これまでフォルツァスタイルでリリースしてきたカシミア製品はいずれもピアチェンツァ製。
もちろん、9月16日の正午より1週間限定で販売するカシミアアウター3部作も同社のカシミアを使っていますが、これまで何度も「本当に素晴らしい生地である」と伝えてきたものの、そのタッチの素晴らしさや軽やかでありながら抜群に暖かいことは、実際に手に取らないと分からないもの。
そこで今回はいかにピアチェンツァ製のカシミアが素晴らしいのか、ファクトリーの歴史をはじめ素材や製法に至るまで、どれほどこだわり抜いて作られているのかという観点から詳細に解説いたしましょう。
ひとくちにカシミアと言っても雲泥の差が存在する
かつては高級生地の代表格として知られていたカシミアですが、近年では秋冬になるとファストファッションブランドからもカシミアのセーターやマフラーなどが登場するようになりました。それらを手に取って「確かにウールと比べれば柔らかいけれど、こんなものか」と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、それら量販店のカシミアとピアチェンツァのカシミアを同じものとして扱うのは、大きな間違いです。というのも、カシミアの美点にして価値の分かれ目は繊維の細さであり、ピアチェンツァのカシミアは、その細さがズバ抜けているから。
そもそもカシミアの原毛は9つの等級に分けられるのですが、等級の低いものが17〜19ミクロンであるのに対して1級品は14ミクロン。これはスーツ地に換算するとSuper 200’sに該当すると言えば、その細さがお分かりでしょうか。
また、安価なカシミアの場合は往々にしてチクチクした着心地だったりするもの。これは刺し毛と呼ばれる堅い毛が混入するのが原因なのですが、1級品はその混入率も0.1%。まるで撫でられているかのような心地よい肌触りを生む秘密が、ピュアな産毛のみを使っているかどうかなのです。
カシミアでは全体をバリカンで刈るのではなく、刺し毛の内側にある産毛のみを漉き取って原料として使用する。
©gettyimages
そして、ピアチェンツァではカシミアのなかでも最高級品の産地として知られる、内モンゴル自治区で育てられたアラシャンカシミアの原毛を主に使用しています。この内モンゴル自治区は冬季にマイナス40度を超える過酷な環境。その寒さに耐えるため、カシミア山羊は細く長く緻密な産毛を備えている、というわけなのです。
また、カシミア山羊一頭から採取できる原毛はわずか150gとただでさえ貴重な繊維のため、マフラー1枚で1頭、コートやアウターを作るためには6頭から8頭のカシミア山羊が必要になると言われているのですが、内モンゴル産のアラシャンカシミアは全世界の生産量のうちわずか1%という希少さ。まさに繊維の宝石と呼ぶにふさわしいプレミアムな素材なのです。
そして、単に繊維が細ければ良いというわけではありません。内モンゴル自治区のカシミア山羊は他の品種と交配していないため繊維長が長いだけでなく、長さの揃った原毛を採取でき、かつ色の白さも最上級という特徴があります。そのため適切に生地に仕立てることでしなやかで目が揃い、極めて美しい発色を見せてくれる生地が出来上がるのです。
最高級の素材を手に、最古級のミルが生地に織り上げる
そして単に最高級の素材を使っているのが、最高のカシミアというわけではありません。それを生地に仕立てる時のこだわりこそが、ピアチェンツァを「世界最高のカシミアの織り手」たらしめている理由です。
同社の創業は1733年まで遡りますが、古くは1623年には毛織物商を営んでいたと記録に残っており、世界広しといえども最古級のミルとして知られています。
特にカシミアは1913年にマリオ・ピアチェンツァがヒマラヤ遠征隊として参加した際に、シェルパ族から「凍傷防止のために足に巻くように」とカシミア製の布を渡されたことでイタリアに広まったと言われており、その歴史的経緯から入手困難なトップクオリティのアラシャンカシミアを安定的に入手できる特権的地位にある、と言えるでしょう。
こちらはマリオ・ピアチェンツァがカシミアと出会った遠征の際に撮影したヌン・クン峰の一葉。ヌン・クン峰が座すラダック地方は現在でも主要なカシミアの産地として知られている。ちなみにネット記事では「マリオがK2登頂の際にカシミアと出会った」と書いてあることが多いが、K2の初登頂は50年代のため間違いと思われる。
そんな同社はゼニアやロロピアーナ、カノニコも居を構えるイタリアのビエラ地方にファクトリーを構えていますが、生地作りで重要なのが原毛の洗浄工程や染色工程で使う水。
ビエラ地方はアルプス山脈を水源とする清浄な軟水であり、生地の発色に影響を与えるカルシウムやマグネシウムの含有量が少なく、アラシャンカシミアの原毛ならではの白さと相まって美しい染色を可能にしているのです。
そして同社に届いたアラシャンカシミアの原毛は湿度が管理された部屋で一定期間の状態を見極めながら熟成する工程で本来の膨らみなどを引き出した後に紡績工程へと進みます。
こちらがビーバー仕上げなどの起毛工程に使われるアザミの実。和名でその名もラシャカキグサ(羅紗掻草)といい、日本のアザミとはまったく異なる植物であることに注意したい。
その紡績工程で最も特徴的なのが、同社のブランドロゴにもなっているアザミを使った起毛工程。生地として紡がれた反物はカシミアらしい艶やかさと肌触りを出すために生地表面を毛羽立たせるのですが、その際に同社では一般的に使われる針布(細かな針が生えた器具)ではなく、アザミの実を使用するのです。ほどよい弾力を備えたアザミの実を使うことによって繊維を傷つけることなく、その長さを生かしながらより繊細に起毛することを可能にしています。
また、今回のカシミア3部作で使用する生地は470g/mと、コート用として縮絨加工(水に通すことで縮ませて生地にする工程)がしっかりと施された肉厚なもの。
縮絨工程によってごく細い繊維が絡み合うことで生地内部に空気を含んだ層が構成され、アウターとして仕立てた時にカシミアならではのぬめるようなドレープ感と軽さ、なにより暖かさを備えた1着に仕上がるのです。もちろん肉厚なぶん原毛をたっぷりと使う必要があるのは言うまでもありません。
WTOの繊維・衣料品協定が撤廃された05年以降、カシミアの価格はずっと上昇傾向。今後もその傾向は続くのは間違いないため、気になる方はお早めのご購入をお勧めいたします!
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※各商品ページは販売開始の10月16日正午よりオープンいたします。