「アラス」シルクチュールカラー。「ヘレネ」コットンツイルショートパンツ。

「アラス」シルクチュールカラー。「ヘレネ」コットンツイルショートパンツ。

Photo: Gwen Trannoy / Courtesy of Mel Usine

自称“歴史オタク”であり、生地マニアでもあるビガは、メル・ユジーヌの初コレクションのために、イタリアの織物工場と共同で青いストライプの亜麻リネンを開発し、ウエストが絞られた額縁仕立てのワンボタンブレザーやロングスカート、ボレロに使用した。柔らかなラムスキンレザーから作られた別のボレロは、鎧のような雰囲気を醸し出し、シルバーのニットマキシ丈ドレスも中世ヨーロッパの世界観を感じさせる。

テーラードピースを除くと、ギヨーム・ド・ロリスとジャン・ド・マンによる『薔薇物語』を彷彿とさせる、ゆったりとしたシアーアイテムや、中世ヨーロッパらしい仕上げの袖や裾のデザインがコレクションのほとんどを占める。ビガの目標は、ニューヨークのファッションシーンに、ロマンティックな感覚と、“ヨーロッパの感性”と彼が定義する、詩的なフランスらしさをもたらすことだ。そして彼が発表したデビューコレクションは、間違いなくそのふたつを湛えていた。「ヨーロッパの神話を枠組みに、ニューヨークという街で世界観を作り上げているところが、メル・ユジーヌというブランドのクールなところだと思います」とビガは語る。「フランスの野原に佇むジャンヌ・ダルクならピンと来ますけれど、ニューヨークの地下鉄に乗っている騎士というイメージには、別次元の面白さがありますよね。こういった少し中世風の要素やロマンティックな要素にモダンな感覚を吹き込み、取り入れるのを大切にしています」

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