11月7日(金)より世界独占配信、10月24日(金)より一部劇場にて公開予定のNetflix映画『フランケンシュタイン』のジャパンプレミア上映会が9月24日、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場にて開催され、来日中のギレルモ・デル・トロ監督が、スペシャルゲストのゲームクリエイター、小島秀夫とともに上映後の舞台挨拶に登壇した。
【写真を見る】親交のあるゲーム・クリエイターの小島秀夫と一緒に舞台挨拶に登壇したギレルモ・デル・トロ監督
小説家メアリー・シェリーの名著でいまもなお、あらゆる創作物に強く影響を与え続けている怪作を実写映画化。かねてから映像化を熱望していたデル・トロ監督が生と死を描き、人間としての意味や、愛を渇望し理解を求 めることの意味を問う壮大なドラマを哀しく蘇らせた。
己の欲望に駆られたヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)は、新たな生命をこの世に生み出すため の挑戦に乗り出す。その果てに誕生した”怪物”(ジェイコブ・エロルディ)の存在が、人間とはなにか、そして真のモンスターとは何かという問いを投げかける。
ギレルモ・デル・トロ監督と『フランケンシュタイン』との出会いとは
デル・トロ監督の公式来日は映画『シェイプ・オブ・ウォーター』(18)公開時以来、約7年ぶり。思い入れのある作品を完成させたいまの心境について「産後うつのよう」と表現したデル・トロ監督。「産んだ子どもが、学校に通い始めて、家に帰るのを待っているような気持ちです」と説明し、本作の完成は「感慨深い」とも話していた。
「これまで観てきた『フランケンシュタイン』のなかでも、とても美しく優しい映画でした」と感想を伝えた小島。本作を「フランケンシュタイン版羅生門」と表現し、「いままで見えなかったものが見えてきました。さすがはデル・トロ!マイ・フレンド!という気持ちでした」と長年の友情を滲ませつつ、「ファンとしてもデル・トロ監督が究極の『フランケンシュタイン』を作ってくれたことがすごくうれしい!」と完成した映画を手放しで絶賛していた。
ゲーム・クリエイターの小島秀夫
思い入れの強い『フランケンシュタイン』との出会いは7歳の頃まで遡ると振り返ったデル・トロ監督。「7歳の頃、ボリフ・カーロフの演じる『フランケンシュタイン』を観ました。故郷では、毎週日曜日に教会へ行き、その後は1日中放送されているホラー映画を観るという過ごし方をしていました。モンスターを観て、学ぶことがたくさんありました。私自身も同じような怪物であると感じていたんです。大人の世界が完璧を求めるなかで、私は彼の不完全ななかに美しさを感じたのです。そして11歳の頃に原作を読みました」と、怪物に魅了され、愛すべき原作に辿り着くまでの道のりを明かす。原作を読んで感じたことは「誰も原作の精神を映画にしていないということ。若い私はそれを映画で作りたいと思いました。40代を過ぎて、気がつくと今度は自分が父親になっている。私と子どもの物語を描くように、この映画を撮りたいと思いました」と、作品との出会いから映画化までの敬意を丁寧に振り返っていた。
ハートまで作っちゃました!
「フランケンシュタインの顔には縫い目があるものだが、なぜ今回は縫い目がないのか」という小島の質問に「通常、フランケンシュタインといえば、交通事故に遭ったように傷だらけな様相を想像すると思います。でもヴィクターはアーティストであり科学者。腕も脚もそれぞれ違うところから持ってきて、異なる部位を組み合わせながら、傷が残らないようにしています。解剖学を研究した成果、20年以上の計画を練り上げ、芸術として美しい怪物を作り上げた結果です」と説明。さらに「狂気の科学者ではなく、死に怒りを抱きながらも新しいものを創造することができた科学者として描きました」と解説を付け加えていた。
様々なポーズでカメラマンをよろこばせていた
最後の挨拶でデル・トロ監督は、親交のある小島に対して「長年、いい時も悪い時も支え合ってきました。今夜、こうして一緒に登壇できたことは本当に意義のあることです!」と力を込めて感謝。さらに、会場にいるはずだというホラー漫画家の伊藤潤二の名前を何度も叫び、「最も恐ろしいフランケンシュタインを作ってくださった。原作のホラー部分を忠実に描いてくれました!」とリスペクトを込めて紹介する場面も。観客も会場のどこかにいる伊藤に向けて、感謝の拍手を送る姿に、デル・トロ監督も拍手を送り返すなど、しばらく拍手が鳴り止まなかった。
取材・文/タナカシノブ