私もミスナーが私のためにデザインしているデミ・クチュールのフィッティングに臨んだ。寸法を測るポイントが、想像を超えて多いことに驚かされる。このプロセス自体が、人間と素材の間の対話のように思えてくるほどだ。彼女とアイデアをすり合わせ、納得に至るまでの過程は、儀式のような神秘性を帯びているが、親密さにも満ちたひとときだ。ミスナーが候補の生地を、私の体に当ててくれる。落ち感や私の肌の色との相性を考えながら、使うファブリックを決めていくのだ。

デッドストックの再生イーストロンドンにある、エリー ミスナーのアトリエ。デッドストックの生地やインスピレーションの断片が並ぶ創作の現場。

イーストロンドンにある、エリー ミスナーのアトリエ。デッドストックの生地やインスピレーションの断片が並ぶ創作の現場。

ミスナーはこれまでのコレクションを通じて、倉庫に眠っていた、あるいは作りすぎて余ってしまったデッドストック生地をレスキューし、活用している。私のデミ・クチュールのドレス用に手際よく寸法を測り、ピンを打つ間にも、彼女は廃棄されていたはずの素材を、まったく新しい、価値あるピースに変身させるスリルを語る。「デッドストック」という言葉の響きには生命の息吹が感じられないかもしれないが、彼女の手にかかれば、こうした生地もたちまち新たな命が吹き込まれ、生き生きと躍動する。これはいわば、クチュールの新たな解釈、美を追求するだけでなく、地球や社会への責任を果たすビスポークウェアなのだ。

ミスナーは一貫して、人とは違う道を追求してきたデザイナーだ。ブライトン大学を卒業後は、数多くのファストファッション・ブランドを転々とし、大量生産やシーズンごとのトレンドに追いまくられる日々に、否応なしに我が身を投じることになった。数カ月後には廃棄される製品を作れという絶え間ないプレッシャーは、非常に重いものだった。そこで彼女はロンドンのハックニーに設けた自身の質素なスタジオに引きこもり、今度こそ自分が納得できる形の服作りを追求しようと決心する。今の彼女は、ネットで拡散を狙ったり、やみくもにトレンドを追いかけたりすることに興味はない。それどころか、圧倒的なハイペースを緩めることで、ファッションに起きる変化を体現する存在となっているのだ。

こうした道を選んでいるのはミスナーだけではない。ファッション界のあちこちで、新世代のデザイナーが静かに「クチュール」という言葉を自らの手に取り戻している。かれらは大手のメゾンとは違い、プティ・マン(小さな手)と呼ばれる熟練のお針子軍団や、巨額のマーケティング予算を自由に使える環境にはない。だが、考え抜かれたカスタムメイドの一着を次々と世に送り出している。

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