この変革の背景には、2024年秋に英国ファッション協議会(BFC)のCEOに就任したローラ・ウィアーの存在がある。「英国ファッションの創造性の発信と商業的な成功を実現し、それを世界的に良い影響を与えるものにしていきたい」と語るウィアーは、ファッションエディターとしてキャリアをスタート。ファッション業界誌『ドレイパーズ』、日曜紙『サンデー・タイムズ』、UK版『VOGUE』といった有力媒体で経験を積み、2015〜19年には『イブニング・スタンダード』紙の週刊誌『ESマガジン』で編集長を務めた。さらに2023年には百貨店セルフリッジズにクリエイティブ・ディレクターとして参画し、マーケティングやコミュニケーションを統括するなど、メディアと商業の双方に精通する稀有な経歴を築いてきた。
ウィアーは、自身のバックグラウンドをもとに、ファッション産業を支える“目に見えない担い手たち”──PR担当者や縫製職人、モデルに加え、花屋やケータリング業者まで──の重要性を強調する。こうした多様な担い手がLFWというイベントを成立させ、年間680億ポンド(約12兆円)の経済価値を英国にもたらしているのだ。彼女は、様々な要素の創造性と才能を称え、業界全体を前進させたいという。
政府との関係構築、そして新たな挑戦
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一方で、ブレグジットによる観光客向けの免税制度の廃止や、ラグジュアリーEC「マッチズ・ファッション」の経営破綻など、英国のファッションを取り巻く環境は依然として厳しい。ウィアーはロンドン・ファッションウィークが直面する最大の課題を「デザイナーたちの資金難」と指摘する。世界経済全体の不安定さに加え、ブレグジットとコロナ禍の影響がいまだに尾を引いていると話し、「彼らが切実に求めているのは、より明確な資金調達経路と、立ち上げ時だけでなく持続的な規模拡大まで継続的に支援する実質的なサポートであることがわかりました」とウィアーは語る。
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