気づけば今年も残り3か月ほどとなり、改めて2025年を振り返ってみると、ミニシアターを中心に支持を集めた『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』をはじめ、『ドールハウス』、『近畿地方のある場所について』、『8番出口』(公開中)などJホラーが豊富な年だった。そして、これらの作品は“場所系”、“ループ系”、“呪物系”に分類でき、同じ括りのなかでそれぞれのよさを持っている。そこで今回、最新ホラー『火喰鳥を、喰う』が10月3日に公開になったということで、ジャンルごとに印象的なタイトルとそのおもしろさを振り返ってみたい。

“呪物系”に分類にされる最新ホラー『火喰鳥を、喰う』“呪物系”に分類にされる最新ホラー『火喰鳥を、喰う』[c]2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

なにかヤバいものに自らが近づいてしまう“場所系”

“場所系”でまずピックアップしたいのは『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。主人公は行方不明者捜索のボランティアをしている青年で、子どものころにかくれんぼしていた弟が目の前で姿を消したことがトラウマになっている。ある日、彼のもとに母親から弟が失踪した瞬間を収めたビデオテープが届いたことから、霊的な力を持った同居人と、彼らに近づく新聞記者も巻き込んで、避けてきた過去と向き合わざるを得なくなる。

2つ目は『事故物件ゾク 恐い間取り』で、実際に事故物件に住み続ける松原タニシの「事故物件怪談 恐い間取り」シリーズを原作とする映画化第2弾。Snow Manの渡辺翔太がタレントになることを夢見て上京してきた主人公を演じ、「事故物件住みますタレント」として必ず取り憑かれる部屋、いわくつきの古旅館、降霊するシェアハウス…といった物件を転々としていく。

渡辺翔太が主人公の「事故物件住みますタレント」を演じる(『事故物件ゾク 恐い間取り』)渡辺翔太が主人公の「事故物件住みますタレント」を演じる(『事故物件ゾク 恐い間取り』)[c]2025「事故物件ゾク恐い間取り」製作委員会

SNSで反響を呼んだ作家、背筋による同名小説を鬼才、白石晃士監督が映画化した『近畿地方のある場所について』も“場所系”。オカルト雑誌の編集長が失踪し、彼の部下だった編集者と親交のあったオカルトライターが、地下倉庫に散乱する子どもの行方不明事件や都市伝説、ネット怪談にまつわる雑誌記事や記録映像を調べるうちに、近畿地方の“ある場所”へと導かれていく。ライターを菅野美穂、編集者を赤楚衛二が演じ、触れてはいけないものに近づき、しだいに狂気に呑まれていく様を体現した。

失踪したオカルト雑誌の編集長が集めていた資料を調べていくが…(『近畿地方のある場所について』)失踪したオカルト雑誌の編集長が集めていた資料を調べていくが…(『近畿地方のある場所について』)[c]2025「近畿地方のある場所について」製作委員会

これら3本に共通するのは、なにか“ヤバい”ものに登場人物自らが近づいてしまう感覚。『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』には神物や骨壺など「縁を切りたいものが捨てられる山」と呼ばれる摩白山に主人公たちが足を踏み入れ、『事故物件ゾク 恐い間取り』はタイトルの通り事故物件が題材になっている。恐怖と好奇心は非常に密接につながっており、よくない結果が待っているのはわかっているのに確かめずにはいられない、そんな矛盾した性が人には備わっているようだ。

この感覚にさらに迫ったのが『近畿地方のある場所について』。失踪した編集長が集めていた資料は一見するとバラバラでつながりなどなさそうなのだが、突き詰めるとそのどれもが近畿地方の“ある場所”へと行き着いており、さらに人智を超えた存在にまで発展していく。怖いのに点と点が1本の線になる様は観ている側としても気持ちがよく、編集者とライターのコンビがどんどん深みへとハマっていくことに共感できてしまう展開が秀逸だった。

近畿地方の“ある場所”とは?(『近畿地方のある場所について』)近畿地方の“ある場所”とは?(『近畿地方のある場所について』)[c]2025「近畿地方のある場所について」製作委員会

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