映画『俺ではない炎上』(9月26日公開)公開前日祭が9月25日、丸の内ピカデリーにて開催され、主演の阿部寛、共演の芦田愛菜、藤原大祐、長尾謙杜、夏川結衣と山田篤宏監督が登壇した。
【写真を見る】共演経験の多い阿部寛&夏川結衣はトークも息ぴったり!
原作は、第36回山本周五郎賞候補にもなった浅倉秋成の同名小説。阿部が演じるのはある日突然 SNS上で炎上、殺人事件の犯人に仕立て上げられた男、山縣泰介。殺害された大学生の友人で泰介を追う謎の大学生のサクラに芦田が扮し、最初に事件の投稿を拡散した大学生インフルエンサーでサクラと一緒に泰介を追う住吉初羽馬を藤原が、泰介の取引先シーケンLIVE(ライヴ)に勤務する若手社員の青江を長尾が、泰介の妻、芙由子を夏川が演じている。
ある日突然 SNS上で炎上、殺人事件の犯人に仕立て上げられた男を演じた阿部寛
演じた泰介について「僕のやった役は真剣にやればやるほどおかしな役。なので、ただがむしゃらに逃げようと思って演じました」とキャラクターの解説と自身のアプローチを語った阿部。追い詰められる役は少ない印象があると指摘された阿部は、「ここまで惨めな感じはここ10年くらいやってなかったかな」とニヤリ。感想コメントでは「こういう阿部寛が観たかった!」という声も多いと伝えられると、「これからはどんどん、増やします!」と宣言し、笑いを誘っていた。
謎の大学生のサクラ役の芦田愛菜
激高するシーンが印象的な芦田には「観たことがない愛菜さん」とのコメントも多く寄せられていることについて、「日常生活でも役でもなかなか激高することはないのですが、サクラにとっては許せないという気持ちが昂るシーンだし、クライマックスに近づいてきてどこまで感情をぶつけられるのかみたいなところは考えながら演じました」と珍しい役での演技プランを解説していた。
大学生インフルエンサーを演じた藤原大祐
変化の大きい役どころを演じた藤原は「ザ・令和の若者っていう感じという感想もありますが…」とニヤリとし、「『うわー、いるよなぁこういうヤツ!』みたいな役にしたかったので、シーンを撮り終わると、監督のほうへ近づいていき『うざかったでしたか?』と確認していました」と撮影を振り返る。長尾は「二面性がある役。青江が抱えているストレスはきっと僕が普段感じているものとは違う気がしたので、役の立場になって(心情を)考えることが多かったです」と説明し、「闇のあるような人かなと思います」と青江役を分析していた。
演じた青江は「二面性がある役」と話した長尾謙杜
SNSでの書き込みをきっかけに自身を見つめ直し、自分が思っている自分と他人が思っている自分が違う事に気づいていくという本編のシーンにちなみ、阿部のことを登壇者が「どういう人だ」と認識しているのか、そして阿部は自身をどういう人間だと思っているのかをフリップトークで発表する場面も。
芦田は阿部について「ストイックな人」と回答。「そうかもしれない、そうですね」と反応した阿部は続く藤原の「HIROSHI ABEな人」という回答に興味津々。「でも当たってる。なんか名前で表現したくなるタイプらしい」と周囲の人からそんなふうに表現されることも少なくないと指摘。藤原のことを阿部は「面白い。なにを言い出すか分からないし、するどい人」と答えると、的中なのか藤原が照れながら頷く場面もあった。阿部は「ゆっくりな人」と話した長尾が「とにかくゆっくり話す方。いつかエミネムくらに早く話すところを見てみたいです!」と目を輝かせる。長尾にについて阿部は「チャーミングな人」と回答していた。
阿部演じる泰介の妻、芙由子役の夏川結衣
夏川は阿部を「ぬくもりの人」と呼び、撮影時のエピソードを披露。「年末の撮影終わりに、お餅をみなさんに配っていて。『良いお年を』というメッセージ付きでした。手にしたスタッフさんたちがほっこりする様子を見て、こういう気遣いのできる人になりたいと心から思いました」とニコニコ。阿部は夏川のことを「まあ、面白い人」とニヤニヤしていると「なんで笑うのよ!」と夏川からするどいツッコミが入り、会場も阿部も大笑い。共演回数が多いだけあって、2人のトークは自然体で息ぴったり。阿部は夏川の面白さについて「いろいろな情報を的確に教えてくれます。現場で話をしていて僕が観ていない映画があったら、的確な表現でいろいろと教えてくれます。その表現が本当に面白い人なんです」と説明していた。阿部がフリップに書いていたのは「素敵な人」という文字。登壇者のフリップを見つめ「ここにはなかったけれど…街中とかですれ違った時に『素敵な人』とかって言われるとうれしいものです」と阿部が微笑むと、長尾が「みんなのフリップを総合したら『素敵な人!』になります」とフォローし、会場からも大きな拍手が湧き起こっていた。
山田篤宏監督は公開前日の心境を明かした
最後の挨拶で山田監督は「ようやく公開という気持ちが半分と、もう公開してしまったという寂しさが半分」と正直な気持ちを明かした後、公開を明日に控え「本番は明日から。SNSを使った話で、現代的なテーマでありながらいろいろな人に飽きずに楽しんでいただけると思います。呟きやすい話なので、炎上なしで大きなバズをお願いいたします!」と呼びかける。「浜松にこもって、過酷な撮影をしました。浜松では駐車場のおじさんが優しくて、毎日なにかを買ってきてくれたりしました。街の人がみんなそう。街ぐるみの協力で撮影ができました」と感謝した阿部は、山田監督について「相談すると、自分のなかで考えてから『こうしましょう!』と答えるタイプ。これからを背負っていくと思います」とエールを送り、「こういう役を面白がって、楽しんでもらえたようなので、今後、増やしていきます」と再び宣言。最後は「俺でなはい!」という登壇者全員の掛け声に、会場が「炎上!」と応え、ステージ両側からキャノン砲が発射。擬似炎の演出も加わり、最後までイベントを熱く盛り上げていた。
取材・文/タナカシノブ