映画『雪風 YUKIKAZE』のレビューが遅くなりました。
単なる戦争映画や反戦映画という枠には収まらない作品です。この映画が描いているのは、「戦争を望んだわけではなく、時代に生きたために戦死せざるを得なかった日本人」の姿でした。個々の兵士がなぜ戦場へ駆り立てられ、逃げ場のない状況で命を落とさなければならなかったのか。その理不尽さが静かに浮かび上がります。
今年は戦後80年という節目にあたり、原爆や沖縄戦をテーマにした作品が比較的多く公開されています。その中で本作は、派手な戦闘描写よりも人間ドラマに重点を置き、「なぜ彼らは戦場に立たざるを得なかったのか」を問いかけている点で印象的でした。
戦争の記憶が薄れゆく今だからこそ、理不尽な戦争の悲惨さを次の世代へ語り継ぐ必要があります。『雪風 YUKIKAZE』は、その使命をしっかりと果たしている作品だと感じました。決して派手ではありませんが、静かに、確かに心に残り続ける映画でした。