
板野友美さん(インスタグラムの公式アカウントから)
2025年10月16日 16時36分
プロ野球・ヤクルトの高橋奎二投手の妻で、元AKB48の板野友美さんが、「離婚しそう」とX上に投稿した人に対して、「名誉を著しく毀損するもの」と警告し、複数の投稿について削除を求めました。
板野さんが問題視したのは、あるXユーザーによる「旦那、板野友美の底のない承認欲求に呆れて離婚しそう」などとした投稿です。
板野さんは10月15日、この投稿に返信する形で、「この度、貴殿による当方および家族に対する誹謗中傷・侮辱的な投稿を確認いたしました。『離婚しそう』など、事実無根の内容を含む投稿は、当方および家族の名誉を著しく毀損するものです」と警告し、これまでの投稿の速やかな削除を要請しました。
「離婚しそう」というSNS上の投稿は、名誉毀損など法的に問題のあるものと考えられるのでしょうか。
●名誉毀損罪にはあたらない
名誉毀損罪(刑法230条1項)は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」することで成立します。
ここでいう「事実の摘示」とは、社会的信用を下げるような事柄を示すことを指します。それが真実か嘘かは基本的には関係ありません。
「離婚しそう」という書き込みが、たとえば「性格の不一致で別居中」など、具体的な離婚原因を事実として示すものであれば、名誉毀損に当たる可能性があります。
しかし、今回の書き込みは「底のない承認欲求に呆れて離婚しそう」といった、投稿者の主観的な評価や憶測にすぎず、「事実を摘示」という要件を満たしません。
●侮辱罪は成立する
一方、侮辱罪(刑法231条)は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱」することで成立します。
「きしょすぎ(気持ち悪すぎ)」という表現は、具体的な事実を示すものではありませんが、人を公然と蔑視するものであり、「侮辱」にあたると考えられます。
また、「離婚しそう」という部分も、事実を摘示したわけではありませんが、その文脈上「底のない承認欲求」から夫である高橋奎二さんが「離婚しそう」なほど、板野さんに人格的に問題がある、という意味と捉えられますから、「侮辱」にあたる可能性が高いでしょう。
●侮辱罪の「厳罰化」の動き
また、侮辱罪については、2022年7月に厳罰化され、法定刑が「拘留または科料」(※拘留は1日〜30日未満の身柄拘束、科料は1000円〜1万円未満の支払い)から、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料へと引き上げられました。
さらに、2025年9月12日に、法務省で「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」の第1回が行われ、これに関連して法務省の公式サイトで「侮辱罪の事例集」が公表されています。
この資料中では、たとえば以下のような事例が挙げられています。
コワーキングスペース出入口付近において、被害者の名刺を添付し「Gきもい」と記載したメモ紙を置いた(罰金10万円)
検索サイト上の被害者勤務先の口コミ欄に、「頭よくっても常識ない」「人間性がよくないから●●(被害者勤務先名)よくないですね。」などと掲載した。(罰金10万円)
総合ディスカウントストア倉庫において、従業員に対し、被害者を名指しして「人間として終わっている。」旨申し向けた。(罰金10万円)
このように、具体的な根拠を示さずに、人格や能力を非難する事案が多数処罰されています。また、インターネット上への書き込みにより処罰された事例も多数含まれています。
今回の書き込みは、具体的な事実の摘示を伴わないものの、公然と著名人である板野さんの人格や家族関係について否定的な評価を加えており、上の事例集に照らして侮辱罪が成立する可能性が高い事案と考えられます。
なお、刑事上の責任とは別に、民事上の損害賠償請求(不法行為に基づく慰謝料請求)の対象にもなるでしょう。
この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。
