「エイリアン:アース」(ディズニープラス「スター」で独占配信中)の製作は、2023年7月から約1年間、主にタイで行われた。筆者は幸運にも、2024年の4月8日〜10日、撮影真っ只中のタイで行われたセットビジットに参加することができた。

セットビジットとは、各国のメディアが撮影中のセットを見学したり、キャスト&スタッフにインタビューしたりする取材ツアーのこと。ご一緒したのは、米国やメキシコのメディア(DeadlineやRotten Tomatoesなど超有名どころばかり!)とタイの新聞社で、地元以外でアジアからの参加は筆者だけだった。せっかくなので、この貴重な体験を皆さんと共有しながら、「エイリアン:アース」の魅力を改めて振り返っていこう。

セットに入った瞬間、紛れもなく「エイリアン」の世界!

セットビジットは、大まかに言って下記のような内容だった。
・プロデューサー陣へのラウンドテーブル形式での会見
・ノア・ホーリー(ショーランナー、エピソード監督、製作総指揮、脚本)、ダナ・ゴンザレス(製作総指揮、エピソード監督、撮影監督)ほかクリエイターへのインタビュー
・シドニー・チャンドラー(ウェンディ役)ほか主要キャストへのインタビュー
・セット見学(USCSSマジノ号、プロディジー社など)
・特殊造形、衣装ほか美術系各部門の見学と関係者の解説

まず目を奪われたのは、USCSSマジノ号のセットだ。「エイリアン:アース」本編では、主に第1話と第5話の舞台となったマジノ号は、(『エイリアン』で登場する)ウェイランド・ユタニ社がノストロモ号と同時期に製造した宇宙探査船。その外観も内装もノストロモ号とほとんど同じで、あまりにそっくりなので、筆者はこの船をずっとノストロモ号だと思っていた(録音した取材テープを聞き直すとしっかり「マジノ号」と言っているのだが…)。

第1話から登場し、「エイリアン」の世界に一気に引き込むマジノ号のセット第1話から登場し、「エイリアン」の世界に一気に引き込むマジノ号のセット[c] 2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

コールドスリープ装置のガラスが中から突き破られ、あたり一面にはなにかを引きずったような血糊のあと。そこは紛れもなく「エイリアン」の世界。セットに入った瞬間、その場にいたジャーナリスト全員が「おお…!」と感嘆の声を漏らしたのは言うまでもない。そしていま考えれば、これは第5話の撮影中だったのだろう。

コールドスリープ装置は第1作を思い出さずにはいられない!コールドスリープ装置は第1作を思い出さずにはいられない![c] 2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu
プロディジー社とユタニ社、美術の差異にも注目

続いて、マジノ号のコントロール・ルームを経て、プロディジー社内のセットを見て回る。マジノ号は70年代風のレトロフューチャーな内装で、スクリーンはすべてCRT(=ブラウン管)で画角は4:3。『エイリアン』(79)の世界観を完全に再現している。これに対して、プロディジー社はコンクリートの壁にモノトーンの棚や机が並んでいてクールな印象。スクリーン類はすべてフラットな液晶タイプで、アスペクト比は16:9になっている。プロディジー社はここ10年ほどで台頭した新興企業という設定なので、ユタニ社と違って、やや近代的な意匠なのだ。こういった美術の差異に着目してみると、作品のおもしろ味がさらに増す。

プロディジー社の美術は、ユタニ社と比較してより現代的プロディジー社の美術は、ユタニ社と比較してより現代的[c] 2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

続いて訪れたのが、第1話でウェンディたち“ロスト・ボーイズ”たちがシンセティックに意識を転送する部屋。ベッド真上の天井には、巨大な円形モニターがあり、1953年のディズニー・アニメーション『ピーター・パン』が投影されている。ウェンディ、スライトリー、トゥートルズ、カーリー、ニブス、スミー…。本作が『ピーター・パン』をモチーフにしていることはキャラクターの名前からも分かる。ふと、モローの片腕が機械なのはフック船長がモチーフなのかも、と思った。

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