ドラマ「シナントロープ」で水町ことみ役を演じる山田杏奈(左)と都成剣之介を演じる水上恒司

ドラマ「シナントロープ」で水町ことみ役を演じる山田杏奈(左)と都成剣之介を演じる水上恒司

PROFILE: 右:水上恒司/俳優、左:山田杏奈/俳優

PROFILE: 右:(みずかみ こうし)。1999年5月12日生まれ。福岡県出身。2018年「中学聖日記」でデビュー。映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら」で日本アカデミー賞 優秀主演男優賞。主演作に映画「火喰鳥を、喰う」。現在はドラマ「シナントロープ」が放送中。映画「WIND BREAKER」が12月5日に公開予定。

左:(やまだ あんな)。2001年1月8日生まれ。埼玉県出身。出演作にドラマ「早朝始発の殺風景」「ゼイチョー 『払えない』にはワケがある」「リラの花咲くけものみち」「連続ドラマW ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編」など。映画「恋に至る病」が10月24日に公開予定。

緻密な伏線や巧みな会話劇で回を重ねるごとに注目を集め、毎話考察祭りとなるなど社会現象となったアニメ「オッドタクシー」で知られる此元和津也の脚本によるドラマ「シナントロープ」の放送が10月6日からテレビ東京系でスタートした。監督は映画「もっと超越した所へ。」、ドラマ「有村架純の撮休」(20)などTVドラマや映画のディレクションを数多く手掛ける山岸聖太が務める。複雑に絡み合う人間模様と、張り巡らされた伏線が散りばめられた展開は健在ながら、男女8人の青春群像ミステリーとなっている。

ドラマ「シナントロープ」メインビジュアル

実力派の注目俳優が一挙に集結する本作について、今回主人公の都成剣之介(となり・けんのすけ)を演じる水上恒司と、彼が思いを寄せるヒロインの水町ことみ役を演じる山田杏奈に、作品の魅力や撮影エピソードについて伺った。

台本の巧妙な仕掛けで見せる
至極の会話劇

山田杏奈(左)と水上恒司

——今回の脚本は、此元和津也さんの作品の中でも特に「会話劇」としての面白さが際立っています。台本を読まれた際、どのような点に魅力を感じましたか?

水上恒司(以下、水上):「セトウツミ」や「オッドタクシー」など、此元さんの作品は会話劇が特徴的ですが、今回は特に構成に仕掛けがあると感じました。例えば、シーンの最後と次のシーンの最初で同じセリフや単語が使われていたり、同じ言葉でも意味や話す人間が違うといったカラクリがあるんです。そうした洒落た構成が、単なるギミックではなく、それぞれのキャラクターをちゃんと立たせるための要素になっている。そこがこの作品の核であり、面白さだと思います。

山田杏奈(以下、山田):私も「オッドタクシー」をすごく楽しく観ていたので、今回お話をいただいてすぐに台本を読み進めました。此元さんの作品にはしっかりとした世界観があって、媒体がアニメだろうとドラマだろうと、その世界が揺るがない。私たちの役も、物語を面白くするための「駒」として存在している。作品を良くするために動いている感じがして、すごく魅力的でした。

——ご自身が演じる役柄の面白い点、あるいは魅力的だと感じた点を教えてください。

水上:僕が演じる都成は、いわゆる「主人公」らしくないキャラクターだと思うんです。主人公ってその言動が注目されたりするものですが、都成はめちゃくちゃみんなに無視されているんですよ。一人でブツブツ言っていることが多い。相手にセリフを伝えなくても成立するシーンが多くて、それは僕にとってすごく新鮮でしたし、演じるのが楽しかったですね。この主人公像は、とても人間らしいなと感じました。だって本来、みんなそれぞれが自分の人生の主役。僕だって、別の人の人生の脇役でしかないじゃないですか。それぞれの人生が物語の中で混ざり合っているような、そんなリアリティーを感じました。

山田:私が演じる水町については、バックボーンなどまだ話せないことが多いんです。ただ、この作品の魅力でいうと、やはり「会話劇」という部分でしょうか。とにかくみんなが話しているシーンが多いんです。その中でそれぞれのキャラクター像が立ってくるのが、シンプルに面白い。そして、ストーリーの都合でセリフを言わされている感じがしないんです。一人ひとりにちゃんと役割があって、そのキャラクターだからこそ言えるセリフになっている。役者としては、とても楽しいですね。

それぞれの役柄への共感と新たな発見

水上恒司

水上恒司

——役柄がご自身と似ている点、あるいは真逆だと感じた点はありますか?

水上:都成は、人への興味の持ち方や距離感の取り方が僕に似ていると思います。バイト仲間と過度にベタベタしないけど、仲は良くて挨拶や世間話、冗談も言い合う。でも「友達?」と言われると微妙な関係性ってあると思うんですよ。今回も、話す相手によって、恋愛の話、家族の話、夢の話、儲け話……といろんな話をしますが、それは誰にでもオープンにしているのではなくて、相手に合わせてそのカードを選んで話している。その距離感が似ているなと思います。似ていない点は、「本当はもっとはっきりしゃべるよ」という部分ですね(笑)。

山田:私は似ている点、あるかな?

水上:俺はあると思うよ。したたかだから。全然悪い意味ではなくて、それって大事なことだと思う。

山田:さっきも言われたんです。「したたかだよ」って(笑)。でも、私もしたたかって決して悪いことじゃないと思うんです。水町は気が強いキャラクターではあるんですけど、私はそういうところが嫌いじゃないし、むしろそういう人でいたいと思うくらいです。もちろん人は多面的ですし、水町もいろいろな面を持った役なので、私とまったく同じですとは言えません。でも、集団の中にいる時の立ち位置は、ちょっと似ている部分があるかもしれません。真逆な面としては、水町は都成に当たりが強い役なので、都成がかなり不憫だなと思うことはあります(笑)。

水上:撮影の時は、ひたすら水町に暴言を吐かれ続けた日もありましたね(笑)。確かにそれは、杏奈ちゃんにはない面ですね。

——この役を演じる上で、何か役作りとして意識したことはありますか?

水上:ありがたいことに今年は主演作が立て続いているのですが、その度に思うのは、主役は肉体としての僕自身ではなく、その役の心の動きであるべきだ、ということ。それを観客の方々は観に来ているわけで。でも、先ほどの話にも通じますが、都成はいわゆる主人公とは少し違う。この作品を構成する一員、という気持ちでやっています。

山田:私も同じです。バーガーショップ「シナントロープ」のメンバー8人のうちの1人。でも彼女なりの考えや、表立っては見せない影の「したたかさ」みたいなことを意識しました。

刺激になる同世代の現場は楽しい雰囲気

山田杏奈

山田杏奈

——青春群像劇ともいえる本作ですが、同世代のキャストとの共演はいかがでしたか?

水上:年齢や世代が近い人たちと集まる現場は、自分自身を見つめ直す鏡として、周りの人たちを見られる貴重な機会です。同世代だからこそ、同じ時代を生きてきた中での違いを見つけられる。それが刺激になります。

山田:私も、みんなの芝居を見て「この人のここはすごく素敵だな」「すごいな」と思う時間になっていますし、芝居の上では「こう来たなら、こう返したいな」などたくさん思うことが多いです。あとはシンプルに世代が近いことで、自然と通じる空気感や話のテンポ感みたいなものがありますよね。それが作品にリアルさとして表れているのかなと思います。

——撮影現場の雰囲気は、やはり賑やかですか?

水上:深夜になると、みんなシリアスになりますね(笑)。

山田:結構、横になってたりしますよね(笑)。

水上:でも、千葉県で撮影していた時に、牧場の臭いが風に乗ってきて。アドリブ大好きの坂東(龍汰)さんが本番中にも台詞として「くさい」を連呼し始めて、みんなが芝居ができなくなるくらい笑ったり(笑)。しかもそのままOKが出ていて、あれは面白かった。放送で確認してみてください。坂東さん演じる木場は強烈なキャラクターで、都成と水町はその空気感には割とのまれないキャラクターなので抑えているんですけど、ほかのメンバーは坂東節についていかないといけないので大変だなと思っています(笑)。

——自分以外の役で演じてみたいと思えた人物はいましたか?

山田:私は都成かな。なんとなく、水上さんがやってるのを見てるから、すごく面白そうに映ってるっていうのはもちろんあります。

水上:マジで?

山田:いっぱいしゃべって楽しそう。だって、誰も聞いてないのに、野球のこととかなんだか全然関係ない台詞を4行ぐらい延々としゃべってるんですよ。大変そうですけど、なんか面白いですよね。

水上:あれに役者が挫けちゃいけないんですよ。あくまでみんなに届けよう、みんな聞いていると思って話しているんですよ。その気持ちは大事なので。

山田:そうだよね。

水上:僕は、アフロさんが演じる久太郎ことキュウちゃん。彼もめちゃくちゃしゃべってるんですよね(笑)。バーガーショップ「シナントロープ」の物語とは別軸で、裏組織のメンバーたちの物語が進行するんです。特にキュウちゃんと遠藤雄弥さん演じるリュウちゃんのアツい友情は見どころなんで、そちらにも注目してほしいですね。

——今回はハンバーガーショップのバイト仲間たちであるお二人。ご自身で経験してみたいバイトはありますか?

水上:これは決して好感度アップを狙おうとしているわけではないですが、僕は掃除や洗濯といった家事が好きなんです。だから、クリーニング屋さんとかは経験してみたいですね。もちろん、やってみたいぐらいで簡単にできる職業ではないということも分かっているんですが、何事も経験なので興味はありますね。

山田:バイトじゃないんですけど、私、保健室の先生をやってみたくて。

水上:保健室の先生が山田杏奈ちゃんって、最高じゃないですか!?

山田:保健室の先生って誰もいない時間何してるんだろう。あの静かで涼しくて陽が入る保健室で一人でいられるのって、良くないですか?

水上:それ、寝たいだけじゃん(笑)。

山田:もちろんちゃんと仕事はするとして(笑)。小学校とかの保健室のあの空気感に、もう一度浸ってみたいです。

水上:確かに。

山田:あと、給食の調理員とか。大人として学校の空気を味わいたいのかも。

「シナントロープ」という青春を思い出す時が来る

山田杏奈(左)と水上恒司

——恋愛、友情、ミステリー……さまざまな要素がある群像劇ですが、お二人が考える、本作の見どころを教えてください。

水上:以前読んだ漫画で、高校生活を電車の車両に例えた話がありました。僕たちはたまたま今、同じ車両に乗っている。高校3年間というレールがあって、その期限内でしか僕たちは一緒の電車には乗っていられない。卒業後はみんなバラバラになっていく。それが人生なんですよね。その刹那的な出会いを青春として捉えたいなと思いました。

決してキラキラしているだけではなく、悩み苦しむだけでもない時間を、今「シナントロープ」のメンバーはともに同じ車両の中で過ごしている。もちろんそれ以降も、各々がそれぞれの電車に乗って、時には乗り換えて違う路線に行ってみたり、特急に乗ってみたりするわけです。でもふと、「シナントロープで過ごした時間」をいつか思い出す時が来るかもしれない。それぞれがこの時間を懐かしく思うことこそ、僕は青春なんじゃないかと思います。それこそいろんな要素があるからこそ忘れられない。さまざまな要素を取り込みつつ成立しているのが、この作品の良さなのかなと思います。

山田:私たち「シナントロープ」メンバーのシーンは青春群像劇としてみられるパートですが、それと反転するように謎に包まれた裏組織<バーミン> のシーンにも移り変わっていきます。個人的には小説などでも、シーンが切り替わって登場人物がどんどん変わっては戻っていく構成の作品が好きなのですが、本作も同じなんですよね。一方のパートにのめり込んでいたのに、違うパートが始まったらそっちも見逃せない。しかも、「あちらのこれとこちらのこれがつながってる!」という発見もたくさんあるので、面白く観ていただけると思います。

水上:繰り返し見返したら気づくこととかもあると思います。いいガムほど、いっぱい噛みたくなりますからね!

PHOTOS:RIE AMANO
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ドラマプレミア23「シナントロープ」

場面カット ©︎此元和津也/「シナントロープ」製作委員会

◾️ドラマプレミア23「シナントロープ」
2025年10月6日スタート
毎週月曜 23時06分〜23時55分 放送
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
各話放送終了後から「Prime Video」や「TVer」でも配信

出演:水上恒司、山田杏奈
坂東龍汰、影山優佳、望月歩、鳴海唯、萩原護、高橋侃
遠藤雄弥、アフロ、森田想 / 染谷将太
原作・脚本:此元和津也
監督:山岸聖太
制作:テレビ東京、P.I.C.S.
©此元和津也/「シナントロープ」製作委員会
https://www.tv-tokyo.co.jp/synanthrope/

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