高市新総裁の誕生に韓国メディアは「女子安倍」などとレッテルを貼っている(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
10月4日午後、自民党総裁選挙の結果が明らかになると、韓国メディアは一斉に高市氏当選を報じた。一部には「日本で初の女性宰相誕生の見込み」と報じるものもみられるが、多くは高市総裁を「女子安倍」「極右」と紹介し、警戒感を露わにした。
背景には、タカ派として知られる人物の首相就任が現実となれば、これまで岸田政権、石破政権を通じて友好機運が高まっていた日韓関係が、また一気に冷え込む可能性があるからだ。
現在の韓国では、李在明(イ・ジェミョン)大統領が「国益優先」を理由に、かつて繰り返してきた日本への強硬姿勢を封印して、有効な両国関係の維持に努めてきた。しかも韓国はアメリカとの関税交渉で行き詰まっていることから反米感情が盛り上がりを見せており、ここへきて日本との関係が悪化すると、経済への大打撃につながりかねない。
日韓関係悪化に対する懸念は、石破首相が9月7日に辞任を表明した直後から韓国で積極的に報じられてきた。とりわけ石破首相は最後の外遊となった9月30日の釜山訪問で、日韓の友好ぶりをアピールしたばかりだ。そこには、日韓シャトル外交の継続はもちろん、両国の友好的な関係を日本の次期政権も維持すべきというメッセージが込められているように思われる。
高市新総裁誕生については、欧米でも報じられ、フランスAFP通信は「急進的な国家主義者」と紹介。イギリスのインディペンデント紙は「強硬なナショナリスト」で、高市政権が誕生すれば「劇的に右傾化するだろう」と予測している。
これだけを見ると、高市氏への見方は、韓国がとびぬけて批判的、というわけではない。だが、韓国メディアの報じ方には、高市氏に対する警戒感をことさら煽るようなトーンがあることが気になる。「極右」「女子安倍」とあえてレッテルを貼ることで、韓国社会の根深い反日感情を意図的に刺激しているようにも見える。
9月27日に行われた総裁選候補者の討論会で、高市氏は「竹島の日」(2月22日)に毎年行われる式典には「大臣を送る」と発言した。この発言を韓国メディアは「右翼の色をさらけ出した」と批判した。
とはいえ、高市氏を「極右」「女子安倍」などと呼ぶ理由について、韓国メディアが丁寧に解説しているとは言い難い。現状としては、高市氏の過去のタカ派的言動や活動を詳細に分析するよりも、高市氏にレッテルを貼り、確実視される高市政権の誕生について韓国内向けに警鐘を鳴らすことを優先していると見るべきだろう。