ついに最終週を迎えているNHK連続テレビ小説『あんぱん』。激動の時代の中、さまざまな経験をしたのぶ(今田美桜)は、嵩(北村匠海)と結ばれて以降はとにかく彼を陰に陽に支え、その活躍を信じ続けた。そしてアンパンマンが生まれ、日本中の子どもたちの人気者になろうとしている。

 のぶがどんな時も嵩を支えていたように、のぶも周囲の人に支えられていた。本稿ではのぶとともに生きてきた印象的な女性たちに注目していきたい。

河合優実は登場しただけで場の空気感を変えた

「お姉ちゃんの夢は、うちの夢や」

 教師になるという夢を抱いたのぶに、そう声をかけてくれたのが妹の蘭子(河合優実)。成績はのぶより蘭子の方が良かったようだが、高等女学校へは進学せず郵便局に勤め、家事を手伝って家族を支えた。

 蘭子といえば、「ロマンス」という言葉が似合う恋物語からも目が離せなかった。まずは、祖父の釜次(吉田鋼太郎)の弟子として働いていた石工の豪(細田佳央太)との甘酸っぱい恋。口下手同士のふたりは、あまり言葉を交わさずとも互いに思い合っていることが伝わってきた。だからこそ思いが通じあった瞬間は祝福の気持ちでいっぱいになったが、ふたりのその後の生活を奪ってしまった戦争がいかに残酷なものであるかを痛感した展開だった。そして、豪への思いを抱えながら惹かれる気持ちを抑えることができなかった八木(妻夫木聡)との大人の恋。雨の中、一つの傘の中で見つめ合い、やはり言葉に出さずとも気持ちを確かめ合っているであろうふたりを捉えた場面は、映画のワンシーンのようで美しかった。

 蘭子を演じた河合優実は、『不適切にもほどがある!』(2024年/TBS系)で主人公・小川市郎(阿部サダヲ)の娘・純子役でその名を世に知らしめ、その年、劇場アニメ『ルックバック』で主演声優、山中瑶子監督作『ナミビアの砂漠』で主演を務め、『あんのこと』では、第48回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。本作は満を持しての朝ドラ初出演となった。画面に登場すればがらりと空気感を変えてしまうその演技に魅了された人は多かったのではないだろうか。同世代の俳優の中だけでなく、ベテランと“演技合戦”をしても独特な存在感が際立っていた河合は、今後の活躍に注目したい役者の一人である。

原菜乃華は朝ドラヒロインさながらの愛されっ子

 愛されキャラのメイコ(原菜乃華)は、のぶに対する千尋(中沢元紀)の気持ちにただ一人気がつくという聡いところを見せたり、のぶが最初の結婚をするときに、嵩にそれを伝えるという行動力を見せたりしていたが、それらはのぶに幸せになってほしいという思いが高まってのこと。とても姉思いの妹なのである。

 ふわふわしてそうに見えてメイコは実は何事にも一途な性格。嵩の親友である健太郎(高橋文哉)と出会い、嵩とのぶの「仲直り作戦」として海辺で「椰子の実」を一緒に歌ったメイコは、健太郎に「メイコちゃんの歌声はすてきやねえ。心がきれいに洗われるばい」と言われ、一目惚れ。健太郎が戦争に出征したことで、会えなくなるが彼が生きていることがわかると高知でも、さらに遠く離れた東京でも接点を持ち迷惑にならない程度にアプローチする。鈍い健太郎はなかなか気がつかなかったが、のぶたちのサポートもあり、メイコは見事初恋を実らせた。健太郎とメイコ夫婦は、その後ものぶと嵩を巻き込みつつ、仲良く暮らしている様子はとても微笑ましい。

 ヒロインさながらの天真爛漫さを見せた原菜乃華も、本作が朝ドラ初出演。朝ドラ放送中に主演映画『見える子ちゃん』と、篠塚葵役で出演した映画『ババンババンバンバンパイア』が公開され、7月クールの連続ドラマ『ちはやふる―めぐりー』(日本テレビ系)では、かるたに青春を捧げる女子高生を演じた。まさに“出演ラッシュ”といえるこの状況は、原の注目度の高さを物語るものとなっている。9月30日に放送される『あんぱん』特別編『メイコの初舞台』で主演も務めることが発表されている。

『あんぱん』特別編、全4回で放送 高橋文哉×原菜乃華×大森元貴×古川琴音が主人公に

NHK連続テレビ小説『あんぱん』特別編が、9月29日から10月2日まで全4回で放送されることが決定した。
 朝ドラ第112作目…

リアルサウンド 映画部

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