ミウッチャ・プラダの最新コレクションは、衣服の持つ意味を根本から覆した。

ミウッチャ・プラダはミュウミュウの2026年春夏コレクション制作中、女性の社会的立場を念頭に置いていた。パリ・ファッションウィーク最終日前日、彼女は観客にその想いを伝えるため、ある1つのアイテムを中心にしたランウェイショーを開催した。それは保守的な女性像の象徴としてよく使われる、エプロンだった。

MIUMIU、ミュウミュウ、プラダ、2026春夏、パリ・ファッションウィークMIUMIU

『落下の解剖学』のスター、ザンドラ・ヒュラーがショーの幕開けを飾った。深いブルーのエプロンを、バーンジャケットとブルーのシャツの上に重ね、パンツの裾からワークブーツをのぞかせた。続くモデルたちも同様のスクエアネックスタイルのエプロンをクールなトーンで着こなし、リボンで結んだブラトップとネックスカーフを合わせたかと思えば、次の瞬間には別のバーンジャケットを羽織っていた。

65ルックのコレクションが進むにつれ、エプロンは変貌(へんぼう)した。実用的なフロントポケット付きのデザインから1960年代を彷彿(ほうふつ)とさせる小さな花柄のクロシェ編みへと、形がより自由になり、それをポロシャツやフリル袖のブラウスの上に羽織って、それぞれレトロなプリントのネックスカーフでコントラストを演出していた。

ショーのフィナーレでは、シルバースタッズときらめくクリスタルで覆われたエプロンが登場。米版『マリ・クレール』編集長ニッキー・オグナイケはインスタグラムのストーリーでその雰囲気をこうまとめた。「エプロンをつけて街へ繰り出そう!」

MIUMIU、ミュウミュウ、プラダ、2026春夏、パリ・ファッションウィークMIUMIU

確かにミュウミュウは、エプロンを料理や掃除といった文脈から解放した。サイドに結んだサテンのリボンやチェック柄のスカーフを添えたスタイリングは「家の中にいる」という印象を一切与えない。ブラックレザーで仕立てられ、その下はブラだけというエプロンはむしろ反逆的だ。

ミュウミュウ、MIUMIU、プラダ、2026春夏コレクション、パリ・ファッションウィークMIUMIU

ショーノートでプラダは2026年春のコレクションを「女性の仕事、彼女たちの挑戦、逆境、経験について考察したもの。その目に見えない部分に向き合い、対処し、認識し、称賛する」と表現した。このメッセージを最も雄弁に伝えるのがエプロンである。歴史的に「女性の仕事」(掃除、料理、家事)と密接に結びつけられてきた労働の象徴だからだ。

現代では、日に日に伝統主義的な方向へ傾きつつある文化において、エプロンは「トラッドワイフ(専業主婦をあえて選ぶ女性のこと)」系のインフルエンサーと強く結びつき、何世紀にもわたる「女性は家庭を守る存在(それ以外、ほとんど他に何もない)」という固定観念を強化している。

学生運動家としての長年の活動を経て、デザイナーとなったミウッチャはしばしば、作品を通じて女性らしさを問い直し、慣習に反抗している。彼女にとってエプロンは、自分が着たい服を着て、自分が選んだ人生を生きるための道具なのだ。

MIUMIU、ミュウミュウ、プラダ、2026春夏、パリ・ファッションウィークMIUMIU

ファッション評論家やミュウミュウのファンは、コレクションを熱心に吟味し、次にイットアイテムとなるアクセサリーを予想する。私が予想したのは、重ね着したトップスとパンツのスタイルに添えられたゴールドのチャームベルトだ。しかし今シーズンの真意は、プリーツミニスカートに続くアイテムや次なる「アルカディ」バッグを任命することではなかった。華やかで幻想的なスタイリングが前面に押し出されるファッションウィークの真っただ中で、女性らしさの現実はランウェイで表現するものよりも少し混沌としていることを、意図的に思い起こさせるものだったのだ。

translation & adaptation: Akiko Eguchi

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