初めてのエッセイ『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』(愛称ちゃぶおど)が書籍化され、たくさんの共感を呼んでいる坂口涼太郎さん。本づくりのエキスパートに話を聞きに行く出版修行に出かけています。どれだけいい本を作っても、知ってもらう機会がなければ届きません。出版不況と言われる今、本を届けるために何が必要なのか? 「本を届けるプロ」本のPRを専門に独立し多くのベストセラーを手掛けてきた実績をもち、自身のノウハウをまとめた書籍『非効率思考』も重版が決定するなど、多方面に活躍する黒田剛さんにお話を伺います。
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初エッセイ俳優がスゴ腕書籍PRに「出版不況」を学ぶ。それでも今「本」を売ることにこだわる理由【坂口涼太郎の出版修行・本を届ける編①】>>
黒田 剛
株式会社QUESTO代表取締役 書籍PR
1975年、千葉県で「黒田書店」を営む両親のもとに生まれる。芳林堂書店外商部を経て、2007年より講談社にてPRを担当する。2017年に独立し、PR会社「株式会社QUESTO」を設立。講談社の『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(黒川伊保子)は、シリーズ50万部を超えるヒットを記録。『いつでも君のそばにいる』(リト@葉っぱ切り絵)をはじめとする葉っぱ切り絵シリーズは25万部を突破。『続 窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)は、発売2ヵ月で50万部突破。その他、KADOKAWA、マガジンハウス、主婦の友社など、多くの出版社にてPRを担当。
坂口涼太郎
1990年8月15日生まれ。兵庫県出身。特技はピアノ弾き語り、ダンス、英語、短歌。 連続テレビ小説「おちょやん」「らんまん」(NHK)、映画「アンダーニンジャ」「ちはやふる」シリーズ、ドラマ「罠の戦争」(カンテレ)など話題作に多数出演。25年7月期ドラマ「愛の、がっこう。」(フジテレビ)へは初めてのホスト役で出演する。 俳優のほか、ダンサー、 シンガーソングライターとしても活動。独創的なファッションやメイクも話題を呼ぶ。
X(Twitter):@RyotaroSakaguTw Instagram:@ryotarosakaguchi YouTube:@gucchi815
坂口涼太郎さん(以下、坂口):黒田さんのご著書『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』(講談社)、とっても面白かったです。まず思い出したのが、私の仕事も非効率だということ。俳優とかパフォーマンス系のエンターテインメントって本当に非効率で、ロケバスで往復6時間の移動で2秒のシーンを撮ったりするんですね。だから「効率」という言葉を脳内から消去している、という内容のエッセイを書いたことがあるんです。黒田さんは会社に所属していた経験があったり、PRという数字を追うお仕事に就いていたりと聞くと、効率を求められがちなのではと思いますけど、結局たどり着いたのは「非効率」だった、と。
黒田剛さん(以下、黒田):本を作る編集者たちは、「良いもの作るぞ!」といっても右から左にものを運ぶようにカンタンにはできない、ということをわかっている人がほとんど。ベストセラー、例えば100万部売れた本を出したことある人は、より実感していることだと思います。よくある感じの本を出しても埋もれて人に届かないし、かといってまだ人が知らない本を作るという場合には良さを伝える努力をしなきゃいけない。
そもそも、ベストセラーになる本というのは、初めから絶対売れると思われて世に出るわけではないと思うんです。最初は最低部数5000部とか8000部くらいで出て、少しずつ日本中に広がりながら100万部になっていく。逆に編集会議などで、初めから10人が10人「これは売れる!」と言うものは危ないと考えていて、確かにバーッと売れるかもしれないけど、みんなも驚くような結果にはならない。みんな売れると知っているということは、だいたい予想がつくわけだから。それより、出すか出さないかみんなが悩むぐらいの、会議の後にみんなが「なんか、気にならない?」と言い出すみたいな、そういう企画のほうが良かったりするんだと思います。
編集者の仕事は、「小さなことから始まっている」といつも感じるんです。例えば、本を作るための撮影があって差し入れのお菓子を用意するとして、コンビニで買えるようなお菓子ではなく、著者のことを考えてこれが好きなんじゃないかと想像して、デパ地下でフルーツを買う。用意したさくらんぼをみた著者が、「わぁ、さくらんぼ!」と言い出したのが会話のタネになって、急に雰囲気が一変して撮影がいいものになったりする。そういうのを毎回目撃するので、こういうことが仕事なんだな、というのを学びました。
坂口:その方の好みとかセンス、この人だったらこれを喜んでくれるだろうな、と考えるんですね。PRも、お客様がどんなことが好きなのか考えて、どんな方にこの本が届いたら喜んでもらえるのかを考えることですもんね。
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