起死回生の一手となるか(市川猿之助。写真/共同通信社)
歌舞伎界を描いた映画『国宝』が空前のブームに沸くなか、苦境に立たされているのが、四代目市川猿之助(49)だ。猿之助といえば、2023年に起こした両親への自殺幇助の罪で現在は執行猶予期間中の身。梨園関係者が話す。
「執行猶予が明けた後に俳優として歌舞伎の舞台へと復帰する計画がありましたが、厳しい世間の目などもあり、今後も当分は難しいのではないかという話になっています。
事件後には市川中車さん(香川照之の歌舞伎役者名・59)の息子である市川團子(21)にマンツーマンで演技指導をしていた時期もありましたが、今は團子がめきめきと実力をつけてきており、LINEや電話などで『相談に乗る』程度の簡素な指導の形にシフトしてきているといいます。
團子は10月には三代目や四代目猿之助の当たり役で、澤瀉屋のお家芸となっている『四の切』の佐藤忠信や、『當世流小栗判官』小栗判官を初役で務めるなど、”次代の猿之助”のコースを着実に歩み始めている。梨園入り当時は演技に関して危ぶまれていた中車さんも、今では歌舞伎役者としての存在感を放つようになってきており、集客力も充分。『もう澤瀉屋は四代目(猿之助)がいなくても何とかなるのではないか』というムードが漂ってきているのです」
つまり、猿之助は舞台復帰だけでなく、指導者としても今は歌舞伎に密接にかかわることができていない状況のようだ。別の梨園関係者はこう語る。
「現在猿之助さんは所属事務所との契約も終了し、収入も断たれているため、生活は苦しいといいます。趣味で集めていた骨董品を売るなどしているそうです」
猿翁の三回忌では墓所に姿を見せず
そんななかで起死回生の一手となりうるのが「新作作り」だと見られている。
「猿之助さんは自宅で新作歌舞伎の脚本の制作に励んでいるといいます。これまでにも『ワンピース歌舞伎』など新作で大成功を収めてきた彼だけに、当たれば大きい。とくに映画『国宝』の大ヒットで歌舞伎そのものに注目が集まっている時期だけに、『猿之助の新作』となれば話題性もある。大作の構想を練っているのではとの期待の声も出ています」(同前)
松竹に聞くと、「とくに申し上げることはございません」(広報室)と回答。
そんな猿之助の伯父・二代目猿翁(享年83)が、9月13日に三回忌を迎えた。当日の昼下がり、猿翁が眠る上野・寛永寺墓所はひっそりと静まりかえり、墓石の前には線香と一対の生花が供えられているのみだった。
「この日、猿翁さんの法要は行なわれることはなく、息子である中車さんは京都・南座の舞台に出演中のため、お参りに行くこともなかったそうです。もちろん猿之助さんの姿もありませんでした」
歌舞伎界の寵児として一世を風靡したカリスマには似つかわしくないほどの静かさで迎えた猿翁の三回忌。甥・猿之助の復活を草葉の陰から願っているだろうか。
※週刊ポスト2025年10月3日号