東京・渋谷のNHK社屋
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 NHKが16日、東京・渋谷の同局で定例会長会見を行い、8月放送の戦後80年企画で放送したドラマ「シミュレーション 昭和16年夏の敗戦」の描き方に対し、遺族が損害賠償請求訴訟を起こす意向であることを表明したことについてコメントした。

 担当者は「遺族がシンポジウムで、民事訴訟の提起を検討されていると発言されたことは承知しておりますが、NHKに対して、何か具体的なアクションが今、起きているというわけではございません。ですので、今後、ご本人や裁判所などから正式なご連絡がありましたら、適切に対処してまいりたいと考えております」と言及した。

 また、9月の定例会見での稲葉延雄会長が「NHKらしくない」との発言について「ご遺族がシンポジウムで民事訴訟を検討しているということを明らかにしたということを踏まえ、今後番組内容が訴訟の対象になることも予想されます。このためNHKとしては回答を控えさせてください」とした。

 同番組は陸軍中将だった祖父が史実をわい曲して描かれたとして、孫で元外交官の飯村豊氏が人の名誉が毀損(きそん)されたとして今月中にも損害賠償請求訴訟を起こすことを表明。被告や賠償請求額などは「弁護士と相談中」とした。

 猪瀬直樹氏のノンフィクションが原案で、日米開戦直前に設立された「総力戦研究所」が舞台。研究所では「圧倒的な敗北」とシミュレーション結果を出したが、所長の陸軍中将・飯村穣が結論を覆すよう圧力をかける人物として描かれた。実際は、自由な議論を後押ししたとされる。15日に会見を開いた飯村氏の孫で、元外交官の飯村豊氏がは「米国との戦争に反対していたと記録に残っている。なぜこのような話になったのかも裁判で明らかにしたい」と話した。飯村氏は「歴史がゆがめられ、祖父の人格を毀損(きそん)するような描き方をされた」と抗議。放送倫理・番組向上機構(BPO)へ申し立てる意向であることを明らかしている。

 9月の定例会見で、稲葉会長はこの件について「フィクションと明示はしていたが、率直に言って、ドラマを面白くするために史実と異なる脚色をしたのではないかと指摘されても致し方ない面はあったのではないか」と見解。「今回のようなさまざまな意見が出る演出はたとえドラマであってもNHKらしくなかったと、私は受け止めています」とコメントしていた。

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