厚生労働省の調べによると、2022年の時点で男性の平均寿命は81.05歳、日常生活が支障なく送れる健康寿命は72.57歳だった(ちなみに女性は平均寿命87.09歳、健康寿命は74.45歳)。つまり、なんらかの問題を抱えながら日常を過ごさなくてはならない年数差が8.48年もあるというのだ(女性は12.64年!)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001363069.pdf
できることなら命果てるその日まで美味しいご飯を食べ、行きたいところに行ける生活を送りたいと誰もが願うはず。そのためにも今のうちからの体づくりは必要不可欠だろう。
身体を鍛えれば、自ずと心も健やかに整うということを、雄弁に物語る肉体の持ち主がいる。俳優、阿部寛さんだ。
新作映画『俺ではない炎上』では真冬のロケ地でパンツ一枚の裸姿になり迫真の演技をこなした彼には、今年61歳を迎えたとは思えないその肉体で、目を見張るほどの美しさもあった。映画公開を記念したインタビュー後編では心と鍛錬や撮影の裏話について伺っていく。
映画やSNSとの関わりについてを伺った前編はこちら
「ジムは静かでポジティブな場」
――最新主演作『俺ではない炎上』で、事実無根の炎上で殺人犯に仕立てられ、警察や私人逮捕を狙う動画配信者などから逃げ続ける山縣泰介を演じています。泰介は知恵を絞り、ランニングで鍛えた身体能力を駆使して逃げ続けます。阿部さんご自身の体力作りは、ジムで行っていると伺いました。
「ジムで体を鍛えることが多いですね。週に一回行ければいいかな。大抵は、体型を維持するという程度ですが、アクションの仕事があったりすると、そのためのメニューをトレーナーに組んでいただきます。これはモデル時代から続けているので、40年近くなりますね。まだジムが今のようにたくさんなかった時代です。僕がジムに行く理由は体を鍛えるだけではなく、精神も鍛えることができるから。
謎の大学生・サクラ役の芦田愛菜さん。©︎2025「俺ではない炎上」製作委員会 ©︎浅倉秋成/双葉社
肉体を鍛えることは、気持ちも高揚させるし、ジムに通っている人たちも前向きな人ばかり。その空間に身を置いてるだけで、なぜか気持ちが元気になるんです。具合の悪そうな人はほぼいないですからね。みんなお互いのトレーニングをそれぞれやっているだけで、会話を交わすこともないのに、不思議な一体感がある」(阿部寛さん、以下同)
――センセーショナルな投稿に飛びつく前に、立ち止まって考える。安定した心のためには、肉体を鍛えることも大切なのかもしれません。阿部さん演じる山縣泰介も仕事が忙しい中、運動を続けていました。
「この映画の主人公も、ゴルフやジョギングなどをし、体力に自信がある。だから逃げてしまったんでしょうね。僕なら犯人じゃないならすぐに警察に行きますけど(笑) 動画配信者に追われて廃車置き場に逃げ込むシーンがあるんですが、窮地に追い込まれた人間がよく描かれています。必死だからこそ、寸前のところで奇策が閃めきます。人間は追い込まれると余計なことをしてしまうか、普段なら考えもつかないような奇策がひらめくのでしょうね。
大学生インフルエンサー・住吉初羽馬役の藤原大祐さん。©︎2025「俺ではない炎上」製作委員会 ©︎浅倉秋成/双葉社
僕も以前舞台で大事な場面の持ち道具を置いてきてしまって、その時はいつもなら到底思いつかないような対処策を思いついたことがありました。結果、多少演出が変わったと思われる位で、誰も僕の失敗に気づきませんでした。その時対処出来たことが後で自分の自信になりましたし。