重要なファクターは、本作が批評家・観客から熱狂的な支持を得ていることだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア96%・観客スコア84%を記録し、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A」評価を獲得。およそ4人中3人が「強く薦める」と回答する異例の成績となった。

 IMAXなどプレミアムラージフォーマットでの成績も好調で、上映は今後数週間にわたり継続する予定。また、ワーナーは映画賞シーズンの健闘にも期待しており、本作の劇場公開をできるかぎり長期的に継続する計画だという。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』©2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

 現地メディアによると北米興収は現在の3倍以上になる見込みで、ライバル企業による「性急に判断してはならない」とのコメントも紹介されている。アンダーソン作品として最もエンターテインメント性が意識されていること、作品のテーマやメッセージとしても広い客層にアプローチしうることから、賞レースを含めてポテンシャルは大きい。日本公開は10月3日。

 今週の第2位は、ドリームワークス製作のCGアニメーション映画『ギャビーのドールハウス ザ・ムービー』で、北米3500館で週末興収1370万ドル。Netflixシリーズ『ギャビーのドールハウス』(日本では2024年よりテレビ東京系列で放送中)の映画版で、実写とアニメーションのハイブリッド作品だ。

『ギャビーのドールハウス ザ・ムービー』©DreamWorks Animation

 製作費は3200万ドルで、世界興収は1937万ドル。ただし本作の場合、劇場興行以外にもグッズなどのセールスが超強力な後押しとなっている。Rotten Tomatoesでは批評家スコア80%・観客95%。CinemaScoreでは「A+」評価と、ファミリー映画らしく観客支持が強い傾向だ(批評家の評価が興行に影響しにくいジャンルでもある)。日本公開は2026年3月13日。

 第3位は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』で、週末興収は710万ドル。前週比マイナス59%と、公開3週目にして数字はやや落ち着いた印象。世界興収は6億ドルを突破しており、圧倒的な人気の高さを証明した。第4位『死霊館 最後の儀式』は北米興収1億6145万ドル、世界興収4億3585万ドルとこちらも好調だ。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 なお、前週公開された『Him(原題)』と『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』は厳しい状況が続いており、前者は先週の第2位から第6位へ転落。週末興収は365万ドルで、前週比マイナス72.5%(!)と下落率も非常に大きい。後者は前週の第6位から第10位とトップ10すれすれで、製作費4500万ドルに対して北米興収592万ドルという成績だ。

北米映画興行ランキング(9月26日~9月28日)

1.『ワン・バトル・アフター・アナザー』(初登場)
2240万ドル/3634館/累計2240万ドル/1週/ワーナー

2.『ギャビーのドールハウス ザ・ムービー』(初登場)
1370万ドル/3500館/累計1370万ドル/1週/ユニバーサル

3.『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(↓前週1位)
710万ドル(-59%)/2984館(-358館)/累計1億1817万ドル/3週/ソニー

4.『死霊館 最後の儀式』(↓前週3位)
686万ドル(-44.1%)/3083館(-330館)/累計1億6145万ドル/4週/ワーナー

5.『The Strangers: Chapter 2(原題)』(初登場)
590万ドル/2690館/累計590万ドル/1週/ライオンズゲート

6.『Him(原題)』(↓前週2位)
365万ドル(-72.5%)/3168館/累計2079万ドル/2週/ユニバーサル

7.『The Long Walk(原題)』(↓前週5位)
340万ドル(-45.4%)/2297館(-548館)/累計2881万ドル/3週/ライオンズゲート

8.『Downton Abbey: The Grand Finale(原題)』(↓前週4位)
330万ドル(-48.5%)/2829館(-882館)/累計3890万ドル/3週/Focus Features

9.『スパイダーマン』3部作 再上映(初登場)
225万ドル/1485館/累計225万ドル/1週/Fathom Events

10.『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』(↓前週6位)
125万ドル(-61.6%)/3300館/累計592万ドル/2週/ソニー

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年9月29日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W039/
https://variety.com/2025/film/box-office/box-office-one-battle-after-another-opening-weekend-leonardo-dicaprio-1236533304/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/box-office-one-battle-after-another-paul-thomas-anderson-1236387318/
https://deadline.com/2025/09/box-office-one-battle-after-another-1236556684/
https://deadline.com/2025/09/warner-bros-box-office-2025-1236557609/

■公開情報
『ワン・バトル・アフター・アナザー』
10月3日(金)全国公開
IMAX、Dolby Cinema同時公開
出演:レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホール、テヤナ・テイラー、チェイス・インフィニティ
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:マイケル・バウマン、ポール・トーマス・アンダーソン
衣装:コリーン・アトウッド
音楽:ジョニー・グリーンウッド
配給:ワーナー・ブラザース映画
2025年/アメリカ映画/原題:One Battle After Another/162分/ビスタサイズ/リニアPCM5.1ch+7.1ch+ドルビーアトモス(一部劇場にて)/字幕:松浦美奈/PG12
©2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema® is a registered trademark of Dolby Laboratories
公式サイト:obaa-movie.jp

稲垣貴俊

稲垣貴俊
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主に映画・ドラマ・演劇のコラム、レビュー、インタビューなどを執筆・編集。劇場用パンフレット、ウェブメディア、雑誌、展覧会図録などに寄稿・参加。国内舞台作品にもドラマトゥルクとして携わり、主な作品に、PARCOプロデュース『藪原検校』、トライストーン・エンタテイメント『少女仮面』、劇団「木ノ下歌舞伎」作品など。

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