ずっと観たかった映画「I‘m still here」をやっと観ることができた。

ブラジルの軍事政権下で起きた大量の強制失踪事件の一つを描いた映画だ。

公式HP:https://klockworx.com/movies/imstillhere/

ルーベンス・パイヴァは、労働党の国会議員を罷免され亡命。亡命先から帰国してからは、政治活動をすることなく、建設関係の仕事をしながら、海辺の家で、家族を愛し、家族との生活を堪能している。

そんなある日、男たちが家に押しかけ、ルーベンスを連行する。のちに、妻のエウニセと娘も連行され尋問される。エウニセは、拷問に苦しむ人々の声を聞きながら拘禁され、尋問され続ける。

そんな中で、エウニセは、48歳で学位をとり、アマゾンの先住民の人権と環境について研究・活動する。そして、子どもたちを育て独立させる。末息子は、事故で肢体不自由になるなど、家族にはさまざまなことが起きたようだ。その息子は作家となり、今回の映画の実話を執筆している。その姿に、

「これが軍事政権に対する彼女の闘い方であり、彼女はその闘いに勝ったのだ。」

と強く心を揺さぶられた。

強制失踪は、私が人権について学び活動する原点となったテーマだ。大学院の時には、強制失踪についてプレゼンし、そのプレゼンゆえに卒業できたのではないかと思っているほどだ。

映画の中で、エウニセが語るように、家族への賠償だけでなく、真相究明と処罰が極めて重要だ。軍事政権が起こす行動の描写は、「こんな状態になったら、極めて危険だ」という私たちへの警告でもある。このような軍事政権は、「過去にもあったし、現在でもあるし、未来にもありうる」ことを肝に銘じて置く必要がある。

そして、そのような社会の中にあっても、自分が愛する夫・家族を毅然と守りきり、自由と家族を愛し、闘った女性がいたことを忘れないでいたい。

主演のフェルナンダ・トーレスは、夫の行方について子どもたちに話すことなく自分の内に秘め、学者として、子どもを育て切った、芯の強い、自由を愛する女性を見事に演じ切った。
 

I‘m still here:

監督:ウォルター・サレス 主演:フェルナンダ・トーレス

晩年のエウニセを演じたのは、フェルナンダの本当の母である俳優フェルナンダ・モンテネグロ。

第97回アカデミー賞® 国際長編映画賞 受賞 3部門ノミネート <作品賞|主演女優賞|国際長編映画賞>

第82回ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門) 受賞

第81回ヴェネツィア国際映画祭 脚本賞 受賞

10月3日(金)まで旬報シネマシアターにて上映。

この記事をシェアする

Leave A Reply