ソニーこそ『国宝』大ヒットの真の立役者、ディズニーもかなわない「黒子的映画ビジネス」の神髄とは映画『国宝』公式サイト https://kokuhou-movie.com/ (C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会



映画『国宝』はなぜ大ヒットした?

あまり知られていない製作者の顔ぶれ

 俳優の吉沢亮と横浜流星が出演する映画『国宝』が興行収入110億円を突破した。この映画こそ、最近のソニーが昔から持っているソニーらしさを反映したビジネスではないかという話をしたい。


 題材が歌舞伎なので、「なぜ松竹ではなく東宝なのか」という声も聞かれるが、業界関係者によると「とはいえ東宝も『国宝』でそれほど儲かっているわけじゃないんですよね」とのことだ。どういうことかと言うと、この作品、配給は確かに東宝であり『国宝』製作委員会には入っているのだが、東宝は製作幹事に名を連ねていないそうだ。


 では、どこが『国宝』をつくったのか。原作の版元である朝日新聞はそもそも製作委員会にも入っていない。製作幹事はアニプレックスとMYRIAGON STUDIO(ミリアゴンスタジオ)の2社だ。アニプレックスは『鬼滅の刃』などの製作で知られたソニーグループの映像製作会社だ。MYRIAGON STUDIOはあまり知られていないが、アニプレックスの100%子会社であり、そう考えると『国宝』は「ソニーが作った映画」と言っても過言ではないかもしれない。


 東宝や朝日新聞が『国宝』の製作におよび腰だったのは、歌舞伎という特殊な世界が日本の映画としてこれだけの大ヒットになるとは思わなかったからのようだ。一方、アニプレックスは『国宝』の海外輸出も目論んでいて、歌舞伎という日本文化を世界に紹介しようと考えているらしい。みんながやろうとしないものを手がけて、それを世界に発信する。かつてハードウエアでソニーがやっていたことと同じことを、エンタテインメントの世界でやっているように筆者には映る。


 しかも、アニプレックスがソニーグループで映画を手がけるソニーピクチャーズの子会社ではなく、ソニーミュージックの子会社だというところも面白い。アニプレックスは、もともとはSPE・ビジュアルワークスというソニーピクチャーズの子会社だったが、アニプレックスとなった現在はソニーミュージックの子会社となっている。ソニーはアメリカのアニメ配信大手のクランチロールも買収し、エンタテインメントの中でもアニメに力を入れている。ビジネスモデルが国内で閉じていないところもソニーらしい。


 アニプレックスは『鬼滅の刃』や『Fateシリーズ』、『ソードアート・オンライン』、『夏目友人帳』、『銀魂』、『魔法少女まどか☆マギカ』などアニメやゲームのヒット作を作っているが、こうした作品にはテーマ曲が付き物で、オープニングやエンディングのテーマ曲にソニーミュージックのアーティストの作品が使われている。こうしたシナジーがあることが、アニプレックスがソニーミュージック傘下の理由であろう。『国宝』の主題歌『Luminance』もKing Gnuの井口理が歌うソニーミュージックの作品だ。


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