2025年9月25日、丸の内ピカデリーにて、映画『俺ではない炎上』公開前日祭が開催され、主演の阿部寛をはじめ、芦田愛菜、藤原大祐、長尾謙杜(なにわ男子)、夏川結衣、そして山田篤宏監督が登壇し、ついに公開を迎える心境と撮影エピソードを語った。
舞台挨拶【詳細】レポート
SNSで殺人犯に仕立て上げられる男・山縣泰介を演じた阿部寛や、泰介を追う謎の大学生サクラ役の芦田愛菜ら、豪華な実力派キャスト陣が集結したことで、会場は熱気に包まれた。
1. 公開前日の挨拶と作品への想い
観客が本編を見終わった直後という熱気のなか、登壇者が公開を控えた気持ちを語った。
阿部寛(山縣泰介 役)
皆さん、今日はお越しくださってありがとうございます。ご覧になった通り、最近僕はかっこいい役が続いていたので、久々にこんな惨めな男になりましたが、いかがでしたでしょうか。
この撮影は1年ほど前に行われましたが、現場で監督に相談しながら、いろんな人に助けてもらいながらやりきりました。
阿部寛
芦田愛菜(サクラ 役)
ご覧いただいた皆さんなら分かっていただけるかと思いますが、本当に言えないことだらけで、すごくもどかしい役でした。
こうやって、その謎というかトリックを皆さんとシェアできる日を無事迎えられて、とても嬉しく思っています。
芦田愛菜
藤原大祐(住吉初羽馬 役)
撮影は昨年だったのですが、あっという間に公開ですね。これから皆さんの元に、この映画が炎上して届いていくのがすごく楽しみです。
藤原大祐
長尾謙杜(青江 役)
僕もあまりネタバレをしたらダメだとスタッフさんから言われているので、多くは語れません。今日映画を楽しんでいただき、これからもたくさんの方々に楽しんでいただける日がようやく来たと感じています。
長尾謙杜(なにわ男子)
夏川結衣(山縣芙由子 役)
公開前日にこんなにたくさんの方に集まっていただいて、私たちみんなとても嬉しいです。
この撮影は浜松でずっとロケをしており、地元の皆さんに本当に協力していただき、思い出深い作品となりました。皆さんがこの作品を共有して持ち帰っていただき、明日からの公開に力を下されば、こんなに嬉しいことはありません。
夏川結衣
山田篤宏監督
僕からしたら、ようやく公開という気持ちが半分と、一区切りついて公開してしまうという寂しさも半分あります。
気に入っていただけたなら嬉しいです。例によって、ネタバレの話は絶対にするなという話をもらっているので、我々と同じ感覚で、皆さんにこれから楽しんでいただければと思います。
山田篤宏監督
2. 追い詰められる主人公とキャストの熱演
山縣泰介が追い詰められ逃亡する姿は、シリアスであるにもかかわらず、観客の笑いを誘うコミカルな要素を含んでいる。
‐追い詰められていく阿部さんの姿を久しぶりに見られて嬉しい、というSNSの感想も届いています。シリアスな場面でネギを振り回したり、崖の上で大変なことになったりと、追い詰められれば追い詰められるほど笑いが起きる要素がありますが、演じる上で心がけたことはありますか。
阿部寛
何も心がけていないです。おかしいことというより、真剣にやった方が面白いなと思ったんです。
ただ、裸になるシーンは、さすがに寒いかなと思って、当日まで『上は着ていいですよね?』って監督に答えを保留してもらおうと思っていました。相当寒かったんですよ(※阿部は12月の寒風が吹き付ける海辺の崖で、下着一枚でスタントに臨んだ)。
山田篤宏監督
阿部さんが真剣にやればやるほど、めちゃくちゃ面白くなっていくんですよ。そもそものキャラが、阿部さんのホームページを見ている限りでも絶対にもう『SNSってなんだ?』というキャラだと思っていたので、そこは完全にハマるなと思っていました。
‐芦田さんの「あんたが諸悪の根源だろうが!」というセリフと表情は、今まで見たことがない新しい芦田さんだと反響がありました。そんなに激怒することは普段ありますか。
芦田愛菜
(新しい引き出しを)出せました。ありがとうございます。なかなか日常生活で、あそこまで激するというのはありませんが、サクラにとってはすごく許せない気持ちが高ぶっていましたし、物語もクライマックスに近づく中で、どこまで思いっきり感情をぶつけられるかというのをすごく考えました。
阿部寛
僕は以前、ドラマで芦田さんが別の役者さんにすごい説教しているのを見たのが好きだったので、今回『久々に来た!』と思いました(笑)
阿部寛/芦田愛菜
‐藤原さんが演じた初羽馬は、映画の中で最も変化の大きい役所の一つでした。演じる上で気を付けたことはありますか。
藤原大祐
ザ・令和の若者という役所だったので、『うわ、いるよな、こういうやつ』という役にしたいと監督からもお話がありました。
現場で監督と話しながら、演じた後に『今のウザかったですか?』と確認していましたね。
山田篤宏監督
ばっちりウザかったので、ありがたいなと思っていました(笑)
山田篤宏監督/夏川結衣/阿部寛/芦田愛菜/藤原大祐
‐長尾さんが演じた青江役は、表面に見えない複雑な感情を抱えていました。役作りで意識したことは?
長尾謙杜
2面性のある役ではありましたが、僕たちが仕事させていただいている芸能界でのストレスと、青江が働く場所でのストレスはまた違う重圧や悩みだろうと思いました。
最初の登場シーンから、奥に何かを持っているのかなという闇のある人に見えるように意識しました。
‐長尾さんから見た阿部さんの印象は?
長尾謙杜
印象的なことで言うと、阿部さん、大きいなと。皆さんも思っていると思いますが、生で見たら本当におっきいんだなというのを感じました。
‐逆に阿部さんから見た長尾さんの印象は?
阿部寛
怪しいなと思いましたね。もう役で入ってきてるから。若者と交流取れないみたいな感じで登場するから、そういう意味での深くて怪しい人物なんだろうなと思っていました。
‐夏川さんが演じた妻・芙由子役は、逃亡中の泰介の妻として、演じる上で何を考えられましたか?
夏川結衣
家に刑事が2人もやってくるということはなかなか現実にはないので、それだけでも身が縮むというか。
ネタバレになるから言えないこともありますが、芙由子なりの嘘をつきながらあの場所にずっといるので、言ってることと思ってることがちぐはぐだったりもして、分かりづらい感じではありました。
そして、あのリビングのシーンは基本笑いに包まれていました。なぜかというと、あの場所に出てくる刑事の2人とお母さん役の田島さん、みんなおかしいんですよ。特に田島さんがとにかくチャーミングで。
必死にやればやるほど、見ている人はどっかくすっとおかしくなる。そんなことが現場でも起こっていた感じでした。
‐山田監督に、SNSの投稿表現でこだわった点を伺います。
山田篤宏監督
あれは全部めちゃくちゃめんどくさかったです。撮影は2ヶ月でしたが、編集は5〜6ヶ月あり、そのうち4ヶ月ぐらいはSNS投稿表現の編集に使っていたぐらいの作業量でした。
1個1個の投稿もちゃんと成立するように、全部の画像も同じものが出てこないように調整しました。
長尾君の(青江の)画像に関しては、僕が千葉まで2時間かけてタワーの写真を撮りに行って入れたりしています。
3. 特別企画:阿部寛は「〇〇な人」。キャスト全員の認識にズレ?
山縣泰介が自分と他人の認識のズレに気づいていく本編シーンにちなみ、登壇者から見た阿部さんの人物像と、阿部さん自身が考える自己像を発表する企画が行われた。
フリップオープンは、まずは阿部以外のキャスト・監督が。最後に阿部自身がどう思われたいのかを明かし、答え合わせをする形で行われた。
‐まずは芦田さんの回答から教えてください。
芦田愛菜
「ストイックな人」
阿部さんはストイックな人だと思いました。元々ストイックなイメージがありましたが、役に対してや、一つ一つの仕草について監督とたくさんお話しされている姿を拝見して、やはりストイックな方だと感じました。
阿部寛
まあ、そうですね。ただ、山田監督の反応が面白いので。なので監督の反応も見たくて、色々聞いて、どういう切り口でいこうかと相談していました。
‐続いて藤原さんの回答は?
藤原大祐
「HIROSHI ABEな人」
なんて書いたらいいか迷ったんですが、「阿部さんは圧倒的な人」という意味です。
今回共演させていただけるってなった時に、ずっと見ていた憧れの方と共演できる!いう認識がありました。役柄上接点がない関係性なので、一緒にお芝居ができるシーンが1日しかなかったのですが、そのパワーに圧倒され、感情がすごく湧いてきました。
阿部寛
藤原君、鋭いですね。この「HIROSHI ABEな人」という表現は合っていると思います。若い子とかにも『ヒロシ』って呼ばれるんで(笑)
‐続いて長尾さんの回答は?
長尾謙杜
「ゆっくりな人」
阿部さんは、すごくゆっくりな方だなって思います。大人な落ち着きで、ゆっくり喋られる方なんだとおもいますが、僕のグループ(なにわ男子)のメンバーは早口な関西の方が多いので、阿部さんとお会いすると特にゆっくりに感じて聞き取りやすかったです。
‐阿部さんから見た長尾さんの印象は?
阿部寛
長尾くんはね、今回同じシーンが少なかったんですよ。だけど、一緒の車に乗っている時とか、緊張していたんでしょうね。結構ミスったりとかして。『大丈夫かい君?』みたいなシーンもあったけど、意外とチャーミングでしたよ。
‐次に夏川さん、お願いします。
夏川結衣
「ぬくもりの人」
阿部さんは差し入れでもとても気を使ってくださる方なんです。撮影終わりの時、スタッフみんなと出演者にお餅をくださったんですよ。ぬくもりの人です。
阿部寛
夏川さんは面白いですよ、本当に面白い。いろんな情報を的確に教えてくれる。その的確な表現がやっぱり分かるんですよね。
‐最後に監督、お願いします。
山田篤宏監督
「クソ真面目な人」
阿部さんはスーパースターでいらっしゃるので、最初は僕みたいな新人監督の言うことなんか聞いてくれないんじゃないかと思っていましたが、役者さんとして真剣なディスカッションをさせてもらいました。
本当に真剣な役者さんと一緒に物作りをしているという感覚に常になっていたので、『クソ真面目な人』と言わせていただきました。
阿部寛
監督はね、浜松でウナギを食べに行ったんですよね。研究熱心だから、監督のオススメの3軒に行ったら、本当に監督の言った通りすごく美味しかったです。
‐阿部さん自身は自分をどんな人だと認識していますか?フリップをオープンしてください。
阿部寛
「ステキな人」(自己評価)
やっぱりこう言われたら嬉しいですよね。でも、(皆さんの回答を見て)みんな的確にそう思ってくれてるんだなと、短い時間の中だったけど思いました。
4. 最後のメッセージ
最後に、監督と主演の阿部寛から、映画を楽しみにしている観客へのメッセージが送られた。
山田篤宏監督
SNSを使った現代的なテーマですが、全年代の方に見て楽しんでいただける、最後まで飽きずに見ていただける作品になったと思っています。
ぜひ、SNSで炎上とは言わずに、大きなバズを皆さんのお力で作っていただいて、より多くの人に楽しんでいただければと思います。
阿部寛
久々の僕のこういう役を楽しんでいただけたこと、非常に嬉しいです。
撮影は本当に過酷でしたが、浜松のスタッフの方や、街の人々、特に駐車場の優しいおじさんが毎日何か買ってきてくれるなど、街ぐるみでやっていた撮影でした。
監督も非常に、相談するとまず『いいですね』とは言わずに、自分の考えを持ってから『こうしましょう』と言ってくれる監督なので、またご一緒したいと思っています。
とにかく皆さんが面白がって楽しんでくれたので、今後も濃い役を増やします。今日はありがとうございました。
山田篤宏監督/夏川結衣/阿部寛/芦田愛菜/藤原大祐/長尾謙杜(なにわ男子)
■フォトギャラリー
[写真・記事:三平准太郎]
映画『俺ではない炎上』
第36回山本周五郎賞候補にもなった浅倉秋成の小説「俺ではない炎上」が山田篤宏監督の手で実写映画化
《INTRODUCTION》
第36回山本周五郎賞候補にもなった浅倉秋成の小説「俺ではない炎上」が山田篤宏監督の手で実写映画化。9月26日(金)に全国公開いたします。
主演を務めるのは、第36回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞『テルマエ・ロマエ』(12)、第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞『ふしぎな岬の物語』(14)、優秀助演男優賞をダブル受賞『柘榴坂の仇討』(14)、第45回日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞『護られなかった者たちへ』(21)など、数々の作品で多くの映画賞を受賞し、今尚とどまることを知らずに活躍し続ける阿部寛。
本作について阿部は、「非常にチャレンジングでやりがいのある作品」とコメントを寄せ、見事にハードな役柄を演じ切った。
《STORY》
大手ハウスメーカーに務める山縣泰介は、ある日突然、彼のものと思われるSNSアカウントから女子大生の遺体画像が拡散され、殺人犯に仕立て上げられる。家族も仕事も大切にしてきた彼にとって身に覚えのない事態に無実を訴えるも、瞬く間にネットは燃え上がり、“炎上”状態に。匿名の群衆がこぞって個人情報を特定し日本中から追いかけ回されることになる。そこに彼を追う謎の大学生・サクラ、大学生インフルエンサー・初羽馬、取引先企業の若手社員・青江、泰介の妻・芙由子といった様々な人物が絡み合い、事態は予測不能な展開に。無実を証明するため、そして真犯人を見つけるため、決死の逃亡劇が始まる―――。
出演:阿部寛
芦田愛菜 藤原大祐 長尾謙杜
三宅弘城 橋本淳 板倉俊之 浜野謙太 美保純 田島令子
夏川結衣
監督:山田篤宏
脚本:林民夫
音楽:フジモトヨシタカ
主題歌:WANIMA「🔥おっかない🔥」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
原作:浅倉秋成『俺ではない炎上』(双葉文庫)
配給:松竹
©2025「俺ではない炎上」製作委員会 ©浅倉秋成/双葉社