洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」のスタッフであるサムゲタン市川が、ホラーキャラクター&グッズへのアツい愛を叫ぶ連載「遊星からの物欲X」。第15回は、先月78歳を迎えた“モダン・ホラーの帝王”スティーヴン・キングの映像化作品にフォーカス。トリビアを織り交ぜつつ、市川お気に入りのホラー作品を中心に偏愛タップリに語りつくす!
“モダン・ホラーの帝王”が78歳に!御年78歳になるスティーヴン・キング[c]Everett Collection/AFLO
みなさんこんばんは、サムゲタン市川です。『THE MONKEY/ザ・モンキー』が公開中、「IT/イット」シリーズの前日譚ドラマ「IT/イット ウェルカム・トゥ・デリー “それ”が見えたら、終わり。」が10月27日(月)よりU-NEXTにて独占配信、そして来年1月30日(金)に『ランニング・マン』が公開を控えるなど、昨今もスティーヴン・キングの映像化作品は相次いで公開されています。
小説家ゆえに原作者や脚本家としてクレジットされることの多い彼ですが、実は映像作品への関わりはそれだけでないことをご存知でしょうか。去る9月21日に78歳の誕生日を迎えたキングへのお祝いも兼ねて、今回は彼の映画界での活躍をいくつかピックアップしてご紹介していきたいと思います!それでは、見ていきましょう。
2つの「シャイニング」をめぐる懊悩『キャリー』(76)よりシシー・スペイセク演じるキャリー[c]Everett Collection/AFLO
1974年の「キャリー」でホラー作家としてのキャリアをスタートさせたキングは、75年の「呪われた町」、77年の「シャイニング」と短いスパンで相次いでベストセラーを発表。初の映画化作品となるブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』(76)のヒットを皮切りに次々と著作が映画化されていきます。それから半世紀、ハリウッドには幾度もの“キングブーム”が巻き起こり、2024年までに66本もの映画が製作されています(IMDb調べ)。
『キャリー』(76)よりパイパー・ローリー演じる母マーガレット[c]Everett Collection/AFLO
まず語りたいのが『キャリー』!主人公の高校生キャリー・ホワイトを演じたシシー・スペイセクは、当時実年齢が27歳だったそうですが、少女のように儚げな佇まいたるや。彼女のかわいさも含め、個人的にキング原作作品のなかで一番好きです。パイパー・ローリー演じる母マーガレットもめちゃ怖いんだよな…。
『シャイニング』(80)より[c]Everett Collection/AFLO
続く劇場映画第2弾としては、『シャイニング』(80)が巨匠スタンリー・キューブリックにより映画化されましたが、キングは映像こそ一定の評価をしたものの、主人公ジャック(ジャック・ニコルソン)の描写やラストシーンの改変などに不満を抱き、当時から本作に批判的なコメントを繰り返していました。
『シャイニング』(80)より[c]Everett Collection/AFLO
78年の「ザ・スタンド」を原作とするミニシリーズ「スティーヴン・キングのザ・スタンド」(94)がABCで放送され成功を収めたことで、同局で「シャイニング」をキング自らの手で作り直す機会が訪れます。映画版をおおやけに非難しないという条件付きでしたが…。
ミニシリーズ「シャイニング」(97)より[c]Everett Collection/AFLO
主人公ジャック・トランス役は多くの俳優たちにオファーするも、そのほとんどがキューブリック版で同役を務めたジャック・ニコルソンとの比較を恐れ辞退。結果としてスティーヴン・ウェバーに白羽の矢が立ちましたが、決まったのはなんと撮影開始の4日前だったそうで、ニコルソン恐るべしです。
ミニシリーズ「シャイニング」(97)より[c]Everett Collection/AFLO
「スティーヴン・キングのザ・スタンド」のミック・ギャリスを監督に迎え、自ら脚本を書き下ろし、製作総指揮を務めた全3話ミニシリーズ「シャイニング」(97)は、キューブリックの映画版と比較されることで低い評価を下されることもままありますが、第49回プライムタイム・エミー賞を始めとするさまざまな賞においてノミネートや受賞を果たし、原作者としての矜持と執念を17年越しに見せつけました。
“酩酊状態”で監督初挑戦?『地獄のデビル・トラック』(86)より[c]Everett Collection/AFLO
22歳の頃には泥酔状態で町中のロードコーンをかき集め逮捕されるなど、若くして酒癖が悪かったキングは、その後10数年にわたってアルコールや薬物への依存に苦しんだそうです。映画化もされた81年の小説「クジョー」は書いたことをほとんど覚えていなかったとか。
『地獄のデビル・トラック』(86)より[c]Everett Collection/AFLO
そんななか、キングが生涯で唯一監督を務めた作品が、78年の短編集「深夜勤務」に収められた「トラック」を原作とする『地獄のデビル・トラック』(86)です。彗星の接近により制御不能となったあらゆる機械との戦いを描く…という、いわゆる“B級映画”です。自動販売機から缶が飛びだして人間を殺害したり、ドデカいゴブリンの装飾を施したトラック率いるコンボイがドライブ・インを取り囲んだりとおもしろいアイデアもあったものの、批評的にも興行的にも失敗に終わり、第7回ゴールデンラズベリー賞の最低監督賞にノミネートされるなど散々な結果となりました。
『地獄のデビル・トラック』(86)より[c]Everett Collection/AFLO
後年には案の定「製作中はコカインで頭がぼんやりしていて、自分がなにをしているのか本当に分からなかった」と語っており、「“バカ映画”だった」とまで言い放つ始末。しかし学んだことは非常に多かったらしく、二度と監督はしないとしつつも、自身のキャリアにおいて重要な経験であったと語っています。クラクションでモールス信号を打って給油しろと要求してくるトラックなんてほかの映画じゃ観れませんからね。キングのお茶目さが爆発した作品で、私は好きです!
巨匠のもとで、俳優にも挑戦!『クリープショー』(82)撮影中のロメロ監督(左)とキング[c]Everett Collection/AFLO
自作の映画化においてアルフレッド・ヒッチコックやスタン・リーのようなカメオ出演を度々果たしているキングですが、ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイトライダーズ』(81)にて妻タビサと共に映画初出演を果たした翌年、ロメロ監督のオムニバス映画『クリープショー』(82)の第2セグメント「ジョディ・ベリルの孤独な死」では、なんと主人公ジョディ・ベリルを演じています。
『クリープショー』(82)の第2セグメント「ジョディ・ベリルの孤独な死」より[c]Everett Collection/AFLO
農場に落下してきた隕石に触れてしまった農夫ジョディは火傷した指先からどんどん草が生え、次第に身体が蝕まれていく…というシンプルなお話。単なる小説家にしては優れた演技力を発揮し、短編ながら存在感を強く残すややコミカルな演技がおもしろい!結構ノリノリで演じているのがかわいいですね。ラストはちょっぴり切ない味があって、それもまたいいんです。観たことがない方はぜひに!
『クリープショー』(82)の第1セグメント「父の日」より[c]Everett Collection/AFLO