■Netflix映画『第10号客室の女』のあらすじと考察を紹介。キーラ・ナイトレイ主演、豪華ヨットのクルージングで起きた乗客の“消失事件”をめぐる密室サスペンス。海上で揺れる心理劇の真相とは!?
映画『第10客室の女』(原題:The Woman in Cabin 10)は、ジャーナリストの女性が目撃した「存在しないとされる事件」をめぐる心理スリラーだ。
隣室から人が落ちる瞬間を目撃したのに、誰も信じてくれない――。10号室は空室だと言われ、現場も証拠も消えていた。現実と妄想の境界が揺らぐ中、彼女が辿りつく“真実”とは?
ルース・ウェアの世界的ベストセラーを原作に、『時の面影』(2021・Netflix配信)のサイモン・ストーンが、監督と、ジョー・シュラップネル、アンナ・ウォーターハウスとの共同脚本を手掛け、キーラ・ナイトレイが主演のジャーナリストを演じている。
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Netflixにて2025年10月10日より配信スタート。
目次
Netflix映画『第10客室の女』あらすじ(ネタバレなし)
(C)Netflix
取材のため、豪華ヨットのクルーズに乗り込んだジャーナリストのロー。前回の仕事で証言者が殺されてしまうというショッキングな出来事に見舞われた彼女は、この気楽な仕事で、気分転換を図るつもりだった。
北欧の3日間の豪華クルーズに胸をときめかせていたローは、かつての恋人のベンと船上で再会し、動揺する。彼はこのクルーズにカメラマンとして参加していたのだ。二人は、ジョークを交わしながらも、気まずい別れ方をしたことを思い出していた。
真夜中。就寝していた彼女は隣室──10号室──から争うような音を聞いて目覚め、女性が海に落とされる瞬間を目撃する。ローの叫び声で乗務員や、クルーズの主催者リチャード等が駆け付けるが、彼らは一様に、10号室は「空室」だと言い、ローが言うような女性は乗船していないという。
彼らは乗客をチェックし、全員そろっているので誰も海に落ちた者はいないと断定する。ローは乗客がそろっているなら乗員の誰かに違いないと主張。リチャードが全乗員を集め、誰も欠けていないことを確かめ、この中にあなたが観た女性はいるかと尋ねるが、そこに記憶のある顔はなかった。
疲労による幻覚だと片づけられ、真夜中に騒いだ変な女として白い目を向けられるロー。狭い船上で、彼女の孤立は深まっていくが、彼女は事件を追求することを辞めず、ついに何者かに襲われる・・・。
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Netflix映画『第10客室の女』見どころとテーマ
(C)Netflix
閉ざされた空間の圧迫感
観客が息苦しさを感じるほど、ヨットという“逃げ場のない空間”が巧みに演出されている。薄暗い廊下や海上の孤立した世界が、心理的な緊張を高めている。
疑われる目撃者の恐怖
誰も信じてくれない――その不条理な状況が物語を牽引する。「高名なジャーナリスト」という評価が、「人騒がせな厄介者」へ転落してしまう。そのことの不合理さと恐ろしさが作品の基調をなしている。
ジャーナリストとしての信念
キーラ・ナイトレイの演技が光るのは、ローが決して諦めないところだ。どんなに孤立しても、彼女は真実を追うことをやめない。この“職業的誇り”こそが、物語を単なるサスペンス以上のものに押し上げている。
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Netflix映画『第10客室の女』感想と評価
(C)Netflix
主演のキーラ・ナイトレイが演じるのは、取材のために豪華クルーズに乗り込むジャーナリストのローだ。
しかし、出発早々、彼女がこの空間に場違いであることが描かれる。煌びやかなディナーパーティーで着飾りすぎてしまう場面は、さりげないが象徴的だ。ローが乗客の富裕層たちとはまったく異なる人間であることを、監督サイモン・ストーンは細やかな演出で観客に伝えており、彼女の「異物感」そのものが物語の緊張感を高めている。
真夜中、就寝中に聞こえた物音と悲鳴。ローは隣室──10号室──の女性が海に投げ出される瞬間を目撃する。しかし、船のスタッフによればその部屋は空室で、そんな乗客は最初から存在しないという。疲労からの幻覚だと片づけられ、真夜中に騒いだ変な女として周囲の視線は冷たい。もともと浮いていた彼女は、閉ざされた洋上で次第に孤立していく。
海洋上のヨットという閉鎖的な空間が、心理的な圧迫と一体化していく。ヨットの薄暗い廊下、どこにも逃げられないデッキ、そして誰ひとり信用できない人間関係が加わる。偶然同乗していた元恋人のカメラマンは心配して彼女にクルーズの期間だけは大人しくするよう助言するが、彼さえも完全な味方とは言い切れない。ローにとってこの船は、取材の場であると同時に、出口のない牢獄のようなものでもあるのだ。
ローが目撃した“女性”は本当に存在したのか? それとも彼女の心が生み出した幻なのか? ここで映画は、単なるパラノイア的サスペンスに傾くこともできただろう。だが、キーラ・ナイトレイの演技がそれを許さない。彼女が演じるローは、生粋のジャーナリストであり、恐怖に屈するよりも真実を掴もうとする。たとえ周囲から狂気の目で見られようと、彼女は「事実」を追うことをやめないのだ。
そのように彼女を駆り立てるのは、過去に彼女が体験した事件が大いに関係しているだろう。情報提供者の死というショッキングな出来事を経験した彼女は、自らの記者としての責任と罪悪感を背負っている。その痛みが、彼女を真実へと突き動かす原動力になっているのだ。
全体として90分余りのコンパクトな作品ながら、緊張と謎解きが密度高く詰まっている。サスペンスと心理劇の融合に、適度なアクションが加わり、週末の夜のお楽しみに家で気楽に観るのに最適の一本だ。
Netflix映画『第10号客室の女』作品情報
2025年製作/アメリカ映画/原題:The Woman in Cabin 10/配信:Netflix
監督:サイモン・ストーン 原作:ルース・ウェア(『第十号客室の女』上下巻/アカデミー出版) 脚本:ジョー・シュラップネル、アナ・ウォーターハウス、サイモン・ストーン
出演:キーラ・ナイトレイ、ガイ・ピアース、デヴィッド・アヤラ、アート・マリック、ググ・バサ=ロー、カヤ・スコデラー、リオ、デヴィッド・モリッシー、ダニエル・イングス、ハンナ・ワディンガム、ギッテ・ビット、リーサ・ローベン・コングスリ
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