9月6日から9月20日まで東京・京橋の国立映画アーカイブで開催された「第47回ぴあフィルムフェスティバル2025」。そのメインプログラムである自主映画コンペティション「PFFアワード2025」の表彰式が9月19日にコートヤード・マリオット銀座東武ホテル「桜の間」にて開催。俳優の門脇麦や映画監督の山中遥子ら5名の最終審査員から各賞が発表された。
主人公の直美と発達障害の兄の姿をユーモラスに描いた『空回りする直美』
これまで黒沢清監督や、『国宝』(公開中)の李相日監督、矢口史靖監督や白石晃士監督ら第一線で活躍する映画監督たちを多数輩出し、“映画界の登竜門”とも称される「PFFアワード」。今年は過去2番目に多い795本の応募作品のなかから約4か月にわたる厳正な審査で22作品が入選。各2回ずつのスクリーン上映と最終審査員による選考を経て、中里ふく監督の『空回りする直美』がグランプリに選ばれた。
応募時20歳の中里監督が東放学園映画アニメCG専門学校の卒業制作として手掛けた『空回りする直美』は、困難を抱えながらも、豊かすぎる個性を湛える兄妹の姿をユーモラスに描いた作品。直美は発達障害とチック症を抱える兄の慎吾と父親との3人暮らし。兄と父親は衝突が絶えず、自身もバイト先で失敗ばかりだが、持ち前の明るさで兄を見守る日々を楽しく生きている。しかしある日、公園での言動が意図せず慎吾を傷つけてしまうことに。
ホラー漫画が好きだという中里監督。『空回りする直美』は専門学校の卒業制作
登壇した中里監督は「いろいろ信じられなくて、いまは動悸が止まらないです。私自身が未熟で、いろんなものが足りない状況のなかで映画をつくっていたので、まさかそれを人前に出せて、しかも賞をもらえると思ってなく、私のことを支えてくれた人や怠惰な自分を動かしてくれた人のおかげだと思います」とコメント。また同作は、エンタテインメント賞(ホリプロ賞)も同時受賞。
準グランプリには岩倉龍一監督の『BRAND NEW LOVE』が選ばれ、審査員特別賞は細川巧晴監督の『アンダー・マイ・スキン』、瀨川翔監督の『紅の空』、井上優衣監督の『ロ-16号棟』 の3作品が受賞。一般審査員が選ぶ映画ファン賞(ぴあニスト賞)は鈴木大智監督の『惑星イノウエ』が受賞し、観客からの人気投票で最も高い支持を得た作品に贈られる観客賞は野村一瑛監督の『黄色いシミ』が受賞した。
【写真を見る】2004年生まれの中里ふく監督がグランプリを受賞!「怠惰な自分を動かしてくれた人のおかげ」
グランプリ受賞作『空回りする直美』は、10月27日(月)より開催される「第38回東京国際映画祭」で特別上映。また、入選作品は11月13日(木)から11月16日(日)に京都文化博物館で開催される「京都ぴあフィルムフェスティバル2025」でも上映されるほか、10月31日(金)まで映画祭特設サイトとU-NEXTにて配信中。是非ともいまのうちに、未来の日本映画界を担う才能を目撃してみてはいかがだろうか。