第40回横溝正史ミステリー&ホラー大賞で大賞を受賞した原浩の同名小説を、『空飛ぶタイヤ』(18)、『シャイロックの子供たち』(23)などの本木克英監督が映画化した『火喰鳥を、喰う』(10月3日公開)。信州で暮らす久喜雄司(水上恒司)と夕里子(山下美月)の夫婦のもとに、ある日、戦死した先祖・久喜貞市の従軍日記が届き、その日を境に、墓石の破損、祖父の失踪など、彼らの周りで不可解な出来事が次々に起こる。幸せだった夫婦が、夕里子の大学時代の先輩で超常現象などに造詣が深い北斗総一郎(宮舘涼太)の力を借りて、怪異の解明に挑む姿が描かれる。

MOVIE WALKER PRESSでは、主人公であり、大学で化学を教える助教授・久喜雄司を演じた水上恒司と、北斗総一郎に扮したSnow Manの宮舘涼太にインタビューを敢行!手を組んだものの、夕里子をめぐって対立するような役柄で初共演を果たした2人が、撮影時のエピソードを振り返りながら、役との向き合い方や芝居のアプローチ、相手の印象などを熱く語ってくれた。

「あの段階から、物語において重要ななにかが始まっているんですね」(水上)

――お2人は、久喜雄司と北斗総一郎をそれぞれどのように捉えて演じられましたか?

妻・夕里子と共に穏やかに暮らしていた雄司だったが、不可解な出来事に巻き込まれていく…妻・夕里子と共に穏やかに暮らしていた雄司だったが、不可解な出来事に巻き込まれていく…[c]2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

水上「雄司はほかの登場人物たちが投げてくる球をひたすら受け続ける主人公ですけど、ただ受けるだけではなく、攻めの姿勢を見せたり、相手によって受け方を変えるような人だと僕は捉えました。本木監督も『そのとおりだね』とおっしゃってくれたので、そんなふうに芝居を進めていきましたね」

宮舘「僕は映画に(グループではなく)単独で出演させていただくのが、今回が初めてでしたし、北斗という役柄も複雑なキャラクターだったので、頭を悩ませました。そのなかで僕が行き着いたのは、強い執着や思念が彼を動かしているのではないか?ということだったのですが、映画を観る人によって北斗の見え方は変わると思います。僕も未だに『あれでよかったのかな?』って考えていますから」

――北斗は登場シーンからすごいインパクトで衝撃的でしたけど、演じるのは楽しかったんじゃないですか?(笑)

 雄司と夕里子は、超常現象に知見を持つ北斗総一郎の力を借りることに 雄司と夕里子は、超常現象に知見を持つ北斗総一郎の力を借りることに[c]2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

宮舘「楽しかったですよ(笑)。でも、あのカフェでの登場シーンが水上くん以外の共演者の方々と、現場で初めて会うシーンだったんです。なので、北斗としても自己紹介をするシーンだけど、ほかのキャストの人たちや映画館にお越しのみなさんに対しても自己紹介をするような勢いで長い説明ゼリフをぶわ~っと言って。その一連をカメラのアングルを変えたりしながら何度も何度も撮ったので、水上くんは耳にタコができたんじゃないかな(笑)」

水上「いやいや、もう、かさぶたになってますよ(笑)」

宮舘「消毒液、塗ろうか?(笑)。でも、夏休み明けに登校してくる転校生みたいな感覚で、みなさんにあのクセの強いアプローチを仕掛けていったんです」

――北斗は初対面の雄司に対して最初から失礼な態度をとるし、彼の奥さんを「夕里子」と呼び捨てで呼んだりして、それだけでもうイヤな奴という印象を植えつけます。

宮舘「普段はあんなこと絶対にしないですよ」

水上「わかってますって(笑)。イコールとは思ってないです」

――あの登場シーンでは怪異に対する自身の考えを、雄司と夕里子たち、そして映画を観ている人たちにちゃんと理解させなければいけないし、科学で立証できるものしか信じない雄司とはまったく逆の、特殊な力を持った北斗のキャラクターもわからせなければいけない。気を遣うことも多かったんじゃないですか?

映画単独初出演となった宮舘涼太。クセ強キャラ・北斗総一郎を演じるにあたって心掛けたこととは?映画単独初出演となった宮舘涼太。クセ強キャラ・北斗総一郎を演じるにあたって心掛けたこととは?撮影/尾藤能暢

宮舘「気を遣うということはまったくなかったです。逆にある程度強烈なアプローチで仕掛けないとみなさんに失礼だと思ったので、そこはグイッと北斗を全面的に押し出すような気持ちで撮影に臨みました」

――水上さんは、北斗に好き勝手に言われて、雄司としてイラっとすることはなかったですか?席を立ったり、座り直したりするお芝居もありましたが…。

水上「実はあの席を立ったり座ったりする動きは台本には書いてなくて。北斗のセリフを読んだ時に雄司はこういう気持ちになるな。だったら、もうちょっとなにか表現する方法があるんじゃないか?と思って、僕が現場で勝手にやったことなんです。相手を拒絶したり、壁を作るのってわりと簡単なことだと思うんですよね。でも、心を開いていく人物のほうが魅力的に見えるし、否定という感情を表現するにしても、“拒絶”というシンプルな形で終わらせなければ、別のなにかが見えてくる。あのシーンの雄司は実際、台本では“拒絶”という形で描かれていましたが、夕里子の手を引っ張って店を出て行くことができないし、否定しているのに、北斗の話になぜか耳を傾けてしまう。あの段階から、物語において重要ななにかが始まっているんですね。うまくできているかどうかはわからないけれど、そういった要素も持ち込みたかったんです」

細かな感情表現ひとつにもこだわりを見せた水上恒司細かな感情表現ひとつにもこだわりを見せた水上恒司撮影/尾藤能暢

――席を立ったり座り直したりすること以外にもなにかやったことはありますか?

水上「簡単に“コイツ、なに言ってるんだ?”で終わらせるんじゃなくて、常に“えっ、それってどういうこと?”っていう相手の話に対する興味や好奇心を頭の隅に置いて芝居をしていました。そうじゃないと、芝居がどうしても単調になってしまいますから」

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