巨匠ジェームズ・キャメロン監督が心血を注ぎ込んで作りあげてきた「アバター」シリーズ。その最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が12月19日(金)より公開されるのに備え、第1作『アバター』(09)が9月26日(金)より、第2作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)が10月3日(金)より、それぞれ1週間限定で3Dスクリーンにて劇場上映。そこで本稿では、“映画の歴史を変えた”シリーズを簡単に振り返りながら、ハリウッドを代表する大物監督たちをも敬服させるキャメロン監督の偉大な功績について紹介していこう。

全世界興収29億ドル超!映画界に革命をもたらした『アバター』

地球滅亡の危機に瀕した人類が、希少な鉱物の眠る神秘の星パンドラの開発に活路を見出した未来。元海兵隊員で、怪我によって生きる希望を見失っていたジェイク(サム・ワーシントン)は、先住民族ナヴィと人間のDNAを組み合わせ、神経接続によって人間の意識を憑依させた“アバター”になりナヴィと接触。しかし彼らと過ごすうちに、パンドラの美しい自然に魅せられ、ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と惹かれあっていく。

キャメロン監督にとって『タイタニック』(97)以来の新作として、また当時最先端の映画技術を駆使した3D 映画の真骨頂として公開前から大きな話題を集めた『アバター』は、たちまち世界中を魅了。世界各国で初登場No. 1を獲得しただけでなく、それまで『タイタニック』が守っていた全世界興行収入の新記録を更新。10年後に『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)に一度抜かれたものの、その後の再上映で首位の座に返り咲き、いまなお世界の頂点に君臨しつづけている。

最新技術を駆使し、3D映画の新たなかたちを作りだした『アバター』最新技術を駆使し、3D映画の新たなかたちを作りだした『アバター』『アバター』9月26日(金)〜10月2日(木)1週間限定3D上映 [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画界を代表する存在ともいえるスティーヴン・スピルバーグ監督は公開当時、「『スター・ウォーズ』以来、もっとも刺激的で想像力を掻き立てられる驚異的なSF映画だ」と大絶賛。一方、その「スター・ウォーズ」シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカス監督は「成功して本当にうれしいし、3Dでも非常によく機能していた。『スター・ウォーズ』を3Dにすることを長年模索してきたが、『アバター』が3Dの可能性を広げる新たな推進力になると思う」と語っている。

さらに多くの映画ファンを魅了してきた鬼才クエンティン・タランティーノ監督も、「『アバター』は、観ているとまるでその世界に行ったような気分になる。もし『キル・ビル』を作る前に観ていたら、自分にとってはゲームチェンジャーになっていた」と映像技術に圧倒されたことを告白。彼ら以外にも“映像革命”と謳われた『アバター』に影響を受けた映画人を挙げていけば、枚挙にいとまがないだろう。

興行記録、技術革新…あらゆる面で映画界の歴史に名を刻むジェームズ・キャメロン興行記録、技術革新…あらゆる面で映画界の歴史に名を刻むジェームズ・キャメロン[c]Everett Collection/AFLO

2000年代中ごろに、映画制作の現場におけるデジタル化を推進すべく、ルーカル監督らと共に3D映画への取り組みを加速させることを発表していたキャメロン監督。ひいてはそれが『アバター』につながったといえよう。『アバター』の制作のために新しいデジタル3Dカメラシステムなどの新技術を生みだし、従来の3D作品にあった“飛び出す”というイメージを覆し、作品世界に“没入する”映画体験が確立されるきっかけにもなった。そしてその後、世界中で相次いで3D作品が製作される一大ブームを舞い起こすなど、映画業界の進歩に大きく貢献。

また、『アバター』の公開を目前に控えた2009年夏に日本で初めて導入されたIMAXデジタルシアターや、その進化系であるIMAXレーザー、さらに2013年に国内で初導入された4DX/MX4Dなど、現在日本のみならず世界中で主流となりつつある多彩な映画体験は、いずれも“映画館での最高の映像体験”を追求しつづけるキャメロン監督の想いをきっかけに進化の一途をたどってきたといってもいいだろう。

最新作では“パンドラを憎む”新たな部族が登場!13年でさらに進化した映画技術がフルに活かされた『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』13年でさらに進化した映画技術がフルに活かされた『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』10月3日(金)〜10月9日(木)1週間限定3D上映 [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

第1作から13年の時を経て公開された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』でも、新たな映像革命をもたらしたキャメロン監督。同作の舞台は前作から10年以上経過したパンドラ。家族と共に平和に暮らしていたジェイクとネイティリに人類の襲撃が迫り、彼らは“海の部族”のもとへと身を寄せる。“森”の美しさが際立った前作に対し、鮮やかで瑞々しい“海”の表現で世界中をクギづけに。

同作もまた『タイタニック』を上回る全世界興収23億2025万281ドルを記録し、全世界興収ランキングの3位にランクイン。この結果、1位の『アバター』、3位の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、4位の『タイタニック』と、同ランキングのトップ4のうち3本をキャメロン監督作品が占めるという前人未到の偉業も達成している。

最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』では、ジェイク一家にまたしても人類による侵略が迫り、パンドラの新たな部族の脅威までも訪れる事態に。そうしたなか、彼らが新たに出会うのは、火口域に暮らし、なんらかの理由でパンドラに憎悪を募らせている“アッシュ族”。はたして今度はどんな映像体験が待っているのか。いまのうちに前2作をおさらいし、新たな壮大なドラマの到来に備えておこう。

文/久保田 和馬

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