主演ドラマの撮影を終えた綾小路 翔が、大いに語る(9月14日:大阪市内)
唯一無二のヤンク・ロックバンドとして、存在感を放ち続ける氣志團。その誇り高き團長・綾小路 翔が、10月3日から「サンテレビ」(神戸市中央区)で放送されるショートドラマ『湯村天使の吐息』にて、初のドラマ主演を務める。
兵庫県の「湯村温泉」(兵庫県美方郡新温泉町)を舞台にした謎多きストーリーで、「なんじゃこれ!?」「どんなドラマなんや笑」「翔やんドラマ主演?一体何が…!?」と、SNS上でも放送開始前から話題を呼んでいる。鬼才・島田角栄が監督を務める世界観に挑んだ綾小路に、ドラマ出演を決意した経緯、自身が演じる主人公・千秋について、現場で遭遇したさまざまな奇跡、そして今の思いを赤裸々に、たっぷり語ってもらった。
取材・文/伊東孝晃(赤犬 タカ・タカアキ)写真/木村華子
◆ 「え、どういうことですか?」謎の放送局から、謎のドラマのオファー
──初のドラマ主演、おめでとうございます。まずは今回、『湯村天使の吐息』への出演が実現した経緯を教えてください。
ある日突然、うちの事務所のチーフマネージャーから、「翔さん、『サンテレビ』というテレビ局から、深夜に放送されるショートドラマ主演のお話をいただいています」と言われて、え、どういうことですか?と。最初に聞いた時は、もう、まったく話の内容がわからなかったです。
まず、失礼ながら我々、関東の人間で、「サンテレビ」さんのことをちょっと存じ上げていなくて。そして、「主演」ってどういうことだろうと。そもそも、どういう理由でオファーが来たのか、どんなストーリーなのかも、その時点ではまったく分からなくて。
もう少し突っ込んで分かったのは、「どっかの山奥」にこもって撮影を行うこと。ある程度の撮影期間が必要で、しばらく拘束されます、などなど言われたのですが、この時点では、まだまだ情報が錯綜していました(笑)。
ドラマ「湯村天使の吐息」メインビジュアル。どんな作品なのだろうか…
◆ 伝説の『木更津キャッツアイ』から20年以上…今度は連ドラ「主演」
──確かに、謎すぎますね。ちなみに、これまでドラマや演技のお仕事というと…?
普段は自分たちのコンサートで、幕間の映像とか、ちょっとしたコントをやるぐらいですね。ドラマは、実はデビューしてすぐの頃に、『木更津キャッツアイ』(TBS 2002年放送)に出させてもらっています。
当時はまだ若く、自己肯定感が高かったこともあって、のびのびやらせてもらったのですが、結果的に「伝説のスティックリーディング(棒読み)」を披露してしまって…。今では、本当に見返すのも恐怖です(笑)。『極悪がんぼ』(フジテレビ 2014年放送)というドラマにも出させてもらったのですが、これは、もう本当に一瞬の出演でした。演技力に関しては言わずもがな…です(笑)
『木更津キャッツアイ』から10数年後、宮藤官九郎さんご自身が脚本・演出の『高校中パニック!小激突!!』(2013年)というロック・オペラへの出演の話をいただいたんです。しかしながら、この頃には演技に対してかなりネガティブになってしまっていて…。
ただ、大恩ある官九郎さんからのお誘い、出たい人はプロ・アマ含めて何万人もいるであろうところに、演技経験のない自分に声をかけてくださっている。だったら、これは、もうやるしかないだろうと思って引き受けることにしました。その公演に取り組むにあたって、僕、お芝居が怖いし、集中したいということもあり、半年ほど他のお仕事を止めてもらっていたんです。本当に僕の人生で演技の経験って、それぐらいです。
◆ 「僕に何を求められているのか、ということが、知りたくなって」
──そこから、いきなり「主演」オファーだったんですね!時が進むに連れてドラマの詳細も見えてきたと思います。物語については、どのような印象を持たれましたか?
これも本当に失礼な話なんですけど、最初に何話分かのプロットを読ませていただいたんですが、さらに謎が謎を呼ぶ内容で…(笑)。うちのスタッフ的には、戸惑っている僕を見て、「お断りしたほうがいいですかね…?」と言っていたのですが、いや、ちょっと待て。ここまで分からないと逆に興味しかないぞ。いったい何が行われているんだ、どこまで進む物語なんだ、そして、僕に何を求められているのか、ということが知りたくなって、最終的に受けさせていただくことにしました。
氣志團のスケジュールもある程度先まで決まっていたのですが、ちょうど撮影期間が忙しくなる直前だったので、いくつかのお仕事を調整してもらって、ついに、何一つ情報がないまま指定された湯村温泉に行くことに。帯同してくれたマネージャーが若干23歳の「現代っ子」なんですけど、ネットで現地の様子を調べたら「翔さん、コンビニがめちゃくちゃ遠いし、夜9時以降にやってる店がないです!」って焦りだして。「じゃあ、もうダイエットしにいくと考えてはどうだい?」となだめて連れていきました(笑)。
──そんな経緯でしたか。島田監督が音楽業界とのつながりが深い方なので、てっきり翔さんとも交流があるものと思っていました。
最初は本当に何も繋がりがない状態から始まって。現場で話していたら、結局、どこで誰と繋がっていて、というのがめちゃくちゃ分かったのですが、最初の時点ではなんの情報もなかったです。僕も、いろいろ詮索するより、これはもう謎が謎を呼ぶ温泉地で初対面というほうが、かえってロマンチックなんじゃないかと思い、現地入りするまでは、あえて情報を入れないことにしました。