生活保護の申請をしに来た直子(西原亜希、写真左)に、ケースワーカーの宗村(イトウハルヒ)は親身に寄り添い、対応するが──。10日から全国順次公開(c)クラッパー(写真:AERA DIGITAL提供)
生活保護の受給がほぼ決まっていたある家族がとった矛盾した選択。映画『スノードロップ』は自らも受給経験のある監督が受給のリアルを描いた作品だ。AERA 2025年10月13日号より。
当記事は、AERA DIGITALの提供記事です
「私は約15年前に若年性脳梗塞を発症して1年間働けない時期があったんです。その間に生活保護を受給しました」
生活保護を題材にした映画『スノードロップ』を監督した吉田浩太さん(47)は話す。当時は東京都内の映像会社に勤務し、小学生の子どもと妻との3人暮らし。社長と相談し申請をしたという。
「受給にはまったく抵抗はありませんでした。担当の職員の方々も親切で世間で言われるいわゆる『水際作戦』のようなこともなく、スムーズに受給が決まった。ただ、薬局で『お代はけっこうです』と言われたときには、周囲の視線を感じましたね」
実事件をなぞった映画
1年間、受給を受けたのち仕事に復帰。そして2015年、衝撃的なニュースに出合う。本作のモデルになった「利根川一家心中事件」だ。
『スノードロップ』はフィクションだが、ほぼ実事件をなぞっている。無職の直子(西原亜希)は認知症の母を10年以上、一人で介護している。だが父が働けなくなり、生活保護の申請を考える。
ケースワーカーの宗村(イトウハルヒ)の親身な対応で受給はほぼ決まり、同時に母親の要介護の申請も進んでいた。が、一家は川に入ってしまう。