『絶対零度』沢口靖子に抱いた圧倒的な違和感「科捜研じゃない」以上に “しっくりこない” 感覚の正体は

『科捜研の女』での沢口靖子

 

 初回を視聴していて、ずっと “しっくりこない” 感覚があった。その違和感の正体とは……?

 

 沢口靖子が35年ぶりにフジテレビ系の連ドラに主演することで、注目を集めていた月9ドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』。10月6日(月)にスタートし、今日第2話が放送される。

 

■シリーズ第5弾、3人目の主人公

 

 異色の刑事ドラマである『絶対零度』は、今作がシリーズ第5弾。2010年の1作目、2011年の2作目は上戸彩が主演、2018年の3作目、2020年の4作目は沢村一樹が主演、そして最新作は沢口靖子主演と、主人公が変更されてきた珍しいタイプのシリーズ作品である。

 

 今作は、情報技術を高度に操り、悪用して国民の生命や財産を脅かす情報犯罪グループを追う捜査機関「情報犯罪特命対策室」、通称「DICT(ディクト)」の活躍を描く物語。特殊詐欺やサイバーテロなど、現実のニュースでも近年よく取り上げられる犯罪を題材に、主人公たちが犯人を追っていくことになる。

 

 沢口演じる主人公・二宮奈美は「DICT」の最年長メンバーで巡査部長。もともと生活安全課で地域の少年犯罪などを担当していたこともあり、現場周辺の住民たちへ丹念に聞き込みしていくなど、足を使って情報を集める捜査スタイルだ。

 

■まるで20代・30代のヒロイン像

 

 沢口と言えば、1999年からテレビ朝日系で放送されている『科捜研の女』シリーズのイメージが強い。だが、“しっくりこない” 違和感の正体は、沢口がテレ朝ではなくフジに出演しているとか、法医研究員ではなく刑事をやっているとか、そういったわかりやすい要素ではない。

 

 結論を言うと、御年60歳で還暦を迎えた沢口が、まるで20代・30代の俳優が演じるようなヒロイン像のキャラクターを演じさせられていることだ。

 

 そもそも沢口が月9の刑事ドラマに主演すると聞いたとき、冷静沈着で威厳のあるチームの女ボスを演じるものと思い込んでいた。

 

 しかし、フタを開けると、主人公はチームの一員にすぎず、誰よりも現場で動き回るタイプ。ここがまず、ものすごく違和感を抱いたポイントだった。

 

■思わず苦笑したドン引きシーン

 

 実際、主人公・二宮奈美はとにかくよく走る。めっちゃ走る。事件現場で疾走するのはもちろん、警察署内や病院内でも走って移動するなど、走るシーンが何度も見られた。

 

 メンバー内で誰よりもキビキビ動いてハツラツとしており、しかもよく声を張っているため、ムードメーカーのようになっている。最年長の彼女が「DICT」メンバーのなかで一番若々しい振る舞いをしているのだ。

 

 ちなみに、個人的にドン引きしたのが、強盗被害にあった老女が入院している病室シーン。事件が無事に解決し、老女の傷も回復したことのお祝いだったのだろうが、二宮がポータブルカラオケを持ち込んで、Vaundyの楽曲「怪獣の花唄」をノリノリで熱唱していたのである。

 

 そのオンステージに、老女もほかの入院患者も笑顔で楽しそうだったが、沢口靖子に令和のヒット曲を歌わせる演出っていったい……。思わず苦笑してしまった。

 

■60歳にしたら若々しく見えるが…

 

 今回列挙した主人公・二宮奈美の性格や言動を改めて振り返ってみてほしい。やはり20代・30代の俳優に似合いそうなキャラクターで、少なくても還暦俳優に演じてもらうヒロイン像ではないと思わないだろうか。

 

 確かに沢口靖子は若々しく見えるし、あれだけ走れるのもすごいと感心したが、それでも “60歳にしたら” というのが前提。やっぱりそのヒロイン像には無理がある。

 

 好意的に解釈すれば、“還暦俳優の主演作” という固定観念にとらわれず、予定調和をぶっ壊した斬新な設定と考えられるが、筆者のなかでは圧倒的に違和感のほうが上回ってしまっていた。

 

 今夜放送の第2話以降で違和感が薄れていき、「主人公・二宮奈美は沢口靖子が演じたからこそ魅力的になった!」と、思わせてくれることに期待している。

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