映画『怪盗グルーのミニオン超変身』(2024年)より 写真:Illumination & Universal Pictures

提訴の概要

ディズニー、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー、ユニバーサル・ピクチャーズの3社が、中国のAI画像・動画生成サービスを著作権侵害で提訴した。メジャースタジオが所有する映画やテレビ番組をAIの学習に用いる行為をめぐる高リスクの法廷闘争は新たな局面に入った。

現地時間9月16日(火)にカリフォルニア州の連邦地裁に提出された訴状では、中国のAI(人工知能)開発企業「MiniMax」がスタジオ各社の知的財産を略奪して事業を築いたと主張している。同社のサービス「Hailuo AI」は、著作権で保護された象徴的なキャラクターのコンテンツをユーザーに生成させているという。

スタジオ側は、MiniMaxの行為を“業界の存亡に関わる脅威”と位置づけている。AI技術の急速な進歩を踏まえると、「Hailuo AIが無断で侵害的な動画を生成するのは時間の問題」であり、その動画は「著しく長くなり、最終的には映画やテレビ番組と同等の長さに達し得る」と訴状は述べている。

Illustration by Daniel DowneyIllustration by Daniel DowneyIllustration by Daniel Downey

生成AIと著作権をめぐる近年の動き

近年、AI企業はクリエイターに対価を支払うことなく、インターネット上からスクレイピング※で収集したデータでモデルを訓練してきたとされる。これに対し、作家、レコード会社、報道機関、アーティスト、映画スタジオが次々に訴訟を起こしており、一部のAIツールが自らの作品への需要を侵食していると主張している。

※スクレイピング(web scraping)とは、ウェブページのHTML等を機械的に取得し、そこから必要な情報を自動で抽出・整理すること。

直近の関連訴訟

今月初めには、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーがディズニー、ユニバーサルに加わり、米国のAI研究企業Midjourneyを提訴した。自社の映画やテレビ番組を同社のAI学習に用いた疑いがあるという認識であり、AI企業はコンテンツに「ただ乗り」し、盗用しているという立場である。

(左)米国のAI研究企業「Midjourney」により生成されたバットマンのスクリーンキャプチャ、(右)ワーナー・ブラザース映画『ダークナイト』(2008年)のポスター 写真:Warner Bros. legal complaint.(左)米国のAI研究企業「Midjourney」により生成されたバットマンのスクリーンキャプチャ、(右)ワーナー・ブラザース映画『ダークナイト』(2008年)のポスター 写真:Warner Bros. legal complaint.(左)米国のAI研究企業「Midjourney」により生成されたバットマンのスクリーンキャプチャ、(右)ワーナー・ブラザース映画『ダークナイト』(2008年)のポスター 写真:Warner Bros. legal complaint.

業界団体の見解

映画協会(MPA)のチャールズ・リブキンCEOは声明で、AI企業は「どこに所在していようとも、米国のクリエイターの権利を侵害すれば、責任を問われる」と述べた。さらに「著作権侵害が野放しになれば、米国の映画産業全体が脅かされる」との懸念を示した。

「Hailuo AI」の宣伝と生成例

訴状によれば、MiniMaxは自社サービス「Hailuo AI」を“ポケットに入るハリウッド・スタジオ”とうたい、宣伝資料にスタジオ各社のキャラクターを使用しているという。

ダース・ベイダーと入力すると、MiniMaxの透かし入りで同キャラクターの画像が生成される。さらに同サービスは、『ミニオンズ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『スーパーマン』など、ディズニー、ワーナー・ブラザース、ユニバーサルの映画やテレビ番組に登場するキャラクターの動画も生成できると訴えている。

▼「Hailuo AI」による生成例

学習データをめぐる争点

スタジオ側は、同社の技術でこのような出力が可能なのは、自社の知的財産を用いてAIを学習させた場合に限られると主張する。

訴訟では、利益の返還を含む金額不特定の損害賠償に加え、MiniMaxがスタジオの作品を引き続き利用することを禁じる差し止め命令を求めている。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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