フジテレビ日枝氏の「ジャーナリスト宣言」
「清水君(賢治現フジ・メディア・ホールディングス社長=筆者注)はスポンサーを戻すことに懸命ですが、それだけでは十分ではありません。ジャーナリズムの一角を担う矜持を持ちながら、新たなフジテレビをつくってもらいたい。あの一瞬でこんな会社になってしまうなんて悔しくて堪らない。だからもう一度立ち上がり、時代を変えて欲しいのです」
フジテレビはジャーナリズムだったんだ‼
文藝春秋(9月号)の「日枝久フジサンケイグループ前代表 独占告白10時間(インタビュアーはジャーナリストの森功氏)」を読みながら、一番感じたのはそのことだった。テレビ局の中では一番ジャーナリズムから遠かったのがフジではなかったのか。
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日枝氏はこうもいっている。
「僕は自分がジャーナリスト出身であることに誇りを持っています」
中居正広の性加害問題でフジテレビトップたちがコンプライアンスを蔑ろにして中居を守っていたことが発覚。第三者委員会が設置され、「中居正広に性加害があった」とする報告書をまとめ、公表した。
その後に、フジテレビの社員たちによる検証番組(7月6日10時~11時45分『検証 フジテレビ問題 ~反省と再生・改革~』)が放送されたが、中居にフジの女性アナを紹介した編成局幹部も、セクハラが認められ取締役を退任した反町理氏も、日枝氏からも出ることを拒否されたため、何を検証したのかわからないお粗末な内容になってしまった。
筆者が驚いた「爆弾発言」
しかし、日枝氏は自分が出なかったことには触れもせず、こういい放つのである。
「検証番組をやるなら、もっと前にやるべきでした。そうでなければ、どうしても第三者委員会に引きずられてしまうので意味がありません。報告書が出るまで動けなかったようですが、本来、テレビ局はジャーナリズムであり情報機関なのですから、独自に調査すべきだったと思います。そうでなければジャーナリズムではないでしょう」
フジテレビがジャーナリズムで、自分がジャーナリストを自称するのなら、進んで検証番組に協力すべきだったと思うが、そういう考えはすっぽり抜けてしまっているようだ。
日枝氏は中居と自社の女性社員とのことは「何も知らなかった」。人事権を一手に握り“ドン”として君臨し、楽しくなければテレビじゃない「上納文化」をつくったのではないかという問いにも、当然ながら全否定している。
だが、こんな爆弾発言をしている。
「実は(中居問題発覚=筆者注)騒動の当初、社内で(遠藤龍之介前フジテレビ副会長が=筆者注)とんでもない発言をしていました。およそ二十人が集う局長会で、遠藤は『これは簡単にいえば、隠蔽の失敗です』と発言してしまったのです。(中略)彼の意識のなかではその程度の認識しかなかったということでしょうね」
日枝氏自らがいっているように、自分で決めることができずに逃げてきた上層部が、人心が一新されてもフジテレビを変革できるとはとても思えない。フジの前途は暗澹という言葉しかないようだ。