2008年にローンチしたヴィクトリア ベッカム(VICTORIA BECKHAM)は、デザインを評価される一方で経営不振により、2018年には1230万ポンド(約17億円)もの赤字を計上したといわれる。テコ入れを図るために起用された投資家のデヴィッド・ベルハッセンは、こう語る。「ヴィクトリアは、ただお金を出してくれるだけのパートナーを求めていたわけではありません。彼女が求めていたのは、ビジネスと彼女の夢を理解し、それを実現する力のあるパートナーだった……。正直なところ、これほど難しい問題は見たことがありませんでした」
ベルハッセンは当時の惨状を振り返り、「オフィスの観葉植物に年間7万」、「水やりのための人件費に1万5千」かかっていたと証言。米ドルか英ポンドか詳細には語らないが、ずさんな経営だったことを指摘する。「非常に困難な状況だったので、彼女は現実を受け入れることができるのか、見極める必要がありました。何年もの間、彼女の周りにはイエスマンしかいなかったのです」
厳しいフィードバックも、ヴィクトリアは「甘んじて受け止めた」と振り返る。2019年に立ち上げたコスメライン、ヴィクトリア・ベッカム・ビューティー(Victoria Beckham Beauty)の成功と、ハンドバッグ「Chain Pouch」の大ヒットがけん引し、経営状況は改善したと伝えられるが、ヴィクトリアは謙虚な姿勢を崩さない。
「問題のひとつに、周囲が私にノーと言い辛かったことがあります。セレブの私は、拒絶されることに慣れていないと思われたのです。でも私は全面的に自分の失敗を認め、借金の責任が自分にあると認めました。やり方を変える必要がありました。道を見失っていた自分に気がつきました」
Text: Tae Terai