1982年に公開され、世界で初めて長編映画としてCGを本格導入したSF映画『トロン』。その15年ぶりのシリーズ最新作『トロン:アレス』が10月10日(金)より公開となる。MOVIE WALKER PRESSではこの公開を記念して、革新的な技術とビジュアルで世界を席巻した「トロン」シリーズが、クリエイターにどのような影響を与えたのかをテーマにインタビューを敢行!

第1弾は、唯一無二の世界観で国内外から根強い人気を誇る日本アニメーション界の鬼才で、2010年に公開されたシリーズ第2作『トロン:レガシー』のファンだという梅津泰臣監督。最新作『ヴァージン・パンク』に与えていた影響や『トロン:アレス』への期待を語ってもらった。

「僕の新作のルーツは『トロン:レガシー』だったのかもしれない」

――梅津さんは『トロン:レガシー』が大好きだとお聞きしたので、今日はその魅力について語っていただきたいと思っています。本作を観たきっかけはなんだったんですか?

「実は公開の時は観てないんですよ。最初の『トロン』を観てなかったのでハードルが高かったのかもしれない。観たきっかけはトム・クルーズの『オール・ユー・ニーズ・イズ・キル』(14)でした。SFだし日本の原作ということもあって劇場に行ったら、思っていた以上にトムとSFの相性がよかったので遡って『オブリビオン』(13)を観たんです。すると、トムやストーリー以上に映像やセットデザインなどの美術、メカが気に入ってしまった。そういうのは監督のセンスですから、今度はその監督の名前“ジョセフ・コシンスキー”で調べたら長編デビュー作が『トロン:レガシー』だったのでDVDを買ったんです。オリジナルを観てなくても大丈夫だったし、やっぱり、この人はセンスがいいなと確信しましたね」

梅津泰臣監督に『トロン:レガシー』の魅力を語ってもらった梅津泰臣監督に『トロン:レガシー』の魅力を語ってもらった

――コシンスキーは映画にかかわる前は建築家の道を歩んでいたので、そういうセンスがあるんでしょうね。

「僕が『オブリビオン』でもっとも気に入ったのは球体型をしたバブルシップ。両ウィング部分に名前の由来である球体のエンジンが設置されていて、ガラス張りのコックピットは180度回転する。フルスケールのモデルも見たけど本当にかっこよくて、2万円のガレージキットを購入したくらい…まだ作れてませんが(笑)。
そういうセンスを『レガシー』でもたくさん感じたんです。デザインはカーデザイナーが本職らしいドイツ出身のダニエル・サイモンという人がやっていて、『レガシー』のメカを見た時も『バブルシップに似てるな』と思い、調べてみたらやはり彼だった。モーターサイクルのタイヤの部分とかもそうだし、レーシングカーのデザインや戦闘機など、メカはすべてかっこいい。そういうデザインを活かしたコシンスキーの演出も立体的で360度フルに使っている。やっぱりセンスを感じますよ。
もっと遡ったらサイモンは『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11)もやっていた。ここでは潜水艦とか飛行艇が出てくるんだけど、そのデザインがなんとなくレトロな感じで、球体型のバブルシップに通じるものがある」

ダニエル・サイモンがデザインしたライト・サイクルダニエル・サイモンがデザインしたライト・サイクル『トロン:レガシー(Tron: Legacy)』12月10日(水)発売/4K UHD+ブルーレイ セット 7,590円(税込)/発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン/発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング/デジタル配信中(購入/レンタル) 発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン [c] 2025 Disney

――『キャプテン・アメリカ』の世界観はレトロフューチャーっぽかったですね。監督のジョー・ジョンストンも前身はコンセプチュアル・デザイナーだし、アールデコっぽいデザインが特徴的だった『ロケッティア』(91)も監督しているので、そういうところにはこだわりがあったと思います。

「いわゆる“空想科学小説”のイメージじゃないですか?コシンスキー監督にもどこかレトロな趣味を感じるから、サイモンと合うのかも…いや、サイモンがそういうコシンスキーの感性をきっちりと具現化してくれるんでしょうけど」

――調べてみたらサイモンは映画『F1(R)/エフワン』(25)もやってますね。車両とヘルメットのデザインやっているようです。

「ということは、やっぱりコシンスキーの世界観を具現化してくれる右腕的存在なんですね。僕はホント、気に入ってしまって、温めているある企画のメカデザインをお願いしたいなあと思ったくらい。いや、もちろん、そんなお金はないですけど(笑)、そう思うほど大好きなわけです。
その世界観でいうともう1人、クラウディオ・ミランダという撮影監督もコシンスキーのブレインだと思います。『オブリビオン』で気になって調べたら、僕の大好きなデヴィッド・フィンチャーとも『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)でやっていて、コシンスキーとは『レガシー』から『F1』までずっと組んでいる。コシンスキーの創造する世界観の大きな位置を占めていると思っているんです。コシンスキー、次の作品は『マイアミ・バイス』だというので、またサイモン&ミランダと組んでくれると楽しみが倍増するなって。
ところで、『アレス』のカメラマンって誰なんですか?」

【イラストを見る】鬼才・梅津泰臣が『トロン:レガシー』の世界をスタイリッシュに表現!貴重なラフ画も大公開【イラストを見る】鬼才・梅津泰臣が『トロン:レガシー』の世界をスタイリッシュに表現!貴重なラフ画も大公開イラスト/梅津泰臣

――ジェフ・クローネンウェスです。

「あ、フィンチャーと『ファイト・クラブ』(99)など、何本かやっている人だ。それは僕の期待値、かなり上がりますよ!」

――『レガシー』のアクションはいかがでしたか?

「僕の新作『ヴァージン・パンク』の14歳のヒロイン、羽舞の武器はブーメランです。先日のこのMWPのインタビューでも言ったと思いますが、身体の小さい女の子でも自在に扱える武器というコンセプトでブーメランを選んだんですが、今回『レガシー』を観直して、もしかしたらそのルーツはこれだったかもしれないと気づいたんです。おそらくというより、絶対に影響受けてます(笑)。『レガシー』を観た時、ブーメランというか、その演出がかっこよかったのは強烈に憶えていますから。ブーメランを投げると、それが次々と壁に当たって思わぬ動きを生む。背後から飛んでくることもあるくらい。このアイデア、当時のアーケードゲームなどから来ているのかもしれないですが、めちゃくちゃかっこよかった。その印象がずーっと頭に残っていて、無意識でブーメランにしちゃったんだと思いますね(笑)。

武器となるアイデンティティ・ディスクに知らずと影響を受けていたという武器となるアイデンティティ・ディスクに知らずと影響を受けていたという『トロン:レガシー(Tron: Legacy)』12月10日(水)発売/4K UHD+ブルーレイ セット 7,590円(税込)/発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン/発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング/デジタル配信中(購入/レンタル) 発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン [c] 2025 Disney

コシンスキーはアクション演出が上手だと思います。『オブリビオン』、アクションはそれほどなかったけどキレがよかった。とりわけ空中戦が上手で『レガシー』でもそれは感じました。だから『トップガン マーヴェリック』(22)を撮ったのはとても納得なんです」

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