掲載日
2025年9月25日
プラダ、マックスマーラ、ボスによる、統一感がありクールで意外性に満ちた3つのコレクションは、なぜ人はミラノへ来るのか――世界の潮流を生み、仕立ても仕上げも完璧な服を見るためだ――という原点を、絶妙のタイミングで思い起こさせてくれました。
プラダ:静かに夜へは行くな
プラダ
2026年春夏コレクション – DR
木曜日に発表された最新コレクションは、ファッションの方向性、気迫、そして全体のシックさにおいて、プラダが今なおミラノ最大の存在であることを、見事に思い出させてくれました。
最初のモデルが登場する前から、同ブランドはすでにライバルに一歩先んじていました。極小のQRコードが付いた小さな白い招待状を収めた、シルバーのスチール製マッチボックスという緻密に作り込まれた招待状。そして、南ミラノの巨大なショースペースの中に、鮮烈なオレンジ色のラッカーで満たされた巨大な「湖」を見立てたセットという徹底ぶり。
会場外には何千人ものファンが詰めかけ、K-POPスターやインフルエンサーの一団に歓声を上げ、その熱狂ぶりからもブランドの勢いが伝わってきました。路上のボリュームはロックレジェンド級。
挑発的でありながら常に研ぎ澄まされたこのコレクションには、カットアウトのトップスやドレス、さらにはエプロンの内側からのぞく、まるで「ほとんど何も身につけていない」かのようなブラが十数点も登場。巨大なロフトやボヘミアンなタウンハウスに住む、艶やかなソワレのホステスを思わせるムードです。このルックは瞬く間に拡散するに違いありません。
ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズのデザイン・デュオは、透け感のある素材やテクニカルタフタのようなシワ感のある素材を交互に用い、ディアンドル、ラップ、バブル、ギャザースカートなど、あらゆる手法でボリュームに挑みました。その大胆さには感嘆するほかなく、紛れもなく今季の主役素材です。
さらに、ウエスト下はプリーツ、上身頃はミリタリー調に仕立てた秀逸なドレスも考案。ネックラインやウエスト、さらには靴の背面にはストラスやクリスタルを束ねて装飾。ソフトなアシッドトーンのグローブや、バックパックとパースを融合させたような大胆な新作バッグでアクセサリーも抜かりなし。
こうしたアイデアには、三つボタン、ペプラム、ドレープ仕立てといった見事なライトレザーのジャケットを合わせることもしばしば。
パレットは“静かなラグジュアリー”とは無縁――サーモンピンク、ブラッドオレンジ、アフリカンバイオレット、ターコイズブルー。サウンドトラックも同様に骨太で、Art of Noiseによるアンセム級トラックのスーパー・マッシュアップが鳴り響きました。
このプラダのショーは、ミュウミュウで彼女の元右腕だったダリオ・ヴィターレが、プラダ・グループが彼の就任後に買収したブランドであるヴェルサーチでデビューショーを行う前日というタイミングでの開催。今日のプラダのショーに示された粘り強さと才能には、感嘆せずにはいられません。国際ランウェイシーズンが開幕してから16日、現時点で最良のコレクションと言えるでしょう。
マックスマーラ:洗練されたロココ
マックスマーラ 2026年春夏コレクション – DR
マックスマーラでは巧みなギアチェンジ。主たるインスピレーションであるロココが、直感に反して、同ブランドのクラシックなワードローブをさらにミニマルへと導きました。
マリー・アントワネットやポンパドゥール夫人からデヴィッド・ボウイに至るまでにオマージュを捧げつつ、クリエイティブ・ディレクターのイアン・グリフィスは、ロココの華麗さや花卉的な要素をクールで控えめなディテールへと昇華し、見事なシルエットへと結実させました。
18世紀の貴族的生活の華美な装飾とは対照的に、プリントは一切なし。一方で、自然の曲線的なフォルムがこの2026年春夏コレクションの中心に置かれていました。
ショーは、スリムなトレンチコートの好シリーズと、肩先に小さなシフォンの雲をあしらったトップスで幕開け。グリフィスはまた、背中を大きく開けたボディコン・ジャケットやレインコートを送り出し、ファンネルネックや、あるいはラペルを立ち上げて仕上げました。
パンツはドレインパイプやシガレット型で、シルエットを縦に伸ばす設計。ヘアを高く積み上げたポンパドールが、その効果をいっそう高めます。
イブニングには、ロココの根源的な着想源が自然であることに呼応し、ガーゼの花びらのようなドレスを提案。
「ヴェルサイユの遊び心あるセクシーさを少し見せたかったのです。少なくとも、遊び心の錯覚でもね」と、大勢のエディターにiPhoneで囲まれながらグリフィスは微笑みました。イアンが多くの批評家に愛されるのは、体を美しく見せ、決して下品に見えない、気品あふれる服を生み出すからにほかなりません。
英国生まれのこのデザイナーは、ミラノの重要トレンドでもあるミッドリフ(腹部)の肌見せにも挑み、しっかりジム通いを続け体づくりに気を配る、今どきのファッショニスタ像を反映させました。
ジャズ・ファンクと壮大なオルガン協奏曲を融合させた見事なマッシュアップ・サウンドトラックを背景に、アンドレ・ヴァン・フリートがBasso Ostinatoを演奏。巨大なアイススケート・リンク、パラッツォ・デル・ギアッチョの場内で、緻密に構成されたショーにさらなる格調を添えました。
ボス:時流とメッセージを的確に体現
ボス
2026年春夏コレクション – DR
デヴィッド・ベッカムがフロントロウに座る中、ボスはミラノ北部の巨大な元工場で最新ショーを開催。セッティングはやや荒廃していても、服は端正で小粋でした。
サッカー界のスターが、ホワイト・ロータスで知られるメーガン・フェイヒー、『レベル・リッジ』のアーロン・ピエール、テニス界の王者ボリス・ベッカー、そしてメゾンの常に端正なCEO、ダニエル・グリーダーが並ぶベンチシートに近づくや、フォトグラファーは大興奮。
キャットウォークでは、K-POPスターのサウンド・オブ・クープスが足首まであるレザーのトレンチコートでショーを締めくくりました。複数のブランドと関わってきたサウンド・オブ・クープスは、ついにドイツでもっとも由緒あるファッションレーベルのブランド・アンバサダーに就任。5月のメットガラでは、韓服のチョゴリに着想を得たカスタムのボス製ジャケットで登場し、話題をさらいました。
ボスの真骨頂は、同時代のトレンドをスマートに抽出し、着映えと機能性を兼ね備えた服に仕立てること。このコレクションもまさにそれで、フレッシュなシルクウールのスーツ、ダブルカラーのシャツ、ゆったりとしたパーカがメンズに提案されました。ネクタイは一切なし。
ウィメンズには、穏やかなボリュームのテック素材ドレスやカクテルドレス、マニッシュなシャツやテクニカルタフタのトップスを。中でも白眉は、ペーパーレザーのセカンドスキン風シャツジャケット、トレンチ、ダスター。ヒップでありながら押しつけがましくなく、スタイリッシュでありながら過度にアバンギャルドではない、絶妙なバランスです。
クリエイティブ・ディレクターのマルコ・ファルチョーニは、スカーフや裂いた布片、テープ状のストリップ、ベルトなどを複数のルックから垂らし、多くの装いにスマートな動きを付加。ウィメンズ、メンズともにパンツは大きめでゆったり長めにカットされ、フットウェアの半分を覆う設計に。パレットはソフトなエクリュ、パテ、タバコ、ブラック。一方で、招待状とランウェイは使い込んだようなシルバーでした。
アンダーワールドのダンス・パーティ・ヒットをブレンドした、DJミッシェル・ゴーベールのパンチの効いた重低音が、ショーのエネルギーをさらに加速。
屈強でひげ面のデザイナー、ファルチョーニは、デザインチームの大勢のメンバーとともに堂々とフィナーレの挨拶へ。仲間思いのデザイナーに、惜しみない拍手が送られました。敬意。