1992年に日本公開され、シネマライズ渋谷で27週におよぶロングランを記録したレオス・カラックス監督の最大のヒット作『ポンヌフの恋人』の4Kリマスター版が、12月20日(土)よりユーロスペースほか劇場にて公開されることが決定した。
本作は、ホームレスになってしまった天涯孤独で不眠症の大道芸人アレックス(ドニ・ラヴァン)と、失恋の痛手と眼の奇病による失明の危機により家出した画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)が、フランス・パリのセーヌ川に架かる最も古い橋であるポンヌフで出会い、次第に絆を深めていく姿を描いた恋愛映画だ。
『ボーイ・ミーツ・ガール』(83)、『汚れた血』(86)に続き、“アレックス”という名前を持つ青年を主人公に描いた「アレックス青春3部作」の完結編となる本作。大ヒットの裏側には、主演ドニ・ラヴァンのケガによる撮影中止や、製作費の増大によるプロダクションの破産、強風によるセットの倒壊など、完成が危ぶまれるほど混迷を極める撮影であったというエピソードが。そんな危機的状況のなか、カラックスは『ポンヌフの恋人』が完成させるに値する映画だと証明するため、映画監督や文化人を試写室に呼び未編集のフィルムを上映。参加したスティーブン・スピルバーグが「この映画には激しさや美しさ、想像力があふれている!」と称賛するなど、映画の完成を望む声が多く寄せられた。最終的に『カミーユ・クローデル』(88)などで知られた大物プロデューサー、クリスチャン・フェシュネールが製作を引き受け、日本からもカラックスの友人で当時ユーロスペースの代表であった堀越謙三が出資し、無事映画は完成したものの、最終的に製作費はセットだけで6億円近く、合計30億円を超えたという。
そんな製作にまつわるエピソードが、いまや“伝説”として語られている映画『ポンヌフの恋人』。4Kレストアにあたっては、ゴダールやトリュフォーらの作品に撮影監督として携わり、カラックスのデジタル撮影への移行を支えたカメラマン、キャロリーヌ・シャンプティエがリマスター版の監修を務めた。
あわせて解禁となったのは、盗んだボートをアレックスが操縦し、ミシェルが水上スキーで疾走する圧巻の場面を切り抜いた映像。水が凍える11月の夜、失敗すれば大金が消えてしまうプレッシャーと転倒の恐怖を抱えながら、ビノシュはスタントなしで自らこのシーンに挑んだという。パリを舞台に描かれる究極のラブストーリーをぜひ劇場で目撃してほしい。
文/MOVIE WALKER PRESS編集部