サン・セバスティアン国際映画祭で「旅と日々」について語る三宅唱監督
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 三宅唱監督(41)の最新作「旅と日々」が日本時間9月26日午前2時からスペインで開催中の第73回サン・セバスティアン国際映画祭の「サバルテギ・タバカレラ部門」で上映され、230人を超える満員の観客が温かい拍手を送った。

 「多様で驚くべき映画・新しいアングルやフォーマットに挑戦する映画」にスポットを当てたのが同部門。参加した三宅監督には「美しい映画だった」「本当に素晴らしい」などの熱い言葉とともにサインを求める人が絶えなかった。

 漫画家つげ義春氏の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、行き詰まった脚本家が旅先での出会いをきっかけにほんの少し歩みを進める物語。シム・ウンギョン(31)が主演し、堤真一(61)、河合優実(24)、佐野史郎(70)らが共演している。

 「友人である他の映画監督からも、サン・セバスティアン国際映画祭は一度絶対に行った方がいい、と聞いていたので、今回初めて訪れることができうれしく思っています」と話した三宅監督。上映後は拍手に包まれ、Q&Aも熱く盛り上がった。

 マンガを映画化するに当たり、どのような点が難しかったかを問われると、監督は「つげ義春さんはマンガ表現の本質を追求している人であり、あるいは新しいマンガの魅力を発見しようとする作家です。だから僕自身にとっての挑戦は、映画における“本質”を捉えること、新しい可能性を見つけることでした。それは難しいけれど、とてもやりがいのある仕事だったと思います」と答えた。

 2つのストーリーをつなぐ構造についての質問には「この映画は“旅”を題材にすると同時に、“映画そのもの”を題材にする作品でもあります。そして、映画を見ることでもう一度“驚く”という体験をつくりたいと考えていました。まるで初めて映画館に入って映画を観たときのように、言葉で説明できない“驚き”を生み出したい。例えるなら、夢を見ているときに“これは夢だ”と夢の中で気づくような感覚。起きてから“夢だった”とわかるのではなく、夢の中で一度目覚めるような体験に近い。それを映画で表現できればと思いました」と述べた。

 小津安二郎監督の作品とのショットの類似点についても質問が及び、「小津の映画は自分にとって非常に大切ですが、“空いているショット”をまねしているわけではありません。僕が小津から受け継ぎたいと思っているのは、キャメラが登場人物をどう見つめるかです。幸せなときも悲しいときも、キャメラとの距離がまったく変わらない。これは簡単にできることではなく、そこに強く影響を受けています」と答えた。

 第78回ロカルノ国際映画祭で最高賞の金豹賞とヤング審査員特別賞をダブル受賞、第30回釜山国際映画祭のコンペティション部門にも正式出品されるなど、世界から熱い視線を集める三宅監督の最新作。国内では11月7日からTOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほかで全国ロードショー公開。

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