暴力的な反権威主義組織を描いた映画と、ビットコイン発明者の共通点とは?(著者作成)

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

ディカプリオの新作映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』

 レオナルド・ディカプリオ主演の最新映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』が公開中だ。監督は『マグノリア』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などで知られるポール・トーマス・アンダーソンで、米国では批評家から「先見性と政治的視点を兼ね備えた、今年のベスト映画の1つ」などと称賛される一方、右派や保守派からは「左翼暴力を擁護する、タイミングの悪い弁明」など激しく非難され、 国を二分する社会現象となっている。

 以後、『ワン・バトル・アフター・アナザー』の中盤までのストーリーをネタバレするので、知りたくないという方はいったんここでストップしていただきたい。

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 なぜそのような賛否両論が起きているのか。簡単にストーリーを解説しておこう。

 主人公となるのは、ディカプリオ演じるパット・カルフーンという男。彼は極左革命組織「フレンチ75」のメンバーで、爆発物を扱う知識があり、移民収容所の襲撃やインフラ施設の爆破といった作戦にも参加している。

 パットはそこでペルフィディア・ビバリーヒルズという黒人女性の活動家と恋に落ち、やがて2人の間にはシャーリーンという娘が生まれる。パットは活動よりも子育てを優先するが、ペルフィディアは逆で、ますます活動にのめり込む。

 ある日、作戦に失敗したペルフィディアは捕まってしまい、身を守るためにロックジョーという白人男性の警部(過激な白人至上主義者として描かれる)に仲間の情報を売る。

 それが原因で仲間たちは次々に逮捕、あるいは殺害され、フレンチ75は壊滅状態となるが、パットは娘と共に逃げ延びることに成功。彼と娘はそれぞれボブ・ファーガソン、ウィラ・ファーガソンと名前を変え、一般市民として生活を送ることになる。

 それから16年後、警視に昇格したロックジョーの強引な捜査により、ボブとウィラの居場所が漏れてしまう。なぜかこの親子、特にウィラを見つけ出すことに執念を燃やすロックジョーは、ついにウィラの元へと迫り――という流れだ。

 後述するように、本作品にはモチーフとして位置付けられる小説があり、そこで描かれているのは1960年代~80年代の米国だ。また映画の撮影は主に、トランプ政権第2期が始まる以前の2024年に行われたそうである。つまり『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、現在の米国の社会問題を真正面から描いたものではないのだが、現実と恐ろしいほどリンクしている。

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