「同じ人を好きになる感性を持ってる自分たちすら、楽しんでいた」
女優・唐田えりかさんが綴る連載『面影』第6回・後編。
前編「女優・唐田えりかが明かす『人生で嫉妬をしたたったひとりのひと』」では、唐田さんが「人生で唯一嫉妬した人」と語る幼馴染、“やーまん”との幼稚園からの成長について。後編では、思春期を経て一緒に大人になり、『極悪女王』のイベントに“やーまん”が来てくれるまでが描かれます。人を想う気持ちの温かさに包まれる、大切な一篇です。
写真は前編に引き続き阿部裕介さん。五島列島の夏をお楽しみください。

不思議と嫌じゃなかった
ある種の感情をやーまんと共有してから、更に仲が深まった。
私は幼稚園から6年間、バレンタインを渡し続けていた男の子がいた。
そして、やーまんも途中から同じ人を好きになった。
なぜか不思議と嫌じゃなかった。やーまんだからだろう。記憶が曖昧なのは、それだけ負の感情を持たなかったということだ。「じゃあこれから一緒にバレンタイン渡しにいけるね?!」と思った。
自転車に乗って、ピンポンを押し、二人で渡しに行った。
同じ人を好きになる感性を持ってる自分たちすら、楽しんでいた。

アザを見て泣いた
やーまんは中学のときも体育祭で応援団員だった。
私は前に出れるタイプではないから、やーまんを応援するほうが楽しかった。
大人数の先頭に立ち、全体をまとめる姿は、いつも輝いていた。
どんなときも弱音を吐かず、前に立ち続けるやーまんを見てると、自分は何を頑張ってると言えるんだろうと、ふと思うことが何度もあった。
高校では別々になったが、それでも頻繁に三人で集まり、会っていた。
高校を卒業して、私は芸能の仕事を始めた。やーまんは美容師を志し、専門学校に通ってから東京に来た。
人気の美容院に就職したやーまんに、髪の毛をクルクルにしてもらい写真撮影したりした。
東京でもこうして会えることが心強くて嬉しかった。

『極悪女王』の撮影期間中、やーまんとご飯に行った。
そのときの私は全身アザだらけで、「どうしたのそれー?!」と言われ、「これね今撮影してる作品で結構アクションあるんだけど、やばいよね〜」とケラケラと話していたら、やーまんが急にポロポロと泣き出した。「頑張ってるねぇ」と。
やーまんは、昔からよく泣く。というか、この連載を始めて思った。私の友達はよく泣く。
それも、自分のことではなく、他者のことを自分のことのように思い涙する。
自分のことを頑張ってると自分で認められたことが今まで一度もない。でも、やーまんに「頑張ってる」と認めてもらったときに、”頑張ってるのかもしれない”と初めて思えたような気がする。





