一般社団法人Japanese Film Project(JFP)は、日本映画業界が抱える構造的な課題の解決を目指し、「適正な契約関係の構築」と「バリアフリー上映」に関する2つの実態調査を開始した。文化庁主催の調査と、アーツカウンシル東京の助成を受ける調査を同時に実施し、制作現場から鑑賞環境に至るまで、広範な課題解決に向けた具体的なデータを収集する。調査結果はオンラインで公開され、今後の制度設計やシンポジウムなどで活用される予定だ。

フリーランス保護新法も見据え、制作現場の契約実態を可視化映画業界の適正な契約関係構築に向けたアンケート調査2025

文化庁が主催する「適正な契約関係構築に向けたアンケート」は、映画制作現場における発注者と受注者双方の契約状況や、現場での課題を把握することを目的としている。劇映画やドキュメンタリー、アニメーションなどジャンルを問わず、監督、俳優、スタッフといった全てのフリーランス従事者と、彼らへ発注する立場のプロデューサーや制作会社員などが対象だ。

収集されたデータは、業界の商習慣を長期的な視座で改善するための制度設計や研究に活用される。さらに、2025年度中に開催予定の契約研修会では、本調査の結果を基に、フリーランス関連の法務を専門とする長澤弁護士が具体的な解決策を解説する予定となっており、調査結果が実践的な知識へと還元される仕組みだ。JFPは、制作現場の健全化には当事者の声が不可欠であるとして、広く協力を呼びかけている。

バリアフリー上映の「質」を問う 当事者の声で新たな映画賞創設も視野バリアフリー映画に関するアンケート<br />情報保障の映画賞(第0回)をつくる

アーツカウンシル東京の助成を受けて実施される「バリアフリー上映に関するアンケート」は、視覚や聴覚に障害を持つ当事者を中心とした鑑賞者の視点から、音声ガイドやバリアフリー字幕といった「情報保障」の質的向上を目指すものだ。近年、情報保障が付与される機会は増加傾向にあるが、その内容について当事者の意見を体系的に集める試みは十分ではなかった。

本調査では、障害当事者や情報保障制作者、日本語を母語としない人々など、多様な立場からの意見を募る。集計された結果は、ブラインド・コミュニケーターの石井健介氏やろう者の映画監督である今村彩子氏などの専門家が分析・講評を行う。

調査結果はオンラインで公開されるほか、2026年春に開催予定のシンポジウムで議論を深める。さらに、優れた情報保障に対して光を当てるための「映画賞」創設の可能性についても議論を喚起するなど、ユニバーサルな鑑賞環境の構築に向けた新たな動きへとつなげる狙いがある。

アンケート回答は以下のURLより。

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