よしは驚いた。本当ですか?ええ 、ちゃんと話したいって。前回はひどい ことを言ってしまったから謝りたいって 清しは考えた。わかりました。行きます。 本当?嫌じゃない。嫌じゃありません。娘 さんとちゃんと話したいです。こよしは 微方園だ。ありがとう。土曜日の夜、清よ はこよの家を訪れた。玄関で美香と春人が 迎えた。いらっしゃいません。 ミカが丁寧にお辞儀をした。お招き いただきありがとうございます。清よしも 丁寧にお辞儀をした。4人は今に座った。 ミカが料理を運んできた。手巻き寿司だっ た。福本さん、お寿司は大丈夫ですか? ええ、大好きです。4人で食事を始めた。 最初は少し緊張していた。でも徐々に会話 がはんできた。清が昔の舞台の話をした。 美香とハ人は興味部に聞いていた。福本 さん、俳優って大変なお仕事でしたか? ハ人が聞いた。大変でした。でもやりがい がありました。舞台の上で別の人間に なれる。それが面白かったです。今はもう 舞台には膝を痛めてから無理になりました 。でも後悔はしていません。清よしは こよしを見た。人生には次の賞があります から。こよしは微方園だ。食事が終わった 後ミカが言った。福本さん前回はひどい ことを言ってしまってすみませんでした。 清よしは首を横に振った。いいえ。当然の 反応でした。でも福本さんのおかげで私 気づけました。お母さんのこと全然分かっ てなかったって美かよを見た。だから感謝 してるんです。清よしは微方園だ。どう いたしまして?春人が言った。福本さん、 これからも小さんと会い続けてくれますか ?もちろんです。小木さん、福本さんと いると本当に楽しそうなんです。だからお 願いします。清よしはこよしを見た。 こよしも清を見た。こちらこそよろしくお 願いします。その夜が帰る時こよは玄関 まで見送った。今日はありがとう。こよが 言った。楽しかったです。みか変わった でしょう。ええ、いい娘さんですね。 こよしは微方園だ。清よしさんのおかげよ 。あなたがいなかったら私マダーの檻の中 にいたわ。清よしはこよしの手を取った。 えみさん、これからも一緒に過ごしてくれ ますか?もちろん。僕はお金もないし、膝 も悪いし何も差し上げられません。でも 時間はあります。こよしさんと過ごす時間 を大切にしたいです。こよは清しの手を 握った。それで十分よ。2人は微方園だ。 清よは家を出た。こよしは玄関で清の 後ろ姿を見た。杖をついてゆっくり歩いて いく姿。でも背中は前より伸びているよう に見えた。それからさらに3ヶ月が経った 。ある日こよは清から電話を受けた。えみ さん、今週の日曜日いつもと違う場所に 行きませんか?どこ?秘密です。でも きっと気に入ってもらえると思います。 こよしは笑った。分かったわ。楽しみにし てる。日曜日清よしがこよしを連れて行っ た場所は小さな劇場だった。ここは僕が昔 出演していた劇場です。まだあるのをええ 、今は若い劇団が使っています。2人は 劇場に入った。客席には20人ほどの観客 がいた。今日何の公園?チェイホフの桜の 縁です。こよしは驚いた。あなたが演じた 役。Aロパー品役。激が始まった。こよは 舞台を見つめた。若い役者たちが一生懸命 演じていた。隣を見ると清よしも舞台を 見つめていた。メガが焼いていた。劇が 終わった後、2人は外に出た。どうでした か?清よしが聞いた。よかったわ。あの 若い役者たち一生懸命だった。そうですね 。清は空を見上げた。僕もあの頃はあんな 風に必死でした。あなたは舞台が恋しい。 清よしはこよしを見た。恋しいです。でも もう戻れません。残念ね。清よしは首を横 に振った。残念じゃありません。僕には今 違う舞台がありますから。違う部隊。A さんとの人生という部隊です。こよは笑っ た。それは随分ロマンチックな言い方ね。 元役者ですから2人は笑った。それから手 をついで歩き始めた。それから1年が経っ た。氏は70歳になった。清よは74歳に なった。2人はまだ毎週日曜日に会ってい た。こよの生活は大きく変わった。年金を 自分で管理し、好きなものを買い好きな 場所に行った。美カとの関係も安定してい た。時々意見が合わないこともあったがお 互いを尊重するようになった。春人の仕事 も軌動に乗り家計は改善した。全てが うまくいっているように見えた。でもある 日よしが倒れた。こよが電話を受けたのは 火曜日の午前だった。えみさんですか? 福本清さんの知り合いの知らない声だった 。はい。そうですが清さんが病院に運ばれ ました。あなたの連絡先を教えてくれと 言ってましてこよしの心臓が止まりそうに なった。どこの病院ですか?こよは病院に 駆けつけた。清よはベッドに横たわってい た。顔色が悪かった。清よさん、こよしが 近づいた。清よしは目を開けた。えみさん すみません。心配かけて何があったのを 階段で転んで膝が痛くて動けなくなって 医者が来た。ご家族の方ですか?友人です 。 そうですか。福本さん膝の状態が悪化して います。手術が必要かもしれません。 手術う。ええ、でも費用が医者は言いにく そうにした。福本さん貯金がほとんどない ようでしてこよは清を見た。清よしは目を そらした。いくらかかりますか? 100万円ほどです。こよしは考えた。 自分の貯金を使えば払える。でもそれを 使ったらもう余裕はなくなる。でもこよし は迷わなかった。私が払います。えみさん だめです。清よしが言った。そんな大金 いいの?あなたが私を自由にしてくれたん だから今度は私があなたを助ける番よ。清 は涙を浮かべた。ありがとうございます。 手術は成功した。清よしは1ヶ月入院した 。こよは毎日見舞に行った。ミカも何度か 一緒に来た。お母さん100万円。大丈夫 ?みカが心配そうに聞いた。大丈夫よ。 まだ少し残ってるわ。でもいいのよ。お金 は使うためにあるんだから。みカは何も 言わなかった。でも心配だった。清よが 退員した日、荒吉は迎えに行った。これ からどうするのを?こよしが聞いた。 アパートに戻ります。1人で大丈夫? 大丈夫です。リハビりもしましたし。でも 清の足取りは以前より不安定だった。杖を ついてもふらついていた。こよしは心配 だった。清さん、私の家に来ない?清よし は驚いた。ええ、みかに頼んで部屋を1つ かしてもらうわ。そうすれば私が面倒を見 られる。でも娘さんがみかは反対しないわ 。私が説得する。清よしは迷っていた。 えみさんの負担になりたくありません。 負担じゃないわ。私がそうしたいの。 清よしはこよしを見た。本当にいいんです か?ええ、清よしは目を閉じた。それから 頷いた。ありがとうございます。家に帰っ てこよしはみ香に話した。清よしさんを ここに住ませたいの。み香は驚いた。ここ にいええきよしさん1人じゃ危ないの。誰 か側にいないと。でもお母さんみ川は春人 を見た。は考え込んでいた。小さん、福本 さんと結婚するつもりですか?こよは答え に詰まった。結婚?考えたことがなかった 。分からないわ。でも今はただ清よしさん を助けたいの。美かは深呼吸した。分かっ たわ。2階の秋部屋を使ってもらい ましょう。本当?ええ、お母さんがそうし たいならこよしはみかを抱きしめた。 ありがとう。清よしはこよの家に引っ越し てきた。荷物は少なかった。服と本だけ だった。清よしの部屋は2階の奥の部屋 だった。窓から庭が見えた。小さな庭だっ たが清は気に入った。いい部屋ですね。 でしょう。こよしは微方園だ。それから こよと清は同じ家で暮らし始めた。最初は 気ちなかった。美香川は清に対してまだ 少し警戒していた。春人もよそよそしかっ た。でも徐々に慣れていった。清よしは 静かな人だった。自分の部屋にいることが 多かった。本を読んだり、窓から庭を眺め たり。でも夕食の時は皆と一緒に食卓を 囲んだ。 清は面白い話をたくさん知っていた。昔の 舞台の話、出会った役者たちの話。ミカと 春人も徐々に清よしに心を開いていった。 3ヶ月後、ある夜、荒よは清の部屋を ノックした。入っていい?どうぞ。こよし は部屋に入った。清よしは窓際の椅子に 座っていた。本を読んでいた。何読んでる の?桜の縁です。何度呼んでも新しい発見 があります。こよしは清の隣に座った。 清よさん、聞きたいことがあるの?何です か?最初私があなたに恋人のふりを頼んだ 時、どう思った?清よしは本を閉じた。 正直に言えば狂ってると思いました。 こよしは笑った。でも面白いとも思いまし た。こんな年になってまだこんなドラマが あるんだって。清よは窓の外を見た。それ にこよさんの目を見て分かりました。本気 なんだって。必死なんだって。こよしは 黙って聞いていた。だから聞き受けました 。お金のためだけじゃなく吉さんを助け たかったから。ありがとう。清よしは こよしを見た。えみさん、僕に聞きたい ことがあります。何い、僕のことどう思っ ていますか?こよしは答えに詰まった。 清よしのことどう思っているのか。最初は ただの契約相手だった。お金で雇った役者 でも今は違う。清はこよしの大切な人に なっていた。一緒にいると心が落ち着いた 。話をすると楽しかった。でもそれは恋な のか?70歳の笑にまだ恋ができるのか 分からないわ。こよしは正直に言った。 好きよ。でもそれが恋なのか友情なのか 分からない。清よしは微法微縁だ。分から なくていいんです。ええ、僕たちはもう 若くありません。恋だとか友情だとか そんな言葉で決める必要はないんです。 清よしはこよしの手を取った。ただ一緒に いたい。それだけで十分です。こよしは涙 が出走になった。私も一緒に痛いわ。2人 は手をついだまましばらく黙っていた。窓 の外では月が出ていた。それからさらに 半年が経った。こよは71歳になった。 清よしは75歳になった。清の膝の調子は 良くなったり悪くなったりを繰り返した。 いい日は杖なしで歩けた。悪い日はベッド から起き上がるのもからかった。こよしは 清よしの面倒を見た。薬を管理し、食事に 気を使いを手伝った。ミカは最初心配して いた。お母さん大変じゃない。福本さんの 介護。最後じゃないわ。ただ手伝ってる だけよ。でも本当は大変だった。こよしも 年を取っていた。体力が落ちていた。ある 日こよは階段で足を滑らせた。幸い怪我は なかった。でもミカは心配した。お母さん 無理しないで。大丈夫よ。大丈夫じゃない わ。お母さんももう71歳なのよ。こよし は黙った。ミカは続けた。お母さん福本 さんのこと施設に入れることは考えないの 。こよしはミカを睨んだ。何を言ってるの だってこのままじゃお母さんが倒れるわ。 倒れないわ。でもみかこよしの声は静か だったが強かった。清さんを施設に入れる なんて考えたこともないわ。清さんはここ にいる。私と一緒に美香は何も言えなかっ た。その夜こよは清の部屋に行った。清よ はベッドに横たわっていた。今日は調子が 悪い日だった。清よしさん起きてる?ええ 。こよしは椅子に座った。ミカがあなたを 施設に入れろって言ったわ。はこよを見た 。それも1つの選択肢かもしれません。何 を言ってるの?えみさん僕のせいであなた が苦労してる。それが辛いんです。苦労 なんてしてないわ。してますよ。毎日僕の 面倒を見て疲れてるのが顔に出てます。 こよしは何も言わなかった。清よしは続け た。えみさんあなたは自由になったんです 。もう誰にも縛られないなのに。今度は僕 に縛られてる。縛られてないわ。縛られて ますよ。僕がいるから自由に出かけられ ない。僕がいるから好きなことができない 。こよしは清しの手を取った。清さん 聞いけ。私は自由よ。あなたということを 私が選んだの。誰にも強制されてない。 清よしは目を閉じた。でも僕はあなたに何 も返せない。ただ負担をかけてるだけ。 返してもらおうなんて思ってないわ。 こよしは清しの手を握りしめた。あなたは 私に自由をくれたわ。それだけで十分よ。 清よしは涙を流した。ありがとう。こよし も泣いた。2人は手を繋いだまましばらく 泣いていた。翌朝こよは目を覚ました。 いつもより遅かった。体が重かった。階段 を降りるとミカが朝食を作っていた。 お母さん、おはよう。おはよう。こよしは テーブルに座った。お母さん、顔色悪いわ よ。そう、ちょっと寝不足なだけよ。みか は心配層に笑みを見た。お母さん、今日 病院に行かない。献心いいわ。別に悪い ところないものでも大丈夫よ。こよしは 朝食を食べた。でも食欲がなかった。食後 こよは清よしの部屋に行った。ノックした 。返事がなかった。もう1度ノックした。 やはり返事がない。こよしは不安になった 。ドアを開けた。清よしはベッドに 横たわっていた。目を閉じていた清さん。 こよしは近づいた。清よしの顔は青白かっ た。額に汗をかいていた。清よさん。 こよしは清をゆった。清よしは目を開けた 。でも商店が合っていなかった。エミさん 大丈夫?どうしたの?頭が痛くてこよしは 慌てて階段を降りた。か救急車を呼んで清 は病院に運ばれた。診断は脳梗速だった。 経度だったが危険な状態だった。こよしと 美香は病院の待ち合い室にいた。お母さん 大丈夫?ミカがヨ師の方を抱いた。こよは 何も言わなかった。ただ震えていた。医者 が来た。福本さんのご家族ですか?友人 です。そうですか。福本さん命に別情は ありません。でもしばらく入院が必要です 。どのくらい?1ヶ月ほどでしょう。 こよしは安した。それから医者は続けた。 退員後も介護が必要になります。 1人暮らしは難しいでしょう。こよしは 頷いた。わかりました。は1ヶ月入院した 。こよは毎日見舞に行った。ミカも時々 一緒に来た。清の回復は遅かった。話すの もゆっくりだった。歩くのはさらに 難しかった。ある日こよが見舞いに行くと 清よしは窓の外を見ていた。清さん清よし は振り返った。えみさんこよしは椅子に 座った。調子はどう?良くなってます。 少しずつ。そうよかった。沈黙があった。 清よしが言った。えみさん、僕施設に入る ことにしました。こよしは息を飲んだ。 どうしてこれ以上あなたに迷惑をかけられ ません。迷惑なんかじゃないわ。迷惑です 。清の声は静かだったが決意があった。 えみさん、あなたは自由になったんです。 もう誰のためでもなく自分のために生きて ください。でも私あなたと一緒にいたいの 。清よしは微縁だ。悲しい微笑みだった。 僕もあなたと一緒にいたい。でもそれは あなたのためにならない。こよしは涙を 流した。そんなこと私が決めるわ。えみ さん、清よしはこよしの手を取った。 あなたはもう十分僕のためにしてくれまし た。もういいんです。こよしは首を横に 振った。いやよ、あなたを1人にはしたく ない。1人じゃありません。施設には スタッフもいるし、他の入居者もいます。 でもそれにこよさん、あなたも疲れてます 。もう休んでください。こよしは何も言え なかった。清よしは続けた。僕たちの関係 は終わりません。施設に入ってもあなたは 会いに来てくれるでしょう。こよしは頷い た。もちろんそれで十分です。清よしは こよしの手を握りしめた。えみさん ありがとう。あなたにあえて本当に幸せ でした。こよしは泣いた。私も幸せだった わ。2週間後、清は施設に入った。こよし と三が荷物を運ぶのを手伝った。施設は駅 から30分のところにあった。古い建物 だったが清潔だった。清よしの部屋は余上 半だった。窓から小さな庭が見えた。いい 部屋ですね。清よが言った。そうね。 こよしは勤めて明るく言った。荷物を置い てこよと美香は帰ることにした。じゃあ また来るわね。こよしが言った。ええ、 待ってます。清よしは微方園だ。こよしは 清を抱きしめた。元気でね、あなたもこよ は部屋を出た。廊下を歩きながらこよは 振り返った。清は窓際に座っていた。手を 振っていた。こよしも手を振った。それ から施設を出た。それからこよは週に2回 清に会いに行った。清は徐々に施設に慣れ ていった。他の入居者とも話すようになっ た。でもこよが来ると清よしの顔は明るく なった。2人は散歩したりお茶を飲んだり 話をしたりした。まるで昔のデートのよう に。でも違うのはもう演技ではないという ことだった。ある日こよが清を尋ねると 清よしは笑顔で言った。えみさんいい ニュースがあります。何い施設で演劇 クラブができるんです。入居者向けの本当 。ええ、僕参加しようと思ってます。 こよしは嬉しくなった。それは素晴らしい わ。自動車を探してるって言うから 手伝おうかと思って清の目は輝いていた。 久しぶりに見るかが焼きだった。清よし さん楽しそうね。ええ、また演劇ができる なんて思っても見ませんでした。こよしは 清の手を取った。よかったわ。あなたが また舞台に立てて小さな部隊ですけどね。 大きさなんて関係ないわ。はこよを見た。 えみさん、あなたのおかげです。あなたが 僕を変えてくれました。こよしは首を横に 振った。私は何もしてないわ。あなたが 自分で変わったのよ。2人は微方園だ。 それから1年が経った。こよは72歳に なった。清は76歳になった。清は施設の 演劇クラブで忙しい日々を送っていた。の 入居者に演技を教え、小さな公演を企画し ていた。こよは毎週清に会いに行った。 そして清よの公演を見に行った。清の演技 は以前より小さくなっていた。声も動きも でも心がこもっていた。観客は少なかった 。入居者の家族が数人と施設のスタッフ だけ。でも清しは輝いていた。公演の後は 清に花束を渡した。素晴らしかったわ。 ありがとうございます。清よしは花束を 受け取った。えみさん、僕幸せです。私も 2人は微法園だ。あるの日、こよは1人で 公園を散歩していた。ミカは買い物に行っ ていた。春人は仕事だった。こよしは ベンチに座った。周りを見回した。子供 たちが遊んでいた。老夫婦が散歩していた 。こよしは自分の人生を振り返った。夫と 過ごした日々、娘を育てた日々、夫を失っ た日々、そして清と出会った日。あの日 こよは小銭を数えていた。3万7180円 。18ヶ月かけて貯めたお金。あのお金で こよは清を雇った。偽りの恋人としてでも 今清は偽りの恋人ではなかった。清は こよしの大切な人だった。こよしは 立ち上がった。施設に向かうことにした。 今日は清に会う日ではなかったが会いたく なった。施設に着くとスタッフが慌てた顔 で紅よに近づいてきた。あの福本さんの 知り合いの方ですね。ええ、実は今朝福本 さんが倒れましてこよしの心臓が止まり そうになった。どこ?病室です。でも意識 はあります。こよは走った。病室に向かっ た。清よはベッドに横たわっていた。目を 閉じていた。清よさん。こよしが呼ぶと 清よしは目を開けた。えみさん声が弱かっ た。大丈夫?ええ、ただ少し疲れただけ です。医者が来た。また軽い発作です。 大事には至りませんが安静が必要です。 こよしは頷いた。医者は去った。こよしは 清の手を取った。清よさん無理しないで。 分かってます。清よしはこよしを見た。 えみさん聞いてください。 僕もう長くないかもしれません。そんな こと言わないで。いいえ。現実です。 清よしの声は静かだった。でも後悔はして いません。こよさんに会えて本当に良かっ た。こよしは涙を流した。私もあなたに 会えてよかった。えみさん約束して ください。何を僕がいなくなっても自由で いてください。 誰にも縛られないでこよしは頷いた。約束 するわ。清よしは微園だ。ありがとう。 それから清は目を閉じた。眠りに着いた。 こよは清の手を握ったまま座っていた。窓 の外では秋の風が吹いていた。清よしは その発作から回復した。でも以前より弱く なった。車椅子が必要になった。演劇 クラブも続けられなくなった。こよは毎日 深心志しに会いに行った。2人はあまり 話さなくなった。ただ手をついで窓の外を 見ていた。でもそれで十分だった。冬が来 た。ある日こよが施設に着くとスタッフが 待っていた。顔が暗かった。こよしは全て を理解した。ひよしさんは今朝お亡くなり になりました。安らかにこよしは何も言わ なかった。ただ頷いた。会えますか? どうぞ。こよしは清の部屋に入った。 清よしはベッドに横たわっていた。目を 閉じていた。まるで眠っているようだった 。こよしは清の手を取った。冷たかった。 ひよしさん。こよしは静かに言った。 ありがとう。あなたのおかげで私は自由に なれた。涙が流れた。さようなら。こよし は清の学にキスをした。それから部屋を出 た。清よの葬式は小さかった。こよし、 ミカ、春人、そして施設のスタッフが数人 。清には他に身りがいなかった。は清の 異品を受け取った。本と服と古い写真。 それから一通の手紙があった。こよ仕当て だった。家に帰ってこよしは手紙を開けた 。こよしさんへ。この手紙を読んでいると いうことは僕はもうこの世にいないの でしょう。こよしさん本当にありがとう ございました。あなたにあえて僕の人生は 変わりました。あなたは僕を雇いました。 恋人のふりをするために。でもいつの間に かそれは演技ではなくなりました。僕は 本当にあなたを好きになりました。でも それを言うのが怖かった。もしあなたが 同じ気持ちじゃなかったらどうしようって だから最後まで言えませんでした。でも今 この手紙で言います。よしさん、僕は あなたを愛していました。どうか幸せに。 清よし。こよしは手紙を胸に抱いた。泣い た。声を出して泣いた。それから時間が 経った。春が来た。こよは73歳になった 。こよは1人で散々していた。公園を歩い ていた。桜が咲いていた。こよは桜の木の 下のベンチに座った。風が吹いて花びが 待った。こよしは空を見上げた。青い空、 白い雲。こよしは微方園だ。清よしの声が 聞こえた気がした。自由でいてください。 こよしは頷いた。ええ、自由よ。こよしは 立ち上がった。歩き始めた。どこに行くか は決めていなかった。でもそれでよかった 。こよしは自由だった。誰にも縛られない 。自分の足で自分の道を歩く。それが 清よしがくれた最後の贈り物だった。家に 帰るとミカが待っていた。お母さんお帰り なさい。ただいま。今日はどこに行ってた の?散歩よ。ミカは微方園だ。お母さん 最近よく出かけるわね。ええ。外の 空気持ちいいから。リカはこよしを見た。 お母さん幸せそうね。こよしは頷いた。 幸せよう。本当だった。こよは今幸せだっ た。清はもういない。でも清が残してくれ たものがある。自由。そして自分の人生を 生きる勇気。こよしは自分の部屋に入った 。机の引き出しを開けた。清よしの手紙が 入っていた。こよしは手紙を取り出した。 もう何度も読んだえみさん、僕はあなたを 愛していました。こよしは微方園だ。私も あなたを愛していたわ。小さく支いた。 それから手紙を引き出しにしまった。窓の 外を見た。夕日が沈んでいた。でもこよし は悲しくなかった。また明日太陽は登る。 新しい1日が始まる。こよはその1日を 自分で決める。それがこよの自由だった。 その夜は夢を見た。清が舞台に立っていた 。若い頃の清だった。リしい顔。背筋が 伸びていた。清よはこよしに向かって 微法園だ。それから叔辞木をした。幕が 降りた。こよしは拍手をした。目が覚めた 。だった。窓から光が差し込んでいた。 こよは起き上がった。新しい1日が始まっ た。こよは服を着た。階段を降りた。朝食 を作った。ミカが降りてきた。おはよう、 お母さん。おはよう。2人で朝食を食べた 。お母さん、今日は何するのを?こよしは 考えた。映画に行こうかしら。1人で。 みかは微方園だ。気をつけてね。分かっ てるわ。こよしは朝食を食べ終えた。準備 をした。家を出た。外は明るかった。 こよしは歩き始めた。自由な一方。
娘夫婦に年金を奪われ、月1200円の小遣いで生きる私。
「母さんを施設に入れよう」──その非情な言葉を耳にした夜、私は最後の賭けに出る。
18ヶ月貯めた全財産の小銭で雇ったのは、孤独な元俳優。
偽りの恋人を演じる二人の計画は、やがて家族を巻き込む壮絶な修羅場へと発展していく…。
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老いと共に生きる──このチャンネルでは、年を重ねた方々の現実や想い、そして人生の美しさや切なさを丁寧に描き出します。心に響くストーリーや感動的な瞬間を通して、「老い」をもっと身近に、もっと深く感じていただけたら幸いです。ぜひ、チャンネル登録と高評価をお願いいたします。皆様の応援が、次の物語をつくる力になります。
ご視聴いただき、ありがとうございます。
▼制作スタッフ
・企画:渡辺 蓮
・シナリオ:鈴木 杏
・イラスト:高橋 翔
・音声:「VOICEVOX:青山龍星」
・編集:伊藤 健太
