シリコンスタジオ<3907>は、2025年11月期第3四半期(2024年12月~2025年8月)の決算を発表した。受託開発や人材紹介事業が好調に推移し、売上高・利益ともに前年同期を上回った。売上高は前年同期比0.7%増の32億3000万円、営業利益は同99.9%増の1億2600万円と増収・営業増益、そして最終利益は1億4700万円と前年同期8100万円の損失計上から黒字転換に成功した。今年7月に通期業績予想を上方修正したが、第4四半期の受注状況を踏まえ、さらなる精査を進めているという。
セグメント別では、開発推進・支援事業が収益をけん引。受託開発の引き合いが多く、売上高19億9500万円、セグメント利益3億0200万円と増収増益を確保した。デジタルツインソリューションなど可視化技術への需要が拡大しており、西松建設や竹中工務店との取り組みをはじめ、自動車、製造、建設、住宅といった非エンターテインメント分野への展開が進んでいる。
一方で、ミドルウェア事業ではライセンス収入の減少が見られるものの、オンライン関連ではスキーム再構築や新規案件の開拓を進めており、次期成長に備える構えだ。
人材事業も堅調に推移し、売上高12億3500万円、セグメント利益2億1200万円を計上。有料職業紹介が利益率を押し上げ、成約件数は前年同期比6.7%増と好調を維持した。
財務面では、自己資本比率が前期末比0.8ポイント減の68.5%。配当については、10月9日に期末配当予想を従来の「0円」から「10円」へと上方修正しており、好調な業績を反映する形となった。
1999年設立の同社は、リアルタイムCGやオンライン技術を活かした開発支援に加え、ゲーム・映像業界向けの人材紹介・派遣サービスを展開。2018年にコンテンツ事業から撤退して以降、技術提供と人材支援の両輪で事業基盤を強化している。
今回の決算は、ゲーム開発で培ったリアルタイムCG技術やノウハウを、自動車・製造・建設・住宅といった産業領域に応用するという戦略転換が奏功した結果といえる。高精細なビジュアライゼーションやシミュレーション技術を産業用途に活かすことで、新たな収益源を確立しつつある。
製品サイクルが短く競争の激しいゲーム業界に比べ、安定したビジネス基盤を築きやすいのかもしれない。記者は2000年代中頃に日本電産(現ニデック)の決算説明会に参加したことがある。当時の日本電産は家電から自動車分野へと事業を広げている最中だったが、永守重信社長は「自動車は製品サイクルが比較的、穏やかでビジネスがやりやすい」などと語っていたと記憶している。シリコンスタジオにとっても同様の構造転換が進んでいるようだ。
ゲーム発の技術を武器に、より長期的かつ安定した収益モデルへの移行を進める同社の動向に注目が集まる。